内接円のある性質                      戻る

  左図のような正三角形 ABC において、
 円 I は、その内接円とする。

  各辺に平行な、内接円の接線が各辺と
 交わる点を、それぞれ、
     P 、 Q 、 R 、 S 、 T 、 U
 とする。

  頂点 A より、底辺 BC に下ろした垂線
 の足を、M とし、PQ との交点を、H とす
 る。

  △ABC の面積を S とし、△APQ 、
 △BSR 、△CUT の面積を、それぞれ
  S1 、 S2 、 S3  とする。

 正三角形 ABC の一辺の長さを 6 とすると、 S = 9 である。

 正三角形においては、内心と重心は一致するので、 AH : AM = 1 : 3 が成り立つ。

 面積比は、相似比の2乗に等しいので、 S1 となる。

 対称性から、 S2 = S3

 したがって、次の関係式  が成り立つ。


 上記の証明の方針を検討してみると、この等式は、一般の三角形についても成り立つこ
とが予想される。

 頂点 A、B、C より各対辺に下ろした垂線の長さを、それぞれ hA、hB、hC とおく。

また、BC=a 、CA=b 、AB=c に対して、p=(a+b+c)/2 とおき、内接円の半径を r
とおく。

1 = S×((hA−2r)/hA2 、S2 = S×((hB−2r)/hB2 、S3 = S×((hC−2r)/hC2

である。また、

 (hA−2r)/hA+(hB−2r)/hB+(hC−2r)/hC=3−2r(1/hA+1/hB+1/hC

において、 1/hA+1/hB+1/hC=a/(2S)+b/(2S)+c/(2S)=p/S=1/r なので、

 (hA−2r)/hA+(hB−2r)/hB+(hC−2r)/hC= 1

となる。したがって、一般の三角形においても、  が成り立つ。


(応用例) 問題の設定は、冒頭と同様とする。下図の緑色の部分の面積を求めてみよう。

    内接円の半径は、明らかに、1 なので、

      S1 = (1/2)・(4/3)・1 =2/3

      S2 = (1/2)・2・(3/2) =3/2

      S = (1/2)・4・3 =6

    よって、等式により、S3 = 1/6

 上記の面積は、もちろん等式を用いなくても求めることはできるが、ちょっとだけ計算は
大変かもしれない。


(追記) 平成21年12月1日付け

 上記の応用問題について、HN「zarusan」さんから等式を用いない別解を頂いた。

    内接円の半径は、明らかに、1 で、円に外接す

   る正方形の面積は、4。 この正方形と三角形と

   の重ならない部分は、S3 と合同であることから、

      S3=S1+S2+4−S=1/6

(コメント) この応用問題は等式を試してもらうための問題で、「zarusan」さんのような別
      解も有りですね!素朴な解法で、こちらの方が本解でしょう。「zarusan」さんに
      感謝します。


(追記) 令和5年7月6日付け

 冒頭の図形について、

  

 正三角形 ABC の一辺の長さを 6 とすると、S = 9 で、

 △APQ=△BSR=△CUT= であることから、

 六角形PRSTUQの面積は、 9−3×=6 となる。

 六角形PRSTUQは、正しくは、等辺六角形である。この図形は、正三角形を2枚、内心が
一致するように重ねたときに出来る図形で、上図の場合が面積最小となる。

 この場合について、もう少し精査してみよう。この話題は、今から60年以上の昔、京都大
学で出題(1960年)された。

 一辺の長さが 6 の正三角形 ABC と正三角形 A’B’C’ を、内心 I が一致するように重
ねる。言い換えれば、I を中心に反時計回りに正三角形 ABC を角θだけ回転させて、正三
角形 A’B’C’ を得る。辺ABと辺A’B’の交点をD、辺BCと辺A’B’の交点をEとし、さらに、
辺ABと辺A’C’の交点をFとおく。

  

 このとき、∠ABA’=∠B’A’B から、△DBA’は2等辺三角形となる。よって、DA’=DB

△DIA’と△DIB において、DI 共通で、IA’=IB、DA’=DB より、△DIA’≡△DIB

よって、 ∠DIA’=∠DIB となり、IDは2等辺三角形IA’Bの∠A’IBの2等分線となる。

したがって、 IM⊥A’B 、A’H=BH より、A’とBは、線分IMに関して線対称である。

弧MA=弧MB’、弧MC=弧MC’なので、AとB’、CとC’も線分IMに関して線対称である。

 以上から、正三角形 ABC と正三角形 A’B’C’ は、線分IMに関して線対称である。

 このとき、DE=DF である。同様にして、2つの正三角形の共通部分が等辺六角形であ
ることが分かる。

 △BDEにおいて、正弦定理より、 BE/sinθ=DE/sin60°=BD/sin(120°−θ)

 A’D=BD 、BE=B’E から、 BD+DE+BE=6 なので、

 {sin(120°−θ)/sin60°}DE+DE+{sinθ/sin60°}DE=6 より、

 DE=6/[{sin(120°−θ)/sin60°}+1+{sinθ/sin60°}]

  =6/(sinθ+cosθ+1)=6/(2sin(θ+π/6)+1)

 0≦θ≦2π/3 より、 π/6≦θ+π/6≦5π/6 なので、DEは、θ+π/6=π/2

 即ち、θ=π/3 のとき、最大である。最大値は、2 となる。

このとき、正三角形ABCの内接円の半径 r は、 9r=9 より、r= なので、

等辺六角形の面積は、

 DE・・(1/2)・6=18/(2sin(θ+π/6)+1)

で与えられる。

 よって、面積最小となる等辺六角形の面積は、 2・・(1/2)・6=6 となる。

#θ=π/3 のとき、2つの正三角形の交わりの様子は冒頭の図になる。



  以下、工事中!