60度の魔力                               戻る

 60度の角を持つ図形と言えば、直ぐに正三角形を想起される方が多いだろう。

 最近、60度の角を持つ三角形について種々の経験をしたので備忘録としてまとめておこ
うと思う。

(1)
 ∠A=60°の△ABCが円Oに接している。

 ∠B、∠Cの2等分線が円Oと交わる点を

 それぞれP、Qとおく。

  このとき、BP=CQが成り立つ。

 この事実は、△ABCが正三角形ならば自明であるが、そうでなくとも成り立つというところ
が面白い。

(証明)
  左図において、 ∠B+∠C=120°なので、

   ∠ABP+∠ACQ=60°

  円周角の定理より、 ∠ABP=∠ACP

  よって、 ∠PCQ=60° である。

  さらに、円周角の定理より、

   ∠QAB=∠QCB

  なので、 ∠QAC=∠PCB が成り立つ。

  したがって、 BP=CQ  (証終)

(コメント) 円周角の大きさが等しいので弦の長さも等しいというのは、当たり前と言えば
      当たり前ですが、証明法としては斬新ですね!


(追記) H.Nakao さんから別証をいただきました。(令和7年11月30日付け)

 2つの正三角形ができることに着目すると、以下のように証明できます。

[証明] CQとBPの交点をRとする。円周角は等しいので、∠RPC=∠RQB=60°

 ∠ACP=∠ABP より、

 ∠RCP=∠RCA+∠ACP=∠RCA+∠ABP=(∠B+∠C)/2=60° である。

△RPCは2つの角が60°なので、正三角形である。よって、RC=RP である。

同様に、△RBQも正三角形であるので、BR=QR である。

従って、BP=BR+RP=QR+RC=CQ である。  (証終)

(2)
  左図の△ABCにおいて、内心を I とする。

 △ABI+△ACI=2△BCI が成り立つとき、∠Aの

 最大値は、60°であることを示せ。

  この等式も、△ABCが正三角形ならば自明であるが、実は、正三角形に限るという点
が自明ながら興味深い。

(証明) △ABCの内接円の半径を r とすると、 △ABI+△ACI=2△BCI より、

 br/2+cr/2=2×ar/2 なので、 a=(b+c)/2 がなりたつ。

このとき、余弦定理より、

 

0°<A<180°なので、 0°<A≦60°より、∠Aの最大値は、60°である。

しかも、等号が成り立つのは、b=c のときに限るので、△ABCは正三角形となる。(証終)


(追記) 令和7年11月29日付け

 次の東北大学 前期文系(2003)の問題は、基本的な問題である。

問題   △ABCにおいて、AB=1、AC=2、∠A=60°とする。正の数m、nに対し、
  辺BC、CA、ABを m : n の比に内分する点を順にD、E、Fとする。
(1) DEEFが垂直であるときの比 m : n を求めよ。
(2) どのような正の整数m、nに対しても、ADEFは垂直でないことを示せ。

(解)(1) ABAC とおくと、=1・2・cos60°=1

 AD=(n+m)/(m+n) 、AE=n/(m+n) 、AF=m/(m+n)

DEAEAD={(−n)+(n−m)}/(m+n) 、EF=(m−n)/(m+n) より、

DEEF=(−m2+4mn−3n2)/(m+n)2=0 から、 m2−4mn+3n2=0

よって、 (m−n)(m−3n)=0 より、 m=n 、3n

したがって、 m : n=1 : 1 、m : n=3 : 1

(2) ADEF=(m2−3mn−n2)/(m+n)2=0 と仮定すると、 m2−3mn−n2=0

m、n は正の整数なので、 m/n=(3+)/2 すなわち、 (2m−3n)/n=

は無理数なので、これは矛盾である。

よって、どのような正の整数m、nに対しても、ADEFは垂直でない。  (終)



  以下、工事中!