平方の和                                  戻る

 式 (22+32)(52+72)=u2+v2 を満たす 2個の整数 u、v を求めよ。







































(答) 素直に左辺の値を求めれば、962 である。普通の人は、ここで次にどう計算したら
   よいのか、途方に暮れてしまう。しかし、複素数の世界で、この式を考えると、鮮やか
   に、その解法が浮かび上がってくる。思わず誰でもが、「ヤッター!」と雄叫びをあげ
   ることだろう。

    式 (a2+b2)(c2+d2)=u2+v2 を満たす 6個の整数 a、b、c、d、u、v には、
   実は、次のような関係が成り立つ。

       u=ac−bd、v=ad+bc  または、  u=ac+bd、v=bc−ad

   実際に、(a+bi)(a−bi)(c+di)(c−di)=(u+vi)(u−vi)  (ただし、i は、虚数単位)
  において、項の組合せを考えると、

       u=(a+bi)(c+di)、v=(a−bi)(c−di)
   または、
       u=(a+bi)(c−di)、v=(a−bi)(c+di)

  これらを、展開して上記の関係を得る。

    問題は、a=2、b=3、c=5、d=7 の場合なので、
       u=2・5−3・7=−11、v=2・7+3・5=29
   または、
       u=2・5+3・7=31、v=3・5−2・7=1
  よって、
       (22+32)(52+72)=112+292
     または、
       (22+32)(52+72)=312+12
  となる。

(注意) 上記の解法について、広島工業大学の大川研究室より、次のようなご指摘をいた
     だきました。

 上のような解き方だと、 52+72= (62+12)(12+12) とも書けるので、組み合わせに
よっては別の平方和が得られるのではないか、また平方和が本当に上記の2通りだけなの
か....等の疑問が生じる。しかし、Gauss の整数環 Z [] の基本性質(素因数分解の一
意性・・・・高木貞治 著、初等整数論講義を参照)を使うと、順序、符号を除いて上記の 2通
りしかないことが分かる。

(追記) 上記の問題は、ディオファントスやピサのレオナルドが発見した事実を基にしている。
    これに関連して、オイラーは、

    4個の平方数の和で表された2つの数の積は、4個の平方数の和で表される

   ということを示している。すなわち、

      (a2+b2+c2+d2)(x2+y2+z2+w2
    =(ay+bx+cw+dz)2+(ax−by+cz−dq)2
                         (−az−bw+cx+dy)2+(aw−bz−cy+dx)2

  さらに、

    k個の平方数の和で表された2つの数の積は、k個の平方数の和で表される

  という性質が成り立つのは、

              k=2,4,8 の場合のみ

  であることが、アドルフ・グルヴィッツ(1859〜1919)によって証明された。

(参考文献:イー・ヤー・デップマン 著 藤川 誠 訳 算数の文化史(現代工学社))