3.微分方程式を解く                   戻る

(2) 級数展開法・・・微分方程式を級数を用いて解く方法
   微分方程式を級数を用いて解くといっても、ただ闇雲に級数を微分方程式に代入して解け
  ば済むというほど、生易しい問題ではない。級数には、収束半径というものがあり、せっかく
  求めた級数が解として意味を持たないということもありえる。
   したがって、ここではいくらか予備知識を確認しなければならない。
  
  ΣC(X−a) (n=0,1,・・・) の形の級数を、整級数という。

  整級数 ΣC(X−a) (n=0,1,・・・) が、あるXの値で有限確定値になるとき、
 そのXの値で、整級数は収束するという。収束しないとき、発散するという。

  整級数 ΣC(X−a) (n=0,1,・・・) において、
    |X−a|<R の範囲で収束、|X−a|>Rの範囲で発散
 であるとき、整級数の収束半径は、Rであるという。

  収束半径の計算については、次の Cauchy-Hadamard の定理が知られている。

 定理  整級数 ΣC(X−a) (n=0,1,・・・) において、その収束半径Rは、次の式で
     与えられる。
 または    

   (注意) 上記の計算で、lim sup を上極限という。
     上極限の計算については、次の例題で感覚を理解してください。

(例題) a=(−1)(1+1/n) について、上極限、下極限を求めよ。

           (答) lim sup a=1、lim inf a=−1

 練習 次の整級数の収束半径を求めよ。
    (1) ΣX (n=0,1,・・・)
    (2) Σ(1/n)X (n=0,1,・・・)
    (3) Σ(1/n!)X (n=0,1,・・・)
                           (答)(1) R=1 (2) R=1 (3) R=+∞

  関数が正則(または解析的)ということ
   
関数 F(X) が、X=a の近くで、
            F(X)=ΣC(X−a) (n=0,1,・・・)
  と表され、その収束半径が0ではないとき、関数 F(X) は、X=a の近くで正則であるという。

  微分方程式 Y”+PY’+QY=R において、
    P、Q、R が正則であるような点 X=a を、微分方程式の通常点といい、
   その他の点を、特異点という。

  通常点、特異点では利用する級数の形が異なる。特異点については、さらなる分類があり、
 非常に難しい議論が待っている。したがって、このページでは、通常点のみを考えることにする。

  このとき、次の定理は有名である。

 定理(コーシーの定理)
   微分方程式 Y”+PY’+QY=R において、
  P、Q、Rが、X=a の近くで正則ならば、微分方程式の解もX=a の近くで正則である。

 通常点においては、この定理のおかげで、安心して微分方程式を級数展開して求めることが
できる。

 例題 微分方程式 Y’=X+2XY を解け。

   関数 X、2X は、X=0 の近くで正則なので、コーシーの定理により、微分方程式の解も
  X=0 の近くで、正則である。
   今、Y=C+CX+C+C+・・・+C+・・・ とおくと、
        Y’=C  +2CX+3C+・・・+nCn−1+・・・ で、
    X+2XY=  (1+2C)X+2C+・・・+2Cn+1+・・・ なので、
  係数を比較して、
    C=0、2C=1+2C、3C=2C、・・・、nC=2Cn−2 が成り立つ。
  よって、
    C=C−1/2、C=0、C=(1/2)C、C=0、C=(1/3)C=(1/3!)C、・・・
  したがって、求める解は、
      Y=C(1+X+(1/2!)X+(1/3!)X+・・・ )   (ただし、Cは任意定数)
  この整級数の収束半径は、明らかに、+∞ である。

 (注意) 指数関数 F(X)= のマクローリン展開:
       e=1+X+(1/2!)X+(1/3!)X+・・・
  を知っていれば、上記の解は、簡単に、
          
  と書ける。