極限と方程式の解2                          戻る

 当HPがいつもお世話になっているHN「よおすけ」さんからの出題です。
                                       (令和5年4月16日付け)

 次の(選択問題A)、(選択問題B)のうち、どちらか一題を選んで答えよ。

(選択問題A)

 p を正の整数とする。α、βは x に関する方程式 x2−2px−1=0 の2つの解で、|α|>1
であるとする。

(1) すべての正の整数nに対し、αn+βn は整数であり、さらに偶数であることを証明せよ。

(2) 極限 limn→∞((−α)n(sin(αnπ))) を求めよ。


(選択問題B)

 p を正の整数とする。x に関する方程式 x2−2px−1=0 の2つの解を |α|>1 なるα、
βとするとき、

 極限 limn→∞((−α)n(sin(αnπ))) を求めよ。


(出典) (選択問題A)は、2020年京都大学前期理系。(選択問題B)は、(選択問題A)の小
    問をなくした改題


































(答) (選択問題A)を解答すれば、(選択問題B)は明らかだろう。

(1) α、βは x に関する方程式 x2−2px−1=0 の2つの解なので、解と係数の関係から、

 α+β=2p 、αβ=−1

 数学的帰納法により、

命題:すべての正の整数nに対し、αn+βn は整数であり、さらに偶数である

が真であることを示す。

n=1のとき、 αn+βn=α+β=2p は整数であり、さらに偶数であるので、

 n=1のとき命題は成り立つ。

n=2のとき、 αn+βn=α2+β2=(α+β)2−2αβ=4p2+2=2(2p2+1) は

 整数であり、さらに偶数であるので、命題はn=2のとき成り立つ。

n=k、n=k+1(k≧1)のとき、命題が成り立つと仮定する。

 すなわち、 α+β 、αk+1+βk+1 は整数であり、さらに偶数であるとする。

このとき、

αk+2+βk+2

=(α+β)(αk+1+βk+1)−αβ(α+β)=2p(αk+1+βk+1)+(α+β

において、帰納法の仮定から、αk+2+βk+2 は整数であり、さらに偶数である。

 よって、n=k+2 のときも命題は成り立つ。

以上から、すべての正の整数nに対し、命題は成り立つ。

(2) (−α)n(sin(αnπ))=(−1)n・αn・sin((αn+βn)π−βnπ)

 (1)より、αn+βn は偶数なので、 sin((αn+βn)π−βnπ)=−sin(βnπ)

 さらに、αβ=−1 より、 α=−1/β すなわち、 αn=(−1)nn

以上から、 (−α)n(sin(αnπ))=−(sin(βnπ))/βn

 ここで、 βn=θ とおくと、 |β|=1/|α|<1 なので、n→∞ のとき、 θ→0

したがって、

 与式=limθ→0(−sin(θπ)/θ)=limθ→0(−π(sin(θπ))/(θπ))=−π  (終)


 DD++ さんからのコメントです。(令和5年4月17日付け)

 α^n + β^n について、直接は調べない方針で...。

 まず、0 以上の任意の整数 n について、

 cos(α^n*π) = cos(β^n*π) 、sin(α^n*π) = −sin(β^n*π)

が成り立つことを数学的帰納法で示します。

(i) n = 0 のとき、 cos(α^n*π) = cos(π) = 1 、cos(β^n*π) = cos(π) = 1

 sin(α^n*π) = sin(π) = 0 、−sin(β^n*π) = −sin(π) = 0

より、成立します。

(ii) n = 1 のとき、解と係数の関係より、 β = 2p - α なので、

 cos(α^n*π) = cos(απ) 、cos(β^n*π) = cos(βπ) = cos(2pπ-απ) = cos(απ)

 sin(α^n*π) = sin(απ) 、−sin(β^n*π) = −sin(βπ) = −sin(2pπ-απ) = sin(απ)

より、成立します。

(iii) n = k、k+1 の場合に等式が成立すると仮定して、n = k+2 の場合を考えます。

 cos(α^(k+1)*π) = cos(β^(k+1)*π) 、sin(α^(k+1)*π) = −sin(β^(k+1)*π)

が成り立つので、任意の実数θに対して、

 cos(θ+α^(k+1)*π)
= cos(θ) cos(α^(k+1)*π) - sin(θ) sin(α^(k+1)*π)
= cos(θ) cos(β^(k+1)*π) + sin(θ) sin(β^(k+1)*π)
= cos(θ-β^(k+1)*π)

が成り立ちます。よって、

cos(2p*α^(k+1)*π)
= cos((2p-1)*α^(k+1)*π-β^(k+1)*π) (← θ=(2p-1)*α^(k+1)*π)
= cos((2p-2)*α^(k+1)*π-2*β^(k+1)*π) (← θ=(2p-2)*α^(k+1)*π-β^(k+1)*π)
= cos((2p-3)*α^(k+1)*π-3*β^(k+1)*π) (← θ=(2p-2)*α^(k+1)*π-2*β^(k+1)*π)
= ……
= cos(α^(k+1)*π-(2p-1)*β^(k+1)*π)
= cos(-2p*β^(k+1)*π)
= cos(2p*β^(k+1)*π)

同様に、 sin(2p*α^(k+1)*π) = −sin(2p*β^(k+1)*π) も示されます。

これらと、α^2 = 2pα + 1, β^2 = 2pβ + 1 を用いると

cos(α^(k+2)*π)
= cos(α^k*(2pα+1)*π)
= cos(2p*α^(k+1)*π+α^k*π)
= cos(2p*α^(k+1)*π) cos(α^k*π) - sin(2p*α^(k+1)*π) sin(α^k*π)
= cos(2p*β^(k+1)*π) cos(β^k*π) - sin(2p*β^(k+1)*π) sin(β^k*π)
= cos(2p*β^(k+1)*π+β^k*π)
= cos(β^k*(2pα+1)*π)
= cos(β^(k+2)*π)

 sin(α^(k+2)*π) = −sin(β^(k+2)*π) も同様に示されます。

よって、n = k、k+1 の場合に等式が成立すると仮定すると、n = k+2 の場合も成立します。

以上、(i)、(ii)、(iii) より、0 以上の任意の整数 n について、

 cos(α^n*π) = cos(β^n*π) 、sin(α^n*π) = −sin(β^n*π)

が成り立つことが示されました。また、解と係数の関係から αβ = -1 で、|α| > 1 であるこ

とから、0<|β|<1 なので、

limn→∞ (−α)^n*sin(α^n*π)
= limn→∞ −(−α)^n*sin(β^n*π)
= limn→∞ −(−α)^n*β^n*π*sin(β^n*π)/(β^n*π)
= limn→∞ −π*sin(β^n*π)/(β^n*π)
= −π*1
= −π


(コメント) DD++ さんの解答を見て、出題者が「αn+βn は整数であり、さらに偶数である」
      ことをまず示させるという意図、善意が実感できました。DD++ さんに感謝します。



  以下、工事中!