三垂線の定理                               戻る

 有名なのに中々活躍の場がないと言われる「三垂線の定理」について、その応用をいろい
ろ探訪したいと思う。

 平面α上にない点Pから垂線を下し、その足をHとする。Hを通らないα上の直線LにHよ
り垂線を下し、その足をQとする。

    

 このとき、三垂線の定理は、次のことを主張するものである。

三垂線の定理  PH⊥α、HQ⊥L ならば、 PQ⊥L

 定理の主張から分かるように、上図には、3つの垂線 PH⊥α、HQ⊥L、PQ⊥L がある。

三垂線の定理の系

(1) PH⊥α、PQ⊥L ならば、 HQ⊥L


(2) PQ⊥L、HQ⊥L で、PH⊥HQ ならば、 PH⊥α

(定理の証明)

 PH⊥α より、 PH⊥L  よって、 平面PQH⊥L より、 PQ⊥L  (終)

(系(1)の証明)

 PH⊥α より、 PH⊥L  よって、 平面PQH⊥L より、 HQ⊥L  (終)

(系(2)の証明)

 平面PQH⊥L より、 PH⊥L  HQとLで平面αが定まるので、 PH⊥α  (終)

 上記の結果から、 平面PQH⊥平面α であることが分かる。


 このような証明法を練習しよう。

問題 △ABCの垂心Hを通って△ABCに立てた垂線上の1点をPとするとき、AP⊥BCであ
   ることを示せ。

     

 正射影をイメージすれば当たり前のことに見えるが、しっかり論証してみよう。

(解) AH⊥BC 、PH⊥BC より、 平面PAH⊥BC  よって、 AP⊥BC  (終)

問題 四面体O-ABCにおいて、OA⊥AB、OA⊥OCとする。

   AH⊥△OBCのとき、OH⊥BCが成り立つことを示せ。

    

(解) OA⊥AB、OA⊥OCより、 OA⊥△ABC なので、 OA⊥BC

 また、AH⊥△OBC より、 AH⊥BC

 よって、 △OAH⊥BC なので、 OH⊥BC  (終)


 三垂線の定理をせっかく習ったので、上記の問題で三垂線の定理を用いてみよう。

(別解) AO⊥AB、AO⊥OCより、 AO⊥△ABC なので、 AO⊥BC

    また、 AH⊥△OBC なので、三垂線の定理より、 HO⊥BC  (終)


(コメント) 三垂線の定理を用いてはみたものの、ほとんど解としては大差ない。もしかした
      ら、三垂線の定理は知らなくても何とかなるレベルなのかな...?


(追記) 令和4年9月3日付け

 次の性質は、正四面体の重要事項だろう。

 正四面体ABCDにおいて、Bより辺CDに垂線BMを下ろす。さらに、Aより線分BMに
垂線AHを下ろす。このとき、

  AH⊥△BCD

が成り立つ。

     

(補足) 上図で、Mは辺CDの中点であり、Hは△BCDの重心で、BH:HM=2:1 である。

(証明) 題意より、 BM⊥CD

 また、△ACM≡△BCM より、 AM⊥CD

 △ABMは、AM、BMで定まるので、 △ABM⊥CD

 AHは、△ABM上の線分なので、 AH⊥CD

 AH⊥BM、AH⊥CD で、△BCDは、BM、CDで定まるので、 AH⊥△BCD  (終)


(コメント) 証明から分かるように、四面体ABCDが正四面体であることは本質的でない。
      △ACM≡△BCMが言える四面体が持つ性質である。


 三垂線の定理を用いれば、次のように示される。

(別解) 題意より、 BM⊥CD で、△ACM≡△BCM より、 AM⊥CD

 HM⊥CD で、AH⊥HM なので、三垂線の定理より、 AH⊥△BCD  (終)


(追記) 令和4年9月4日付け

 2平面が垂直を示すには、2平面の交線に垂直な各平面上の直線のなす角が90°を示
せばよい。
    

 ここで、次の驚愕の公式が成り立つ。

 ∠POH=α、∠HOQ=β、∠POQ=γとするとき、

   △OPH⊥△OQH であるための必要十分条件は、

     cosα・cosβ=cosγ

  である。

 証明は、三垂線の定理から明らかだろう。

 ∠PHO=90°、∠HQO=90°で、 cosα・cosβ=cosγ のとき、∠PQO=90°

 このとき、QO⊥PQ、QO⊥HQ より、 QO⊥△PQH なので、QO⊥PH

 よって、PH⊥△OQH となり、その結果として、△OPH⊥△OQH であることが分かる。


 この話題に関連して、練習問題を置いておこう。

問題 OA=4、AB=6、OC=AC=4、∠BAC=60°、∠OAB=45°である四面体
    O-ABCの体積を求めよ。

      

(解) cos45°=1/、cos60°=1/2 である。また、△OACにおいて、余弦定理より、

  cos∠OAC=(16+32−32)/32=1/(2

である。このとき、 cos45°cos60°=1/(2)=cos∠OAC が成り立つ。

 よって、 △OAB⊥△ABC である。

 したがって、△ABCを底面とする四面体O-ABCの高さは、 4sin45°=2

 △ABC=(1/2)・6・4・sin60°=6 なので、

 四面体O-ABCの体積は、 (1/3)・6・2=8  (終)


(追記) 令和4年9月6日付け

 京都大学前期理系(2016)で、次のような空間図形の問題が出題されている。問題は
一部改題しました。

問題 四面体OABCの頂点A、B、Cからそれぞれの対面へ下ろした垂線が対面の外心を通
   るとき、四面体OABCは正四面体であることを示せ。

(解) 題意より、 AB=AC=OA 、AB=BC=OB 、BC=AC=OC なので、

   AB=BC=AC=OA=OB=OC が成り立つ。

 よって、四面体OABCは正四面体である。  (終)


(コメント) 京都大学理系の問題と聞くと、思わず身構えてしまうが、気楽に考えれば解け
      るであろう平易な問題である。ただ、空間図形の問題なので、空間把握が出来な
      い人には難しいかもしれない。


(追記) 令和4年9月10日付け

 上記の京都大学の問題では、正四面体特有の性質のように錯覚させられるが、四面体
O-ABCにおいて、頂点Oより△ABCに下ろした垂線の足が△ABCの外心となるためには

  OA=OB=OC

という性質が本質的である。この「OA=OB=OC」という条件があれば、垂線の足Hについ
て、
    HA=HB=HC

が成り立ち、Hは△ABCの外心であることが分かる。

 この話題に関して、次の練習問題を残しておこう。

問題  四面体O-ABCにおいて、OA=OB=OC=7 で、AB=3、BC=5、CA=7 と
    するとき、四面体O-ABCの体積を求めよ。

      

(解) 頂点Oより、底面の△ABCに垂線OHを下ろすと、点Hは△ABCの外心である。

 △ABCにおいて、 s=(3+5+7)/2=15/2 なので、ヘロンの公式より、

 △ABC=√{(15/2)(9/2)(5/2)(1/2)}=(15/4)

 よって、△ABCの外接円の半径をRとすると、 R=3・5・7/{4(15/4)}=7/

 したがって、 OH2=49−49/3=49・(2/3) より、 OH=(7/3)

 以上から、

 四面体O-ABCの体積=(15/4)×(7/3)×(1/3)=(35/4)  (終)


(追記) 令和4年9月8日付け

 三垂線の定理を用いる問題を創作してみた。

問題 OA⊥△ABCの四面体O-ABCにおいて、OB=7、AB=4、BC=CA=8とする。
   Aより、辺BCに垂線ADを引く。このとき、線分ODの長さを求めよ。

      

(解) cos∠ABC=2/8=1/4 なので、 BD=4cos∠ABC=1 である。

  また、三垂線の定理より、 ∠ODB=90°なので、三平方の定理より、

   OD2=72−12=48  すなわち、 OD=4  (終)


(追記) 令和4年9月9日付け

問題 立方体ABCD-EFGHにおいて、対角線EGとFHの交点をOとする。

   このとき、次を示せ。

  (1) AO⊥FH

  (2) AG⊥BD


(解)(1) AE⊥正方形EFGH 、 EO⊥FH なので、三垂線の定理より、 AO⊥FH

(2) AE⊥正方形ABCD より、AE⊥BD で、 BD⊥EG より、 BD⊥△AEG

  よって、 AG⊥BD  (終)


 この手の問題は、ベクトルを用いれば余り考えずに機械的に解くことが出来る。

(別解) 立方体ABCD-EFGHの1辺の長さが2とすると、A(2,0,2)、B(2,2,2)、

  C(0,2,2)、D(0,0,2)、E(2,0,0)、F(2,2,0)、G(0,2,0)、H(0,0,0)

 このとき、 O(1,1,0) である。

(1) AO=(−1,1,−2) 、FH=(−2,−2,0) なので、

 AOFH=2−2+0=0 より、 AO⊥FH

(2) AG=(−2,2,−2) 、BD=(−2,−2,0) なので、

 AGBD=4−4+0=0 より、 AGBD  (終)



  以下、工事中!