無限数列
当HPがいつもお世話になっているHN「at」さんからの出題です。
(平成24年7月26日付け)
私が印象に残っている問題をひとつ。
正の実数列 {a[n]} (n=1,2,…) で、limn→∞ a[n]=0 を満たし、さらに、
Σn=1〜∞ (1/n)1+a[n] は収束する
という条件を満たすようなものを1つ挙げよ。
(答) a[n] が正の定数ならば、 Σn=1〜∞ (1/n)1+a[n] は収束するのだが、limn→∞ a[n]=0 と
いう条件は厳しいですね!
空舟さんからのコメントです。(平成24年7月27日付け)
初めて見ました。考えてみました。a[n]=1/n ぐらいだとだめみたいです。a[n]は相当ゆっ
くり0に近づくはずです...。(→参考)
考察の都合上、今回は、n=2 から和をとることにしました。Σn=2〜∞ 1/n1+a[n]=P とおく。
いろいろ考えた結果、a[1]=1として、a[n]を単調減少として、a[n]を連続的に拡張した関数
を a(x) として、増加するほうが考えやすいと思って。1/a(x)=b(x)とおいて、また、b(x)の逆関
数をc(x)としました。[c(1)=1, a(c(k))=1/k]
P≦∫1∞ (1/x)1+a(x) dx≦∫c(1)c(2) (1/x)1+a(c(2) dx +∫c(2)c(3) (1/x)1+a(c(3) dx
+∫c(3)c(4) (1/x)1+a(c(4) dx + ・・・
= 1/2/c(1)1/2 - 1/2/c(2)1/2+1/3/c(2)1/3 - 1/3/c(3)1/3+1/4/c(3)1/4 - 1/4/c(4)1/4+・・・
≦ Σ1/(x+1)/c(x)1/(x+1) [x=1、2、3、...] (マイナス部分を捨てた)
c(1)=1に注意して、c(x)=ex-1 程度だと、これは各項=1/x/e(x-1)/(x+1) で収束しなさそう。
c(x)=eex-1-1 とすれば、各項=1/x/e(ex-1-1)/(x+1)
グラフを書いてみると、 (ex-1-1)/(x+1)≧(x+1)/2 らしいので、
各項≦1/(x+1)/e(x+1)/2={(1/√e)x+1}/(x+1) の和は収束して、右辺の和の収束値は、
log{1/(1-1/√e)}-(1/√e)=0.3262...
従って、このc(x)はうまくいくことがわかって、P<0.3262...
このc(x)に対応するa[n]は、 1/{log(log(n)+1)+1}
コンピュータによると、 Σn=2〜∞ (1/n)1+1/{log(log(n)+1)+1} はだいたい 0.2618 ぐらいみた
いでした。
(ところでc(x)=ex-1程度 [a[n]〜1/log(n)] の時には、収束することは示せないですが、発散
することもまた簡単には示すことができなさそうで考えてみましたが、今回はあきらめてしま
いました...)
追記:よく考えたら、 (1/n)1+1/log(n) =1/nlog(en)/logn =1/en なので
Σn=2〜∞ (1/n)1+log(n) =Σ1/en
は発散とわかりました。
at さんからのコメントです。(平成24年7月27日付け)
空舟さん、この問題を考えてくださって、ありがとうございます。
「コンピュータによると、だいたい0.2618ぐらい」というのはちょっと変ではないでしょうか?
a[n]=1/{log(log(n)+1)+1}のとき、a[n]≦1ですから、1+a[n]≦2
よって、(1/n)1+a[n] ≧ (1/n)2 より、
Σn=2〜∞ (1/n)1+a[n]≧Σn=2〜4 (1/n)1+a[n]≧Σn=2〜4 (1/n)2
=(1/4)+(1/9)+(1/16)=61/144=0.4236...
空舟さんからのコメントです。(平成24年7月27日付け)
あれ、本当ですね。再度計算してみたら再現できませんでした。再度計算してみると、
n=2から1000だと1.844... で、n=2から2000だと1.912... でした。
ということは、不等式の評価もどこか間違っているはずで見直すと...
c(x)=eex-1-1 とすれば、各項=1/x/e(ex-1-1)/(x+1)
グラフを書いてみると、 (ex-1-1)/(x+1)≧(x+1)/2 らしいので、
各項≦1/(x+1)/e(x+1)/2={(1/√e)x+1}/(x+1) の和は収束して、右辺の和の収束値は、
log{1/(1-1/√e)}-(1/√e)=0.3262...
従って、このc(x)はうまくいくことがわかって、P<0.3262...
ここの所の2行目の右辺の符号が間違いで正しくは、
グラフを書いてみると、 (ex-1-1)/(x+1)≧(x-1)/2 らしいので、
結論は、 P<2.4104... が判明 (さっきのe倍) です。
at さんからのコメントです。(平成24年7月28日付け)
P≦∫1∞ (1/x1+a(x)) dx≦∫c(1)c(2) (1/x1+a(c(2)) dx +∫c(2)c(3) (1/x1+a(c(3)) dx
+∫c(3)c(4) (1/x1+a(c(4)) dx + ・・・
= 1/2/c(1)1/2 - 1/2/c(2)1/2+1/3/c(2)1/3 - 1/3/c(3)1/3+1/4/c(3)1/4 - 1/4/c(4)1/4+・・・
≦ Σ1/(x+1)/c(x)1/(x+1) [x=1、2、3、...]
この不等式での評価の部分についての疑問なのですが、空舟さんは、
∫c(1)c(2) (1/x)1+a(c(2)) dx = 1/2/c(1)1/2 - 1/2/c(2)1/2
と計算しておられるようですね。しかし、この計算は正しくは、
∫c(1)c(2) (1/x)1+a(c(2)) dx = 2/c(1)1/2 - 2/c(2)1/2
ではないでしょうか?一般に、正整数kに対して、
∫c(k)c(k+1) (1/x)1+a(c(k+1)) dx
=∫c(k)c(k+1) (1/x)1+1/(k+1) dx
=∫c(k)c(k+1) (x)-1-1/(k+1) dx
=[-(k+1)x-1/(k+1)]x=c(k+1) - [-(k+1)x-1/(k+1)]x=c(k)
=(k+1)/c(1)1/(k+1) - (k+1)/c(2)1/(k+1)
だと思います。
空舟さんからのコメントです。(平成24年7月28日付け)
本当ですね。該当箇所を改めて書き直しました。値の評価はずいぶん大きくなりました。
P≦∫1∞ (1/x)1+a(x) dx≦∫c(1)c(2) (1/x)1+a(c(2) dx +∫c(2)c(3) (1/x)1+a(c(3) dx
+∫c(3)c(4) (1/x)1+a(c(4) dx + ・・・
= 2/c(1)1/2 - 2/c(2)1/2+3/c(2)1/3 - 3/c(3)1/3+4/c(3)1/4 - 4/c(4)1/4+・・・
≦ Σ(x+1)/c(x)1/(x+1) [x=1、2、3、...] (マイナス部分を捨てた)
c(x)=eex-1-1 とすれば、各項=1/x/e(ex-1-1)/(x+1)
グラフを書いてみると、 (ex-1-1)/(x+1)≧(x-1)/2 らしいので、
各項≦(x+1)/e(x-1)/2={(√e)(x+1)}/(1/√e)x の和は収束して、右辺の和の収束値は、
l(√e){1/(1-1/√e)2-1}≒9.000... らしいです。
従って、このc(x)はうまくいくことがわかって、P<9.000...
もっと評価しやすい、うまく行くc(x)がありました。c(x)=ex2-1 を採用すれば、(マイナス部分を
捨てた)の所は、
Σ(x+1)/c(x)1/(x+1)=Σ(x+1)/ex-1=e{1/(1-1/e)2-1}=4.0846... となりました。対応するa(x)
は、1/(1+√logx) で、Σ(1/n)1+1/(1+√log(n))<4.0846... ということになります。
(n=2から1000だと、2.15ぐらい、2000までだと、2.25ぐらいでした。)
そんなふうに当てずっぽうに強そうな関数を使うのではなく、どこが境界なのか気になりま
す...
c(x)1/(x+1)=x2 だったら、Σ(1/x + 1/x2) となって、この和は発散します。そのとき、
c(x)=x2(x+1)=e2(x+1)logx で、ということは、c(x)=eA(x+1)logx (A>2) ・・・(※) だったら収
束することが分かります。
逆の評価を考えてみると、
Σn=1〜∞ (1/n)1+a[n]≧∫1∞ (1/x)1+a(x) dx
≧∫c(1)c(2) (1/x)1+a(c(1) dx+∫c(2)c(3) (1/x)1+a(c(2) dx+∫c(3)c(4) (1/x)1+a(c(3) dx+...
= 1/c(1)1/2 - 1/c(2)1/2+2/c(2)1/3 - 2/c(3)1/3+3/c(3)1/4 - 3/c(4)1/4+...
≧ 1/c(1)1/1 - 1/c(2)1/2+2/c(2)1/2 - 2/c(3)1/3+3/c(3)1/3 - 3/c(4)1/4+...
=Σ1/c(x)1/x [x=1、2、3、...] (斜めで通分した。)
c(x)1/x=x だったら、これは発散します。このときの c(x)=xx=exlogx ・・・(**)
よって、級数が収束するようなc(x)と発散する境界は、(*)と(**)の間にあることがわかり
ました。(そのあたりのc(x)だと逆関数が書けないけれど...)
at さんからのコメントです。(平成24年7月29日付け)
これで、収束性が完全に証明されましたね。いやあ、それにしても空舟さんの解法は見事
ですねえ。大変良い勉強になりました。別解をひとつ挙げさせてください。
a[1]=1、a[2]=1、a[n]=2log(log(n))/log(n) (n≧3).
このように定義された数列 {a[n]} は、問題文の条件を全て満たします。これは無限級数
Σn=2〜∞ (1/n)(1/log(n))2 が収束することを利用したものです。
以下、工事中