符号の決定問題                            戻る

 2次関数 F(x)=ax2+bx+c のグラフから、係数 a 、b 、c の符号を決定する問題は、
古くから存在するよく知られた問題である。

 たとえば、2次関数のグラフが左下図のように与えられたものとする。

  このとき、 上に凸なので、 a<0

  軸 x=−b/2a>0 と a<0 から、 b>0

  y 切片 y=c から、 c>0

  と、直ちに符号は決定される。



 上図からは、更に、
             a+b+c>0 、 a−b+c<0 、 b2−4ac>0

などもうかがい知れる。

 上記の計算では、b の符号の計算が一番複雑だが、微分を知っていれば、次のように簡
単に求められる。

 すなわち、 F’(x)=2ax+b より、 F’(0)=b は、y 軸との交点における接線の傾き
なので、グラフより明らかに、 b>0 である。

 この符号の決定問題で 3次関数の場合が、日本大学 文理学部(2008)で出題されたこ
とを最近知った。

日本大学 文理学部(2008)

 下の図は、3次関数 F(x)=ax3+bx2+cx+d のグラフである。以下の問いに答えよ。

 (1) a 、d 、c の符号を判定せよ。

 (2) c 、d を、 a 、b を用いて表せ。

 (3) b の符号を判定せよ。

 (4) 0 、a 、b 、c 、d を小さい順に並べよ。 (一部改題)



(解)(1) x → ∞ のとき、 F(x) → ∞ なので、 a>0 である。

      y 切片 y=d から、 d<0 である。

      F’(x)=3ax2+2bx+c より、 F’(0)=c は、y 軸との交点における接線の
     傾きなので、グラフより明らかに、 c>0 である。

(2) F’(−1)=0 より、 3a−2b+c=0 なので、 c=2b−3a

   F(−1)=0 より、 −a+b−c+d=0 なので、 d=a−b+c=b−2a

(3) 2b=3a+c>0 より、 b>0

(4) d<0 より、 b−2a<0 である。

   このとき、 c−a=2(b−2a)<0 より、 c<a である。

   また、 2b=3a+c で、 a>0 、 c>0 より、 2b>2a 即ち、 b>a

   以上から、 d<0<c<a<b である。  (終)

(コメント) (3)で、b の符号を判定するとき、F(x)が、x=−1 で極値をとることを用いて
      いるが、これは本質的ではない。

  グラフから、F(x)は、x=0 の周辺で下に凸なので、F”(x)=6ax+2b より、
 F”(0)=2b>0 である。よって、 b>0 である。

  以上から、3次関数においても、グラフが与えられれば、その係数の符号を決定すること
 ができる。


(追記) 上記の考え方は、4次関数でも適用できる。

 例えば、4次関数 F(x)=ax4+bx3+cx2+dx+e のグラフが下図であるとき、a 、b 、
c 、d 、e の符号を決定してみよう。

    


(解) x → ∞ のとき、 F(x) → ∞ なので、 a>0 である。

  y 切片 y=e から、 e>0 である。

  F’(x)=4ax3+3bx2+2cx+d より、 F’(0)=d は、y 軸との交点における接線の
 傾きなので、グラフより明らかに、 d<0 である。

  F”(x)=12ax2+6bx+2c より、 F”(0)=2c で、x=0 の周辺で下に凸であること
 から、 2c>0 すなわち、 c>0 である。

 一番難しそうなのが b の符号であるが、次のように考えれば即答だろう。

 グラフから、y=F(x)と直線 y=px+r が x>0で4点で交わるように出来る。

 解と係数の関係から、 −b/a>0 で、a>0 より、 b<0 である。  (終)