有理化の真実                              戻る

 分母の有理化というと、「大凡の数の大きさを求めるため」という視点の他に、「数の拡張
で、商の定義が適切かを確認するため」という視点もあるということを、当HPがいつもお世
話になっているS(H)さんからの一連の課題からご教示いただいた。
(平成21年2月25日付け)

例 有理数体Qに、数を添加した体Q()において、1/ は、1 と の線形結合
  で表される。

 中学校数学風にやれば、1//2 なので、1/=0・1+(1/2) であるが、
分母の有理化の一般化を想定すれば、次のような計算をするのだろう。

(解) x= は、2次方程式 x2−2=0 を満たす。(→ 2次式 x2−2 の零点!)

このとき、x2=2 より、1=x2/2 で、1/x=x/2

したがって、1//2=0・1+(1/2)  (終)


例 有理数体Qに、数 を添加した体Q()において、1/(+1) は、 1 と
  の線形結合で表される。

(解) x= は、2次方程式 x2−2=0 を満たす。(→ 2次式 x2−2 の零点!)

このとき、x2=2 より、x2−1=1 で、(x+1)(x−1)=1 より、1/(x+1)=x−1

したがって、1/(+1)=−1=(−1)・1+1・  (終)


(追記) 当HPがいつもお世話になっているHN「GAI」さんが、累乗根の有理化問題を出題
    されました。(平成27年5月4日付け)

 平方根の有理化で、 1/(1+)=(2+)/4 とできる。では、

 P=1/(1+) 、Q=1/(1+) 、R=1/(1+)

をそれぞれ有理化したらどんな式になるか?


 S(H)さんが考察されました。(平成27年5月4日付け)

 或る発想で解くと、

 1/(1 + 64^(1/5) - 4^(1/5)) = (25 + 8・2^(1/5) + 9・2^(2/5) - 10・2^(3/5) + 29・2^(4/5))/161

 1/(1 + 2^(1/7) + 64^(1/5) - 4^(1/3))  と冪を変えた場合の有理化は?


 よおすけさんからのコメントです。(平成27年5月4日付け)

 P=1/(1+) で間違いないですか?もし、P=1/(1+) なら、分母、分
子に、(1−) をかけて、−1 となりますが...。


 らすかるさんが考察されました。(平成27年5月4日付け)

 P=1/(1+) は、 x= とおけば、 P=1/(1+x−x2)

 ここで、1+x−x2=−x2+x+1 … (1) は、x倍して、 x2+x−2 … (2) (∵x3=2)

再度x倍して、 x2−2x+2 … (3) で、(2)+(1) は、2x−1 、(3)+(1) は、−x+3 より、

 {(2)+(1)}+2{(3)+(1)}=5 すなわち、 (1)×3+(2)+(3)×2=5 だから、

 (1+x−x2)(3+x+2x2)=5

よって、P=1/(1+x−x2)=(3+x+2x2)/5=(3++2・)/5

 Q=1/(1+) は、 x= とおけば、 Q=1/(1+x−x3)

 ここで、1+x−x3=−x3+x+1 … (1) は、x倍して、 x2+x−2 … (2) (∵x4=2)

再度x倍して、 x3+x2−2x … (3) 、再度x倍して、 x3−2x2+2 … (4) で、

 (1)+(3)は、 x2−x+1 … (5) 、(1)+(4)は、 −2x2+x+3 … (6) 、

 (2)−(5)は、2x−3 … (7)

 (2)×2+(6)は、 3x−1 … (8) 、(8)×2−(7)×3 は、7 より、

{(2)×2+(1)+(4)}×2−{(2)−(1)−(3)}×3=7 すなわち、

(1)×5+(2)+(3)×3+(4)×2=7 だから、(1+x−x3)(5+x+3x2+2x3)=7

よって、 Q=1/(1+x−x3)=(5+x+3x2+2x3)/7=(5++3・+2・)/7

 R=1/(1+) は、 x= とおけば、 R=1/(1+x3−x)

 ここで、1+x3−x=x3−x+1 … (1) は、x倍して、 x4−x2+x … (2)

再度x倍して、 −x3+x2+4 … (3) (∵x5=4) 、再度x倍して、 −x4+x3+4x … (4)

再度x倍して、 x4+4x2−4 … (5) で、

 (2)+(4)は、 x3−x2+5x … (6) 、(4)+(5)は、 x3+4x2+4x−4 … (7)

 (1)+(3)は、 x2−x+5 … (8) 、(3)+(6)は、 5x+4 … (9) 、

 (3)+(7)は、 5x2+4x … (10) 、(10)−(8)×5は、 9x−25 … (11) 、

 (9)×9−(11)×5は、161 より、

  {(3)+(2)+(4)}×9−[(3)+(4)+(5)−{(1)+(3)}×5]×5=161

すなわち、 (1)×25+(2)×9+(3)×29+(4)×4−(5)×5=161 だから、

 (1+x3−x)(25+9x+29x2+4x3−5x4)=161

よって、

R=1/(1+x3−x)=(25+9x+29x2+4x3−5x4)/161

 =(25+9・+29・+4・−5・)/161


(コメント) らすかるさんの解法は、「有理化の真実」の趣旨に沿うもので参考になります。

 1/(+1) の有理化を考える場合、らすかるさんの手法を使えば次のようになります。

 x= とおく。 x+1 ・・・(1) に、x を掛けて、 x2+x=x+2 ・・・(2) (∵x2=2) で、

 (2)−(1)は、1 より、 (x+1)(x−1)=1 だから、 1/(x+1)=x−1=−1


 当HPの掲示板「出会いの泉」の平成27年5月6日付けのS(H)さんのコメントを参考に
P=1/(1+)  の有理化の別解を考えてみた。

 =x とおくと、P=1/(1+x−x2) で、x3=2 より、 x3−2=0

 (x3−2)÷(−x2+x+1) を計算して、商は、−x−1 で、余りは、2x−1

 (−x2+x+1)÷(2x−1) を計算して、商は、−(1/2)x+1/4 で、余りは、5/4

 よって、x3−2=(−x2+x+1)(−x−1)+2x−1 、

 −x2+x+1=(2x−1)(−(1/2)x+1/4)+5/4 より、

 −x2+x+1={x3−2−(−x2+x+1)(−x−1)}(−(1/2)x+1/4)+5/4

すなわち、 (x3−2)((1/2)x−1/4)+(−x2+x+1){1+(−x−1)(−(1/2)x+1/4)}=5/4 より、

  (x3−2)((2/5)x−1/5)+(−x2+x+1)((2/5)x2+(1/5)x+3/5)=1 ・・・(*)

 上式に、x= を代入して、 P=(3++2・)/5 が示される。


(コメント) 上式のベズーの等式(*)が有理化のための基本の式になるんですね!


 GAI さんから新しい問題をいただきました。(令和5年9月15日付け)

 x= のとき、

(1) P=1/(x2+3x+1)  (2) Q=1/(x3+3x+1)

なる式を有理化せよ。


(コメント) S(H)さんの手法を用いて、

(1) x3−2=(x2+3x+1)(x−3)+8x+1

  x2+3x+1=(8x+1)((1/8)x+23/64)+41/64 から、8x+1 を消去して、

 (x3−2)(−8x−23)+(x2+3x+1)(8x2−x−5)=41

 x= のとき、x3−2=0 なので、 P=1/(x2+3x+1)=(8x2−x−5)/41

(2) x3+3x+1=3x+3=3(x+1) より、

 (x+1)(x2−x+1)=x3+1=3 なので、

 Q=1/(x3+3x+1)=1/(3(x+1))=(x2−x+1)/9



   以下、工事中