漸化式の全て ・・・ その解法の研究                 目次に戻る

1.漸化式の基本形  全ての漸化式はこのタイプに帰着される。

 (1) 等差数列型  a1=a 、an+1=a+d ならば、 a=a+(n−1)d (d : 公差)

 (2) 等比数列型  a1=a 、an+1=ra ならば、 a=a・rn-1 (r : 公比)

   ただし、a、d、r は n に無関係な定数。

2.漸化式の基本形くずれ  F(n)は n の関数とする。

 (1) a1=a 、an+1=a+F(n) 型

   (解法) an+1−a=b と{b}は{a}の階差数列だから、

       n≧2 のとき、 a=a+Σk=1〜n-1 F(k)

 (2) a1=a 、an+1=a・F(n) 型

   (解法) ak+1/a=F(k) (k=1、2、・・・、n−1) を辺々掛けて、

       a/a=Πk=1〜n-1 F(k) より、 a=a・Πk=1〜n-1 F(k)

3.隣接2項間の漸化式  (例) a1=1 、an+1=2a+1

 (解法T・・・逐次代入法)  a1=1、a2=3、a3=7、・・・ より、a=2−1 と類推され

                る。この類推が正しいことを数学的帰納法により証明すればよい。

 (解法U・・・特性解利用法) α=2α+1 より、α=−1  これを利用して、

                an+1+1=2(a+1) と変形される。

                a+1=b とおけば、1.(2)のタイプに帰着される。

 (解法V・・・階差数列利用法)  an+2−an+1=2(an+1−a) より、an+1−a=b と

                おけば、1.(2)のタイプに帰着される。

(注意) 上記解法T、U、Vを見ても分かる通り、特性解の利用が最も便利な方法である
    が、特性解が直ぐに使えない場合もある。

4.少し工夫を要する漸化式 ・・・ 定数に n が入っている場合

 (例1) a1=1 、an+1=2a+n

  (解法) an+2−an+1=2(an+1−a)+1 より、an+1−a=b とおけば、3.のタイプ

      に帰着される。

 (例2) a1=1 、an+1=3a+2n+1

  (解法) 両辺を3n+1で割って、a/3=b とおくと、2.(1)のタイプに帰着される。

5.「4.少し工夫を要する漸化式」の一般化を、HN「Ren」さんよりいただきました。
                                       (平成28年7月25日付け)

 (例) a1=a 、an+1=a・F(n)+G(n) 型の漸化式の両辺をH(n)で割って階差型に帰

    着できる場合(4.(例2)のタイプの一般化)

    F(n)/H(n)=1/H(n-1) つまり、 H(n)=F(n)H(n-1)

   これを解いて、 H(n)=H(1)F(1)F(2)…F(n) となる。ここで、H(1)は定数なので無視で

  きる。よって、 kF(1)F(2)…F(n) (kはnに無関係の任意の実数) で割ればいい。

 例 a1=a 、an+1=n・a+n! のときは、両辺を n!で割ればよい。

 例 a1=a 、an+1=2・a+2^(n(n+1)/2)  のときは、両辺を 2^(n(n+1)/2) で割ればよい。

6.隣接3項間の漸化式  (例) a1=1、a2=2 、an+2−3an+1+2a=0

  (解法) 特性方程式 α2−3α+2=0 を解いて、 α=1、2

      このとき、 an+2−an+1=2(an+1−a) より、 an+1−a=2n-1

             an+2−2an+1=an+1−2a より、 an+1−2a=0

      この連立方程式を解いて、 a=2n-1

7.少し工夫を要する3項間漸化式 ・・・ 定数が0以外のとき

 (例) a1=1、a2=2 、an+2−3an+1+2a=6

  (解法) 番号をずらして、 an+3−3an+2+2an+1=6 なので、辺々引いて、

       an+1−a=b とおけば、6.のタイプに帰着される。

8. 対数をとる型の漸化式

 (例) a1=3 、an+1=√a

  (解法) 任意のnについて、a>0より、両辺の対数をとって、 log an+1=(1/2)log a

      そこで、log a=b とおけば、2.(2)のタイプに帰着される。

9.分数型漸化式

 (例1) a1=1 、an+1=a/(3−a

  (解法) a1≠0 より、任意のnについて、a≠0 だから、両辺の逆数をとって、

     1/an+1=3/a−1  そこで、 1/a=b とおけば、3.のタイプに帰着される。

 (例2) a1=1 、an+1=(a−4)/(a−3)

  (解法) 特性方程式 α=(α−4)/(α−3) を解いて、 α=2  そこで、

     an+1−2=(−a+2)/(a−3) となるから、 a−2=b とおけば、9.(例1)

    のタイプに帰着される。


10.隣接4項間の漸化式  (例) a1=a2=a3=1 、an+3=−an+2+2an+1+8a

 この(例)はGAI さんより頂きました。(平成27年3月26日付け)


 DD++さんから解法の指針を頂きました。(平成27年3月26日付け)

 an+3=−an+2+2an+1+8a から、 an+3+3an+2+4an+1=2(an+2+3an+1+4a

となるので、 an+2+3an+1+4a=2n-1(a3+3a2+4a1)=2n+2

 そこで、 b=a−2n+1/7 とおくと、 bn+2+3bn+1+4b=0 となるので、

 b1=3/7、b2=−1/7 と合わせて3項間漸化式を解けばよいかと...。


 S(H)さんより、答えを頂きました。(平成27年3月26日付け)

 a=(2n+1−((−i−3)/2)n−((i−3)/2)n)/7


(コメント) 実際に、DD++さんの解法の続きを計算してみました。

 x2+3x+4=0 の解 α=(−3+i)/2 、β=(−3−i)/2 として、

 bn+2−αbn+1=β(bn+1−αb) より、 bn+1−αb=βn-1(b2−αb1

 bn+2−βbn+1=α(bn+1−βb) より、 bn+1−βb=αn-1(b2−βb1

よって、 (α−β)b=αn-1(b2−βb1)−βn-1(b2−αb1) より、

  i・b=αn-1(b2−βb1)−βn-1(b2−αb1

       =αn-1+3i)/(2)−βn-1−3i)/(2

 ゆえに、 b=αn-1(−i+3)/14−βn-1(−i−3)/14

         =−(α+β)/7

より、 a=(2n+1−(α+β))/7 となる。


 GAI さんからのコメントです。(平成27年3月26日付け)

 ヒント有難うございます。鮮やかな手法があるものですね。

 これを進めていきますと、aは確かにnの式で書き下せる。ただし、式の中に複素数を含
むかなりややこしい式でした。しかし、これから生まれる各数は何故か平方数ばかりが発生
してくる。それが不思議でなりません。


 DD++さんからのコメントです。(平成27年3月26日付け)

 複素数(というか非有理数)こそ、この現象を起こしている本質なんですけどね。カラクリが
わかれば同じような数列は実は簡単に作れます。

 a1=1、a2=4、a3=4 、an+3=−2an+2+12an+1+216a

とか。a5 までしか検算してませんが、平方数ばかりのはず。


 GAI さんからのコメントです。(平成27年3月26日付け)

 確かにこれからは、平方数が出現しました。(→ 参考

なぜこんなことがたちどころに分かるんですか?なお、前漸化式から生じる数が、各自然数
nに対して、

 2=7x2+y2

を満たす自然数の組(x,y)でのxの値と関係していることと何か関係があるんでしょうか?

 n=3 → 23=7・12+12
 n=4 → 24=7・12+32
 n=5 → 25=7・12+52
   ・・・・・


 DD++さんからのコメントです。(平成27年3月26日付け)

 手品の種明かしは無粋と相場が決まってますが、これは数学なので普通に種明かし。誘
導にしてみましたので、学生に戻った気分でどうぞ。

 複素数 α=1+i について、

(1)  |α|2 を求めてください。

 自然数nに対し、αn=X[n]+Y[n]i で整数 X[n]、Y[n] を定義するとき、

(2) X[n]2+7Y[n]2 を求めてください。

(3) (2)の結果を、Y[n]2= に変形してください。

(4) 共役な複素数との和を考えることにより、X[n] を α、α*(*:共役)、n を用いて表して
  ください。

(5) (4)の結果を(3)に代入し、平方を展開、整理してください。

(6) 一般項が、pn、qn、rn の線形和で書ける任意の数列 A[n] は、

    A[n+3]-(p+q+r)A[n+2]+(pq+qr+rp)A[n+1]-pqrA[n]=0

  なる漸化式を満たすことを確認してください。

(7) A[n]=Y[n]2 とするとき、(5)から p、q、r に該当する数を考え、実際に漸化式を作ってく
  ださい。また A[3] までを求めてください。

(8) 適切な f(n) を用いて、a= {f(n)}2 A[n] と変換することにより、より簡素な平方数の出
  現する数列にしてください。

 これでおそらく GAI さんが最初に提示されたものになると思います。

(9) α=X[1]+Y[1]√Di を他の値にして同様の性質をもつ漸化式を自由に構成してください。

(私が作ったのは、1+i を使っています。また、普通の二次無理数でも手順をわずかに
変えればたぶんできるはずです)


 GAI さんからのコメントです。(平成27年3月27日付け)

 学生になって勉強してみました。

(1) 8

(2) 8n

(3) Y[n]2 = (8n-X[n]2)/7

(4) X[n] = (αn+(α*)2)/2

(5) Y[n]2 = (2・8n-(-6+2i)n-(-6-2i)n)/28

(6)(7)  p = 8、q = -6+2i、r = -6-2i より、p+q+r = -4、pq+qr+rp = -32、pqr = 512

  漸化式が A[n+3]+4A[n+2]-32A[n+1]-512A[n] = 0

  また、A[1]=Y[1]2=12=1、A[2]=Y[2]2=22=4、A[3]=Y[3]2=(-4)2=16

(8) f(n)=1/2n-1 即ち、A[n]=(2n-1)2・an と置き換えることで、

  (2n+2)2・an+3+4(2n+1)2・an+2-32(2n)2・an+1-512(2n-1)2・an=0

  (22n+4)・an+3+(22n+4)・an+2-(22n+5)・an+1-(22n+7)・an=0

  22n+4・(an+3+an+2-2an+1-23n)=0

   よって、 an+3+an+2-2an+1-23n=0

   また、a(1)=f(1)2・A[1]=(1/20)2*1=1*1=1
           a(2)=f(2)2・A[2]=(1/2)2*4=1/4*4=1
           a(3)=f(3)2・A[3]=(1/4)2*16=1/16*16=1

 以上で、ばっちり  a1=a2=a3=1 のとき、4項間の漸化式

   an+3=−an+2+2an+1+8a

が出現できました。逆に、このことから、上記の漸化式から産み出される数は平方数Y[n]2
に色づけしたf(n)2・Y[n]2(当然平方数)が出現してくるという訳なんですね。

 さらに、当然、以下のデオファントス方程式の解とも大いに関係していることになるのか!

 各自然数nに対して、 2n=7・x2+y2 を満たす自然数の組(x,y)

お陰様ですっきりしました。



   以下、工事中!