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級数展開法・・・微分方程式を級数を用いて解く方法
微分方程式を級数を用いて解くといっても、ただ闇雲に級数を微分方程式に代入して解け
ば済むというほど、生易しい問題ではない。級数には、収束半径というものがあり、せっかく
求めた級数が解として意味を持たないということもありえる。
したがって、ここではいくらか予備知識を確認しなければならない。
ΣC
n(X−a)
n (n=0,1,・・・) の形の級数を、
整級数という。
整級数 ΣC
n(X−a)
n (n=0,1,・・・) が、あるXの値で有限確定値になるとき、
そのXの値で、整級数は
収束するという。収束しないとき、
発散するという。
整級数 ΣC
n(X−a)
n (n=0,1,・・・) において、
|X−a|<R の範囲で収束、|X−a|>Rの範囲で発散
であるとき、整級数の
収束半径は、Rであるという。
収束半径の計算については、次の
Cauchy-Hadamard の定理が知られている。
定理 整級数 ΣC
n(X−a)
n (n=0,1,・・・) において、その収束半径Rは、次の式で
与えられる。
|
![](diff-eq103021.gif) |
または |
![](diff-eq103022.gif) |
(注意) 上記の計算で、lim sup を上極限という。
上極限の計算については、次の例題で感覚を理解してください。
(例題) a
n=(−1)
n(1+1/n) について、上極限、下極限を求めよ。
![](diff-eq103023.gif)
(答) lim sup a
n=1、lim inf a
n=−1
練習 次の整級数の収束半径を求めよ。
(1) ΣX
n (n=0,1,・・・)
(2) Σ(1/n)X
n (n=0,1,・・・)
(3) Σ(1/
n!)X
n (n=0,1,・・・)
(答)(1) R=1 (2) R=1 (3) R=+∞
関数が正則(または解析的)ということ
関数 F(X) が、X=a の近くで、
F(X)=ΣC
n(X−a)
n (n=0,1,・・・)
と表され、その収束半径が0ではないとき、関数 F(X) は、
X=a の近くで正則であるという。
微分方程式 Y”+PY’+QY=R において、
P、Q、R が正則であるような点 X=a を、微分方程式の
通常点といい、
その他の点を、
特異点という。
通常点、特異点では利用する級数の形が異なる。特異点については、さらなる分類があり、
非常に難しい議論が待っている。したがって、このページでは、通常点のみを考えることにする。
このとき、次の定理は有名である。
定理(コーシーの定理)
微分方程式 Y”+PY’+QY=R において、
P、Q、Rが、X=a の近くで正則ならば、微分方程式の解もX=a の近くで正則である。
通常点においては、この定理のおかげで、安心して微分方程式を級数展開して求めることが
できる。
例題 微分方程式 Y’=X+2XY を解け。
関数 X、2X は、X=0 の近くで正則なので、コーシーの定理により、微分方程式の解も
X=0 の近くで、正則である。
今、Y=C
0+C
1X+C
2X
2+C
3X
3+・・・+C
nX
n+・・・ とおくと、
Y’=C
1 +2C
2X+3C
3X
2+・・・+nC
nX
n−1+・・・ で、
X+2XY= (1+2C
0)X+2C
1X
2+・・・+2C
nX
n+1+・・・ なので、
係数を比較して、
C
1=0、2C
2=1+2C
0、3C
3=2C
1、・・・、nC
n=2C
n−2 が成り立つ。
よって、
C
0=C
2−1/2、C
3=0、C
4=(1/2)C
2、C
5=0、C
6=(1/3)C
4=(1/
3!)C
2、・・・
したがって、求める解は、
Y=C
2(1+X
2+(1/
2!)X
4+(1/
3!)X
6+・・・ ) (ただし、C
2は任意定数)
この整級数の収束半径は、明らかに、+∞ である。
(注意) 指数関数 F(X)=
eX のマクローリン展開:
eX=1+X+(1/
2!)X
2+(1/
3!)X
3+・・・
を知っていれば、上記の解は、簡単に、
![](diff-eq103024.gif)
と書ける。