約数の個数と和
自然数 N が、
N=paqb・・・rc (p<q<・・・<r は素数、a、b、・・・、c は 0 以上の整数)
と素因数分解されるとき、N の約数の個数 D と約数の総和 S は、次の公式で与えられる。
D=(a+1)(b+1)・・・(c+1)
これらの公式は、順列・組合せや数列の学習のときに、我々の前に登場するものである。
公式の簡明さから、D → S の順で発見されたと、今まで思っていたが、事実は逆であった。
公式 D が発見されたのは、1761年 カスチリオーニ によってであり、公式
S は、それより
古く、1658年 イギリスのジョン・ウォーリスによって発見された。
(参考文献:イー・ヤーデップマン 著 藤川 誠 訳 算数の文化史(現代工学社))
例 12の約数の総和を求めよ。
12の約数は、1、2、3、4、6、12 の6個あり、その総和は、
1+2+3+4+6+12=28
である。一般には、 12=22・3 と素因数分解し、その約数の総和は
1+2+3+4+6+12
=1+2+3+22+2・3+22・3
=1+2+22+(1+2+22)・3
=(1+2+22)(1+3)
として求められる。これが、上記で示された公式である。
上記の話題を一般化して、約数関数(Divisor function) σm と言われるものがある。
次のように定義される。
正の整数 n に対して、
ここで、m=0 のとき、
=(d が n の約数のとき、1を加算)=(n の約数の個数) |
m=1 のとき、
=(n の約数の総和) |
である。
例 σ1(1)=1 、σ1(2)=3 、σ1(3)=4 、σ1(4)=7 、σ1(5)=6 、σ1(6)=12
ここで、σ1(n)=2n となる数は、完全数と言われる。
例 28は、完全数である。
実際に、28の約数は、1、2、4、7、14、28 なので、
σ1(28)=1+2+4+7+14+28=2×28 より、28は完全数である。
一般に、
n=paqb・・・rc に対して、
σm(n)=(1+pm+・・・+pma)(1+qm+・・・+qmb)・・・(1+rm+・・・+rmc)
である。
例 n=900 に対して、 n=22・32・52
約数の個数は、 (2+1)(2+1)(2+1)=27
上記の公式を用いると、
σ0(900)=(1+(1が2個))(1+(1が2個))(1+(1が2個))
=(1+2)(1+2)(1+2)=27
約数の総和は、 (1+2+22)(1+3+32)(1+5+52)=2821
上記の公式を用いると、
σ1(900)=(1+2+22)(1+3+32)(1+5+52)=2821
ここで、面白い性質がある。
220の約数は、 1、2、4、5、10、11、20、22、44、55、110、220 なので、
σ1(220)=1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110+220=504
504から自分自身(220)を差し引いた数は、 504−220=284
ここで、284の約数は、 1、2、4、71、142、284 なので、
σ1(284)=1+2+4+71+142+284=504
504から自分自身(284)を差し引いた数は、 504−284=220
このような 220 と 284 の関係にある数は、友愛数と言われる。
例 友愛数の例としては、
1184 と 1210 、 2620 と 2924 、 ・・・
などが知られている。
当HPの掲示板「出会いの泉」に、HN「hasu」さんという方が、次のような問題を書き込ま
れた。(平成23年8月30日付け)
この前、本で読んだ問題なのですが、σ(x)+σ(y)=σ(x+y) となるx、y を求める問
題です。x=1、y=2
以外に解はあるのでしょうか? ここで、σ(x)は約数関数です。
HN「hasu」さんが言われる「σ(x)は約数関数」であるが、
σ1(1)=1、σ1(2)=3、σ1(3)=4 より、
σ1(1)+σ1(2)=4=σ1(3)=σ1(1+2)
であることと、前後の文脈から、 σ=σ1 なのだろう。
x、y
が互いに素のとき、 σ1(x)・σ1(y)=σ1(x・y) は成り立つと思われるが、一般の
x、y
については成り立ちそうにない。ましてや、σ1(x)+σ1(y)=σ1(x+y) が成り立つ
ことは、ほとんど期待できないと思われる。
この私の予想に反して、当HPがいつもお世話になっているHN「らすかる」さんが、解を見
出された。(平成23年8月30日付け)
x≦y として、(x,y) = (1,2) の他に
(4,5)、(2,6)、(2,8)、(5,10)、(7,14)、(2,18)、(14,18)、(11,22)、(6,24)、・・・
と無数にあるのではないでしょうか。
hasuさんからのコメントです。(平成23年8月30日付け)
確かに、(x,y,x+y)と互いに素な数をかければいいので、無限にありますね。でも、原
始ピタゴラス的な組は無限にあるのでしょうか?
らすかるさんからのコメントです。(平成23年8月30日付け)
証明はわかりませんが、y が素数であるものに限定しても、
(x,y) = (1,2)、(4,5)、(26,29)、(20,37)、(8,41)、(12,43)、(38,47)、(56,61)、(44,67)、
(62,83)、(40,101)、(76,107)、(56,127)、(92,127)、(24,131)、(112,167)、
(124,167)、(122,173)、(24,179)、(88,179)、(62,191)、(68,197)、(160,197)、
(110,199)、(80,229)、(56,239)、(54,251)、(136,257)、(92,263)、(220,263)、
(182,271)、(212,277)、(170,283)、・・・
のようになりますので、無数にありそうです。
(追記) 平成26年11月26日付け
約数の和を求めるアイデアが次の問題でも活かされる。
学習院大学法学部(1982) 入試問題
自然数nの十進法表示に表れる数字の積をF(n)で表す。例えば、
F(3)=3 、F(15)=1×5=5 、F(305)=0
である。このとき、Σn=1〜1000 F(n) を求めよ。
(解) 題意より、
Σn=1〜1000 F(n)
=Σn=1〜9 F(n)+Σn=10〜99 F(n)+Σn=100〜999 F(n)+F(1000)
=(1+2+3+4+5+6+7+8+9)
+(1+2+3+4+5+6+7+8+9)(0+1+2+3+4+5+6+7+8+9)
+(1+2+3+4+5+6+7+8+9)(0+1+2+3+4+5+6+7+8+9)(0+1+2+3+4+5+6+7+8+9)
+0
=45+45×45+45×45×45+0=93195 (終)
(コメント) 括弧を展開すると、それぞれの数における値が求められていることに計算の美
しさを感じる。
以下、工事中