物理の問題に親しむ
私の高校のときの担任の先生が物理の先生で、週8時間、相当鍛えられた。夏休みも物
理の実験に明け暮れ、その頃がとても懐かしい。そんなわけで徒然なるままに関心の趣くま
まに物理の問題に取り組んでいこうと思う。
問題1(反射の法則)
2枚の鏡を直角にして向かい合わせ、この間に光源を置いたら、その像はどこにできるか?
(解)
問題2(球面鏡の一般公式:1/a+1/b=1/f 光源までの距離a、像までの距離b、焦点距離f)
焦点距離30cmの凹面鏡の前方10cmにある光源の像の位置を求め、実像か虚像か求
めよ。
(解) 1/10+1/b=1/30 より、 b=−15 よって、凹面鏡の後方15cmの位置に
虚像を生ずる。
問題3(像の倍率と正立・倒立の公式 m=−b/a m>0 のとき正立、m<0 のとき倒立)
凸面鏡による像は必ず正立し、元の物体より小さくなることを示せ。
(解) 1/a+1/b=1/f から、 b=af/(a−f) これを、m=−b/a に代入して、
m=−f/(a−f)
題意より、 a>0、f<0 であるので、 m>0 となる。よって、像は必ず正立。
さらに、 m<1 なので、像は元の物体より小さくなる。
問題4 自動車のバックミラーに凸面鏡が用いられるのはなぜか?
(解) 視野が広くなるから。
問題5(レンズの公式:1/a+1/b=1/f 光源までの距離a、像までの距離b、焦点距離f)
焦点距離30cmの凸レンズの前方60cmに光源を置き、凸レンズの後方20cmに焦点
距離30cmの凹レンズを置く。像はどこにできるか。
(解) 凹レンズがなかったとすれば、 1/60+1/b=1/30 より、 b=60 よって、凸
レンズの後方60cmの位置に像を生ずる。実際は、途中凹レンズがあるので、
1/(−40)+1/b=1/(−30) より、 b=−120
よって、凸レンズの前方100cmに虚像ができる。
問題6 重さWkgwの一様な太さの棒の両端A、Bに丈夫な糸をつけて吊したら、下図のよ
うにA端の糸は水平と60°、B端の糸は水平と30°傾いて釣り合った。糸の引っ張
りの張力TA、TBおよび棒の傾きの角θを求めよ。
(解) 力の釣り合いを考えて、
(1/2)TA=(/2)TB 、(/2)TA+(1/2)TB=W
これより、 TA=TB なので、 TB=(1/2)W すなわち、 TA=(/2)W
棒の全長をLとすると、Gの周りのモーメントを考えて、
TAsin(60°−θ)・(L/2)=TBsin(30°+θ)・(L/2)
よって、 (sin60°cosθ−cos60°sinθ)=sin30°cosθ+cos30°sinθ より、
(−tanθ)=1+tanθ
したがって、 tanθ=1/ から、 θ=30°
問題7 重さ5kgwの物体Aと3kgwの物体Bとを軽い糸で結び、粗な斜面に載せてある。物
体と斜面との摩擦係数はそれぞれμA=0.2、μB=0.3とする。斜面の傾きがしだ
いに大きくなり、物体が滑り始めるときの斜面の傾角θを求めよ。
(解) 物体が滑り始めるときの糸の張力をT、物体A、Bに働く面の抗力をNA、NB、最大摩
擦力をFA、FBとすると、 T+FA=5sinθ 、NA=5cosθ 、FA=0.2NA より、
T+0.2×5cosθ=5sinθ
同様にして、T+3sinθ=0.3×3cosθ なので、 cosθ−3sinθ=5sinθ−0.9cosθ
よって、 8sinθ=1.9cosθ より、 tanθ=1.9/8=0.238 なので、
θ=13°+1°×(238−231)/(249−231)=13.4°
問題8 つるまきばねの下端に20gのおもりをつるしたら6cm伸びた。このつるまきばねの
下端から全長の1/3のところに15gのおもりをつるしたら何cm伸びるか?
(解) フックの法則から、20=6k より、 k=10/3(gw/cm)
15gのおもりを下端につるして x cm伸びるとすると、 15=kx より、 x=9/2(cm)
全体が一様に伸びるとして、求める伸びは、 (9/2)×(2/3)=3(cm)
問題9 長さLcmのつるまきばねの両端を上下Lcmだけ離れた2点に固定する。上から
x cmのところにおもりを結びつける。おもりの位置の下がりを最大にするには、x
の値をどうとればよいか。
(解) おもりの重さをWgwとし、y cm伸びて釣り合ったものとすると、フックの法則から、
おもりの上の部分では、張力 T1=k(L/x)y
おもりの下の部分では、押し上げの力 T2=k(L/(L−x))y
なので、釣り合うことから、 k(L/x)y+k(L/(L−x))y=W
すなわち、 y=(W/(KL))/(1/x+1/(L−x)) を最大にするには、z=1/x+1/(L−x)
を最小にすればよい。 dz/dx=−1/x2+1/(L−x)2=2L(x−L/2)/x2(L−x)2
から、zは、x=L/2 で極小かつ最小となる。
以上から求めるx の値は、L/2(cm)
(コメント) 微分 dz/dx を使わずとも、z=L/x(L−x) から、
x(L−x)=−x2+Lx=−(x−L/2)2+L2/4 より、 x=L/2 を見いだす方が
高校生向けかな?
問題10 1kgwの力で引っ張ると長さが1.5倍に伸びるゴムひもがある。これを水平に張
り中央におもりを吊したら、ゴムひものなす角が60°になった。このおもりの重さ
はいくらか?
(解) ゴムひもの長さをL(cm)とする。張力をTとすると、題意より、 T=2(kgw)
また、釣り合うことから、2Tcos30°=W より、 W=T=2(kgw)
問題11(アルキメデスの原理)
水が入ったビーカーに、質量m(g)、密度n(g/cm3)の物体を細い糸で吊り、これが全部
隠れるまで水中に入れビーカーの壁や底につかないようにした。質量はいかほど増えるか?
(解) 最初の水が入っただけのビーカーの質量をM(g)とする。
糸の張力をTとすると、アルキメデスの原理から、 T=mg−(m/n)g (dyn)
物体の入ったビーカーの質量をFとすると、釣り合いの関係から、
Fg=(M+m)g−T=Mg+(m/n)g より、m/n(g)だけ質量が増える。
問題12 氷を食塩水に浮かべたところ、体積のちょうど1/9が水面上に出たという。氷の比
重を0.927として、この食塩水の密度を求めよ。
(解) 氷の体積をV(cm3)、食塩水の密度をn(g/cm3)とおくと、釣り合いの関係から、
0.927V=(8/9)V・n より、 n=1.042875 よって、およそ1.04(g/cm3)
問題13 容器内の水に浮かんでいる氷が溶けると水位は変化するか?
(解) 釣り合いの関係から、氷の重さは水面下の体積の水の重さに等しい。溶けても重さ
に変化がないので、水位も変化しない。
問題14 ある点が x=2+6t−t2 の運動をしているとき、x=8(m)を通るときの速さを求
めよ。また、速さが0になるのはどこか?
(解) v=dx/dt=6−2t より、 t=3−v/2 を x=2+6t−t2 に代入して、
x=2+6(3−v/2)−(3−v/2)2=−v2/4+11 から、 v2=4(11−x)
x=8 のとき、 v2=12 から、 v=±2(m/s)
また、v=0 として、 x=11(m)
問題15 1秒間に2回転する円運動の加速度を求めよ。
(解) 題意より、角速度ω=4π なので、 x=10sin4πt
よって、 dx/dt=4π・10cos4πt 、d2x/dt2=−16π2・10sin4πt
問題16(運動方程式)
質量m1の物体の下に質量m2の物体を軽い糸で吊るし、同時に加速度αでつり上げたと
きの糸の張力を求めよ。
(解) 質量m1の物体をつり上げる張力をT1、質量m2の物体が質量m1の物体を引っ張る
張力をT2とすると、運動の方程式から、
m1α=T1−T2−m1g 、 m2α=T2−m2g
辺々加えて、 (m1+m2)α=T1−(m1+m2)g より、 T1=(m1+m2)(α+g)
また、 T2=m2(α+g)
問題17(運動方程式)
質量m1の物体と質量m2の物体を軽い伸びない糸で結んでなめらかな釘にかける。
m1>m2のとき、m1の方は下降し、m2の方は上昇する。このとき、加速度αと糸の張力T
を求めよ。
(解) 運動の方程式から、
m1α=m1g−T 、 m2α=T−m2g
辺々加えて、 (m1+m2)α=(m1−m2)g より、 α=(m1−m2)g/(m1+m2)
また、 T=m1g−m1α=2m1m2g/(m1+m2)
問題18 鉛直線上の2定点に糸の両端を固定し、糸の中点におもりをつけて鉛直線の周
りに回転させるtき、次第に回転を速くしてゆくと、糸の上半部と下半部の何れが早
く切れるか?
(解) 慣性力をF、上半部、下半部の糸の張力をT1、T2、糸の鉛直線とのなす角をθとす
ると、水平方向の釣り合いの関係から、 F=T1sinθ+T2sinθ
鉛直方向の釣り合いの関係から、 T1cosθ=mg+T2cosθ
T2を消去して、 Fcosθ−T1sinθcosθ=T1sinθcosθ−mgsinθ
すなわち、 T1=(Fcosθ+mgsinθ)/(2sinθcosθ)
T1を消去して、 Fcosθ=T2sinθcosθ+mgsinθ+T2sinθcosθ
すなわち、 T2=(Fcosθ−mgsinθ)/(2sinθcosθ)
このとき、0<θ<π/2 の範囲では、 T1>T2
よって、上半部の方が早く切れる。
問題19 下図のような斜面に質量Mgの物体Aと質量mg(ただし、M>m)の物体Bが細い
糸で結ばれ、さらに物体Bには端Xが固定された弦巻ばねの端Yが結ばれている。
このばねは、1gwの力で引っ張るとkcm伸びる。このとき、次の問いに答えよ。
(1) 上図にあるような状態でつりあって静止しているとき、ばねの伸びはいくらか?
(2) 上図にあるような状態でつりあって静止しているとき、糸が突然切れた。このとき、物
体Aと物体Bが斜面を滑り落ちる加速度をそれぞれ求めよ。
ただし、重力加速度をgcm/s2とする。
(解)(1) ばねの伸びをx(cm)とすると、ばねの弾力は、 x/k(gw)
よって、 Mgcos30°=mgcos60°+x/k
これより、 x=kg(M−m)/2
(2) 物体A、Bの加速度をそれぞれ a、a’とおくと、
Ma=Mgcos30°より、 a=g/2
ma’=mgcos60°+x/k=mg/2+g(M−m)/2 より、a’=Mg/(2m)
問題20(力学的エネルギー保存の法則)
質量mの物体を鉛直上方に投げ出したとき、速さと高さの間にはどんな関係があるか。
(解) 物体の初速度をV0、高さhにおける物体の速度をVとおくと、
(1/2)mV02=(1/2)mV2+mgh より、 V02−V2=2gh
問題21(力学的エネルギー保存の法則)
質量mのおもりを長さがLの糸で天井から吊るし、糸を鉛直線と60°傾けておく。おもりを
放して糸が鉛直になったとき、糸の中点がそこにある釘によって止められたので以後は長さ
がL/2の振り子と変わった。この振り子が鉛直線と60°傾いたとき、おもりの速さVはどれ
だけになるか。
(解) 天井よりLだけ下の点を高さの基準に選ぶと、
0+mgL(1−cos60°)=(1/2)mV2+mg(L/2)(1−cos60°)
よって、 V2=gL/2 より、 V=√(gL/2)
問題22(比熱)
50℃のアルコール(比熱0.55)30gと60℃の水70gをビーカー(質量20g、比熱0.12
温度25℃)の中に入れたら、全体は何度になるか。
(解) アルコール30gは水に換算すると、30×0.55=16.5gに相当する。ビーカー20g
は水に換算すると、20×0.12=2.4gに相当する。
混ぜ合わせてT℃になるとして、水の得た熱量の総和は0であるので、
70(T−60)+16.5(T−50)+2.4(T−25)=0
よって、 88.9T=4200+825+60=5085 より、 T=57.1991
すなわち、全体は、57.2℃になる。
問題23 60℃の水8kgに0℃の氷を2kg入れたところで、32℃になった。氷の融解熱を
求めよ。
(解) 氷の融解熱をm(cal/g)とおくと、2000m+2000×32=8000(60−32)
よって、 2000m=224000−64000=160000 より、 m=80
問題24 次の現象を説明せよ。
(1) 虹に色が見える
(2) 水面上の油の油膜に色が見える
(3) 朝日、夕日が赤く見え、晴天の空が青く見える
(4) 白色光の下で赤色ガラス板を通して見ると、白色の物体でも赤く見える
(解)(1) 分散 (2) 干渉 (3) 散乱 (4) ガラスの吸収
問題25(クーロンの法則)
長さL(cm)、質量m(g)の2つのコルク振り子を同じ地点から吊り、コルクに等量の電荷q
を与えたところ、互いに反発して、糸の間の角が2αだけ開いて静止した。電荷はいかほど
か。
(解) 反発力をFとして、釣り合いから、 F=mgtanα
クーロンの法則から、 F=q2/(2Lsinα)2
よって、 q2/(2Lsinα)2=mgtanα から、 q=2Lsinα√(mgtanα)
問題26 100Vの電源で1Aの電流が流れるタングステン電球のタングステン線の抵抗は、
20℃ではいくらか。電灯が点火しているときのタングステンの温度を2700℃とし、
タングステンの抵抗の温度係数を53×10-4として計算せよ。
(解) 2700℃における抵抗は、100Ωなので、求める抵抗をRとすると、
100=R(1+53×10-4×(2700−20))=15.2R より、 R=6.6(Ω)
問題27 3つの抵抗線を図のように連結したとき、AB間の抵抗はどれほどか。また、A、B
の電位をそれぞれVA、VBとすれば、Cの電位VCはいくらか。
(解) BC間の抵抗をRとすると、 1/R=1/2+1/2=1 より、 R=1
よって、AB間の抵抗は、 3+1=4(Ω)
このとき流れている電流 I は、 I ×4=VA−VB
よって、 VA−VC= I ×3=(VA−VB)×(3/4) より、
VC=VA−(VA−VB)×(3/4)=(VA+3VB)/4
(コメント) 当然ながら、これは内分の公式からも求められますね。
問題28 下図の回路で、Eは起電力1.5V、内部抵抗3Ωの電池、Rは7Ωの抵抗線、C
はともに容量2μFのコンデンサーである。AB間、およびAP間の電圧を求めよ。
(解) AB間を流れる電流 I は、 I=1.5/(3+7)=0.15(A)
よって、 AB間の電圧は、 0.15×7=1.05(V)
また、コンデンサーの容量が等しいので、AP間の電圧は、 1.05÷2=0.53(V)
問題29(キルヒホッフの法則)
下図の回路で、E1=4V、R1=8Ω、E2=2Vとして、R2をいくらにすればABを流れる電
流が0となるか。
(解) 上図で、電流 i は、E1R1BE2R2AE1を一巡する。
回路E1R1BAE1について、ABを流れる電流は0なので、 i・R1=E1
回路E2R2ABAE2について、ABを流れる電流は0なので、 i・R2=E2
よって、 R2=R1・E2/E1=8・(2/4)=4(Ω)
以下、工事中!