鋏で切る数理                              戻る

 平成19年10月11日の午後3時〜午後3時半、NHK高校講座「数学基礎」で秋山 仁
先生が面白い話題を提供された。

 たとえば、次のような図形を考える。

     正方形の折り紙に鋏を1回だけ入れて正確

    に左図のような図形を切り取るにはどうしたら

    よいだろうか?












     この問いに答えるには、正方形の折り紙に

    左図のような折り目をつければ分かるだろう。












 実際には、次のようにすればよい。


     正方形の折り紙を左図のように対角線に沿

    って折る。













     再度残りの対角線に沿って折り、左図の赤

    線に沿って切り取れば、冒頭の図形が得られ

    る。



 以上の操作の基本的な原理は、角の2等分線と垂線の性質を用いる点である。

       

 この原理を用いれば、三角形を正方形の折り紙に鋏を1回だけ入れて切り取ることも容
易だろう。
          

 番組では、次の課題が出されていた。解答は示されなかったが、次のように考えればい
いのかな?

○ 正6角形を切り取る
                 

○ 星形を切り取る
                 


(追記) 平成26年10月10日付け

 上記の事実は、「多角形の一刀切り」(江戸時代には、「一刀斬り」?)と言われる。

 紙に書かれた多角形をハサミで切り取ることは易しい。この場合、ハサミは縦横無尽に紙
を切り取りながら動き回る。ハサミの向きを変えずに1回切るだけというのが、この「一刀切
り」のミソである。

 すなわち、次の事実が知られている。

 紙を上手く折り、ハサミの向きを変えずに一回切るだけで、任意の多角形が無限に
作れる


 これを数学的に証明したのは、MITの若き数学者エリック・ディメイン(Erik Demaine)である。

 エリック・ディメインによれば、

 切り出す図形において、それぞれの角の二等分線と、切り出す線に下ろした垂線を
折っていく。どれだけ複雑な形でも、多角形は最終的に三角形と四角形に分割できる。
 さらに、折り目を追加すれば、三角形と四角形が一直線上に並ぶように折りたたむこ
とができる


という。

例 三角形の一刀切り

   左図のような三角形を切り取りたい場合、

   黒・青・紫の実線(角の2等分線)を山折り、内
  心から辺に下ろした垂線を谷折りすれば、三角
  形の3辺は同一直線上に重なり、従って一刀切
  りが可能となる。




 一刀切りをする際の基本的な方針は、

 (1) 隣り合う2本の辺が作る角の2等分線を描く。

 (2) 角が180°より小さければ、山折り、大きければ、谷折りにする。


 読者のために、練習問題を残しておこう。

練習問題  数字の0から9までを一刀切りせよ。

(Hint) 易しい方から、 1 → 7 → 0 → 2 → 5 → 8 → 3 → 4 → 6(9)