空間の分割数                             戻る

 東京工業大学の入試問題(2019年度)に空間の分割数を問う問題が出題された。「難し
い!」と巷間を賑わした問題のようで、少し興味があり解いてみた。


 東京工業大学 前期理系(2019)(改題)

 空間の相異なるn枚の平面によって、いくつの空間領域に分割される。この分割数の最大
値を求めよ。


 n=1、2、3 について、具体的に分割数の最大値を求めてみよう。

 n 枚の平面による分割数の最大値をHとおく。

 H1=2 、H2=4 、H3=8 であることは明らかだろう。


 実は、この問題を解くためには、次の問題が大いに関係してくる。

 「平面上において異なる n 本の直線が一般の位置にあるものとする。これらの直
 線で平面はいくつに分割されるか?


は、漸化式を用いて解く有名問題である。n 本の直線による平面の分割数をLとおく。

 例えば、 L1=2 、L2=4 、L3=7 であることは明らかだろう。

問題 次の図において、平面はいくつに分割されているか?

    左図において、 L5=16 である。

    上記の値はもちろん数え上げてもよいが、次のよう
   に計算できる。

    L3=L2+3=4+3=7

    L4=L3+4=7+4=11

    L5=L4+5=11+5=16

 一般の位置にある直線による平面の分割数を問う問題は「ケーキ数の問題」と言われ、そ
のとき出来る数列

 2、4、7、11、15、・・・

は、「lazy cateree's sequence」(怠けた仕出し屋数列)と言われる。

 ケーキを分割する最大個数は、

 p=(n2+n+2)/2=1+(n2+n)/2=n0n+12n0n1n2

で与えられる。


 このとき、東京工業大学の問題は、次の漸化式を解く問題に帰着される。

 H1=2 、H2=4 、Hn+1=L+H

 L1=2 、L2=4 、Ln+1=L+n+1

 n≧2のとき、 L=L1+(2+3+・・・+n)=(n2+n+2)/2

 この式は、n=1のときも成り立つ。

 よって、n≧2のとき、 H=H1+Σk=1n-1k=(n3+5n+6)/6

 この式は、n=1のときも成り立つ。


(追記) 令和7年10月11日付け

 「分割数の不思議」と題して、HN「GAI」さんからご投稿いただきました。

 直線上に重ならない様にn個の点を置いていくと、有限の長さのn−1個の線分と無限の
長さを持つ2つの半直線に分かれる。

 平面上に1点で3つの直線が集まらない様にn個の直線を置いていくと、(n−1)(n−2)/2(個)
の有限の面積を持つ部分と、2n(個)の無限の面積となる部分に分かれる。

 空間内に3つの平面が1つの交線で交わらない様にn個の平面を置いていくと、
(n−1)(n−2)(n−3)/6(個)の有限の体積の部分と、n2−n+2(個)の無限の体積を有す
る部分に分かれる。

 そこで、分割総数だけに着目すれば、

直線:n−1+2=n+1
平面:(n−1)(n−2)/2+2n=(1/2)n2+(1/2)n+1
空間:(n−1)(n−2)(n−3)/6+n2−n+2=(1/6)n3+(5/6)n+1 (← 東工大の問題)

 ところで、この3つの計算結果は、

nC01=1+n

nC01nC2=1+n+n(n−1)/2=(1/2)n2+(1/2)n+1

nC01nC2nC3=1+n+n(n−1)/2+n(n−1)(n−2)/6=(1/6)n3+(5/6)n+1

となり、正しく上記の結果を与えてくれる。(その昔何かの本で知って感動した。)

 ここまで進むと、次元を上げたくなる。

 そこで、四次元空間では?

 有限部は、n-1C4=(n-1)(n-2)(n-3)(n-4)/24 となりはしないか!
 無限部は想像もつかない。

でも、総分割数は、nC0nC1nC2nC3nC4 だろう。

 そこで、四次元空間での無限領域の数は、nC0nC1nC2nC3nC4n-1C4 のはず?
これを計算すると、n/3*(n^2-3*n+8) に整理された。

 この計算結果の数列を、OEISで検索してみたら、「A046127」がヒットしてきて、

 Maximal number of regions into which space can be divided by n spheres.

とある。何と球面どうしがぶつかり合いをした時に最大に分割される領域数(球面の外に広が
る無限部分も1個に数える)と繋がった。

 四次元世界での無限領域が球面同志の分割数に密接に関連し合っているとは思ってもみ
ませんでした。

 そこで改めて、3次元での無限部分の n2−n+2 から発生する数列を調べてみると、

 n=1,2,3,・・・・・ で、2,4,8,14,22,32,44,58,・・・・・

 これは、正にn個の円を交わらせたとき、平面を最大に分割できる最大数を与える!

 3次元での無限領域を与える分割数は、2次元での円での分割数

 4次元での無限領域を与える分割数は、3次元での球での分割数

と見事に対応がついているんですね。



   以下、工事中