2項演算について
当HPの読者のK.S.さんより、平成23年10月17日付けで標記話題をメールで頂いた。
ちょうど自宅のメインパソコンがクラッシュし、その修復を急いでいたので、アップするのが
遅れてしまった。この場を借りて、K.S.さんにお詫びします。
「1+1=2」である必然性はあるのか?
以下の計算方法だと、「1+1=3」((*)で、α=1)でもよいことになる。2項演算として、
トロピカル幾何というのがあるが、以下では、交換律、結合律、分配律が、成り立つ演算に
ついて考えることにする。
複素数体上で、2項演算を
C×C:(z1,z2) → z3∈C (ただし、α∈C)
(*) z1 z2=z1+z2+α 、 z1 z2=(z1+α)(z2+α)−α
と定義した場合、
和の単位元は、任意の z1∈C に対して、z1 z2=z1 より、z1+z2+α=z1
つまり、z2=−α とすればよい。
積の単位元は、任意の z1∈C に対して、z1 z2=z1 より、(z1+α)(z2+α)−α=z1
つまり、z2=1−α とすればよい。
交換律は、明らかに成り立つ。次に、結合律が、成り立つことを示す。
z1 (z2z3)=z1 (z2+z3+α)=z1+z2+z3+2α
(z1 z2)z3= (z1+ z2+α)z3=z1+z2+z3+2α
よって、z1 (z2z3)=(z1 z2)z3
z1 (z2z3)=z1 ((z2+α)(z3+α)−α)
=(z1+α)((z2+α)(z3+α)−α+α)−α=(z1+α)(z2+α)(z3+α)−α
(z1 z2)z3= ((z1+α)(z2+α)−α)z3
=((z1+α)(z2+α)−α+α)(z3+α)−α=(z1+α)(z2+α)(z3+α)−α
よって、 z1 (z2z3)=(z1 z2)z3
同様にして、分配律が成り立つことも示される。
z1 (z2z3)=z1 (z2+z3+α)=(z1+α)(z2+z3+2α)−α
(z1 z2)(z1z3)=((z1+α)(z2+α)−α)((z1+α)(z3+α)−α)
=(z1+α)(z2+α)−α+(z1+α)(z3+α)−α+α=(z1+α)(z2+z3+2α)−α
よって、 z1 (z2z3)=(z1 z2)(z1z3)
次に、C×C:(z1,z2) → z3∈C (ただし、α∈C)
(**) z1 z2=z1+z2 、 z1 z2=z1z2e-iα
と定義した場合、
和の単位元は、任意の z1∈C に対して、z1 z2=z1 より、z1+z2=z1
つまり、z2=0 とすればよい。
積の単位元は、任意の z1∈C に対して、z1 z2=z1 より、z1z2e-iα=z1
つまり、z2=eiα とすればよい。
交換律は、明らかに成り立つ。次に、結合律が成り立つことを示す。
和の結合律は明らかに成り立つ。 積の結合律について、
z1 (z2z3)=z1 z2z3e-iα=z1z2z3e-2iα
(z1 z2)z3= z1z2e-iαz3=z1z2z3e-2iα
よって、 z1 (z2z3)=(z1 z2)z3
同様にして、分配律が成り立つことも示される。
z1 (z2z3)=z1 (z2+z3)=z1(z2+z3)e-iα
(z1 z2)(z1z3)=z1z2e-iα z1z3e-iα=z1z2e-iα+z1z3e-iα=z1(z2+z3)e-iα
よって、 z1 (z2z3)=(z1 z2)(z1z3)
さらに、C×C:(z1,z2) → z3∈C (ただし、α∈C)
(***) z1 z2=z1~+z2~ 、 z1 z2=z1~z2~ (ただし、z~は、zの共役複素数)
と定義した場合、
交換律、結合律、分配律は明らかに成り立つ。
(*)は併進タイプ (**)は回転タイプ (***)は実軸対称(一般の直線に対しても可能)
その他に、これらの合成も考えられます。
(*)のときは、不動点がなく、(**)のときは、不動点は1つ、(***)のときは、不動点は無
限にある。その他に、どのようなタイプがあるでしょう?