四角形の分割
幾何の問題において、「等積変形」という言葉は有名であるが、その意外な使い方に今日
初めて気がついた。作図問題においても、この等積変形が活躍するとは、ただ驚くばかりで
ある。
等積変形
左図において、 △ABC=△A’BC が成り立つ。 |
このページでは、次のような問題を考える。
問題 一般の四角形を頂点を通る直線で等分割したい。どのように直線を引けばよいか?
【黄色い部分の面積=水色の部分の面積】
この問題に対して、直線を、次のように作図すればよい。
対角線BDの中点を、E とする。さらに、E を 通り、対角線ACに平行な直線FGを引く。 このとき、直線AGが求める直線である。 実際に、△ABE+△BCEは、四角形の面積 の半分であるが、等積変形により、左図におい て、黄緑色の部分は、同じ面積である。 |
よって、△ABE+△BCE=△ABG が成立。
(補足) △ABE+△BCEが、四角形の面積の半分であることは、
△ABE=△ADE 、 △BCE=△DCE
から明らかであろう。これは、高さの等しい2つの三角形の面積比は底辺の長さの比に等し
いことから分かる。
この事実を効果的に用いる問題が、平成21年9月13日放送の「熱血!平成教育学院」
(NTV系)で出題された。
長方形ABCD内の点Pと各辺の中点 を結び四角形を分割したら、左図のよう な面積となった。このとき、 四角形PLCMの面積を求めよ。 |
この問題に対して、右図のような補助線を引いて考えることがポイントとなる。
右図において、 四角形PLCM =四角形PKBL+四角形PMDN −四角形PNAK =45+20−38 =27(cm2) |
(コメント) 一瞬求められそうにないような雰囲気ですが、図形の性質を上手く使うと、こん
なにも鮮やかに解けるんですね!
(追記) 冒頭の問題では直線が頂点を通る場合であったが、より一般な場合はどうであろ
うか?それが次の問題である。
問題 一般の四角形を、辺上の1点を通る直線で等分割したい。どのように直線を引けば
よいか?
【黄色い部分の面積=水色の部分の面積】
この問題に対して、直線を、次のように作図すればよい。
対角線BDの中点を、E とする。 Eを通り、対角線ACに平行な直線FGを引く。 直線PCに平行な直線FH を引く。 このとき、求める直線は、直線PH である。 |
実際に、△ABE+△BCEは、四角形の面積の半分であるが、等積変形により、
△AFE=△CFE なので、 △ABE+△BCE=△BCF である。
上図において、等積変形により、黄緑色の部分は、 同じ面積である。
したがって、△BCF=△PBH が成立。
(再追記) 同様の問題が三角形においても考えられる。
問題 一般の三角形を、辺上の1点を通る直線で等分割したい。どのように直線を引けば
よいか?
【黄色い部分の面積=水色の部分の面積】
この問題に対して、直線を、次のように作図すればよい。
底辺ABの中点をMとし、直線CPに平行な直線MN を引く。 このとき、求める直線は、直線PN である。 実際に、△AMCは、三角形の面積の半分であるが、 等積変形により、左図において、黄緑色の部分は、同 じ面積である。 したがって、△AMC=△APN が成立。 |
(注) 辺上の1点を通る直線を n−1 本引いて、面積を n 等分したい場合は、辺ABを n
等分して、上と同様に作図すればよい。
問題 一般の三角形を、1つの辺に垂直な直線で等分割したい。どのように直線を引けば
よいか?
【黄色い部分の面積=水色の部分の面積】
この問題に対して、直線を、次のように作図すればよい。
辺BCの中点Mにおいて、長さBMの垂線MD を引く。辺BC上に、BE=BDとなる点Eをとる。 辺ACに平行な直線EFを引く。線分BFを直径 とする半円Oを描き、その円周上に点Gを、 辺ABと線分EGが垂直になるようにとる。辺AB 上に、BH=BGとなる点Hをとる。 このとき、点Hにおける垂線HKが求める垂線 である。 |
実際に、BC2:BE2=2:1 なので、△BEFは、三角形の面積の半分である。
また、△BFGは直角三角形で、線分GLは、斜辺BFの垂線なので、△BLG∽△BGF が
成り立つ。よって、 BG2=BF・BL が成り立つ。
このとき、△BKH:△BEL=BH2:BL2=BG2:BL2=BF・BL:BL2=BF:BL である。
ところで、△BEF:△BEL=BF:BL なので、したがって、△BKH=△BEF が成り立つ。
問題 一般の三角形の面積を、平行な2直線で3等分に分割したい。どのように直線を
引けばよいか?
この問題に対して、直線を、次のように作図すればよい。
辺ABの中点Mにおいて、半径AMの半円を描く。 辺ABを3等分し、その等分点D、Eにおける垂線と 半円との交点を、F、Gとする。 辺AB上に、AP=AF、AQ=AG となる点P、Qを とる。 |
2点P、Qにおいて、辺BCと平行な直線PR、QSを引く。この2直線がもとめるものである。
実際に、AB=3 とすると、1:FD=FD:2 より、FD2=2 なので、AP2=AF2=3
同様にして、AQ2=AG2=6
このとき、△APR:△AQS:△ABC=AP2:AQ2:AB2=3:6:9=1:2:3
よって、直線PR、QSは、△ABCの面積を、3等分している。
次の2つの問題は、面積の分割とは違うが、等積図形をうまく図形に組み合わせて、
1つの図形を形作るという意味で、同じ範疇の問題と考えていいだろう。
問題 一般の三角形において、同じ面積をもつ平行四辺形を作れ。
この問題に対して、次のように作図すればよい。
辺ABの中点をMとし、平行四辺形MBCDを作れ ばよい。 実際に、辺MDと辺ACの交点をNとすると、 △AMN≡△CDN で、面積は等しい。 |
問題 一般の平行四辺形において、同じ面積をもつ別の平行四辺形を作れ。
この問題に対して、次のように作図すればよい。
辺AB上の任意の点Eにおいて、辺ADと平行 な直線が辺CDと交わる点をFとする。BFの延 長とADの延長との交点をGとする。平行四辺形 ABIGにより、点 I を決める。平行四辺形FCIH により、点Hを決める。 このとき、平行四辺形EBIHが求めるものである。 |
実際に、等積変形により、左図において、黄緑色の部分は、同じ面積なので、明らか。
次の問題も、面積の分割とは違うが、等積図形を作る方法としては面白い。
問題 一般の長方形において、同じ面積をもつ正方形を作れ。
この問題に対して、次のように作図すればよい。
ADの延長上に、DC=DE となる点E をと る。線分AEの中点を、Mとする。Mを中心と する半径AMの半円とCDの延長との交点を Fとする。 このとき、正方形DFGHが求めるものである。 |
実際に、左図において、 AB=2a、BC=2b とすると、MD=b−a
FM=EM=a+b なので、FD2=(a+b)2−(b−a)2=4ab
よって、長方形と正方形の面積は等しい。
(参考文献:野口健助 著 平面画法入門(日刊工業新聞社))
(追記) 令和3年3月24日付け
等積変形にまつわる問題を考えてみた。
問題 平行四辺形ABCDにおいて、AD=10 とする。さらに、BC上に点Pをとり、BP=4
とする。直線DPと直線ABの交点をQとおく。
△APQ=20 のとき、平行四辺形ABCDの面積を求めよ。
(解) 下図のように等積変形を行う。
△ABP=S とおくと、△ABP=△DBP=△CPQ=S よって、 △BQP=(2/3)S より、 (5/3)S=20 なので、S=12 即ち、△ABPのBPを底辺とする高さは 12×2÷4=6 となる。 以上から、平行四辺形ABCDの面積は、6×10=60 |