道路パズル(2)
当HPがいつもお世話になっているHN「GAI」さんからの出題です。(平成21年9月15日)
さいころが9個(3×3)入る箱があり、中央にはさいころがなく、周りに8個のさいころが
1
の目を下にして配置されている。
さいころを空き地に転がすことで、全てのさいころの目が 1 が出現して終了するようにし
たい。そのためには何手必要だろうか?
(一見不可能に感じられますが、実は可能な手順が構成できます。1ヶ月は楽しめます。貴
方の挑戦を待ちます。)
(答) この1ヶ月は楽しめるかも...という問題に、らすかるさんは果敢に挑戦され、出題
後、わずか3時間弱で解かれたようだ。(平成21年9月15日)...スゴイですね!
らすかるさんからのコメント: 1ヶ月は楽しめませんでしたが(笑)、なかなか面白い問
題でした。私が見つけた手順は、150手ですが、まず間違
いなく、最小手数ではないと思います。でも、とても簡単な
手順で、覚えやすいです。最小手数は全然わかりません
が、とても20手以下とは思えませんのでコンピュータで全
数探索を行って調べるのも無理ですね。
これに対して、出題者のGAIさんによれば、最少手数は36手ではないかとのこと。
(平成21年10月3日付け)
平成21年10月4日付けで、らすかるさんがプログラムを作って調べたところ、36手が最
少手数で、解は、次のようになるとのことである。(ただし、対称形はすべて削除)
中心空き他全部裏→中心空き他全部表 : 36手、1通り
↓←↑→↓→↑←↑→↓←↑←↓↓→↑→↓←↑←↓→↑→↓←←↑→→↑←↓
また、上記の解は「終了時に真ん中のマスが空き」という条件で調べているが、最終形を
「中心のマスが空き」に限定しない場合は次の34手が最短とのこと。
(ただし、対称形はすべて削除)
中心空き他全部裏→空き位置問わず全部表 : 34手、3通り
↓←↑↑→↓←↓→↑←↓→↑→↑←←↓→↓→↑←↑←↓↓→↑←↑→→
↓←↑↑→↓←↓→↑→↑←↓←↓→→↑←↑←↓→↑←↓↓→↑←↑→→
↓←↑↑→↓→↑←↓←↓→↑←↓→→↑←↑←↓→↑←↓↓→↑←↑→→
らすかるさんによれば、個人的には、最終形は「中心のマスが空き」に限定した方がきれ
いだと思うとのことである。(平成21年10月4日付け)
また、GAIさんより、この問題の別バージョンが提示された。(平成21年10月4日付け)
さいころの「1」の目をすべて手前側に向けてからスタートして、最後には上面がすべて
「1」の目に揃えるには何手必要か?
これに対しても、らすかるさんは直ぐ解決された。(平成21年10月4日付け)
新しいプログラムを作り、最短手順を全通り調べたとのこと。
(ただし、対称形はすべて削除)
中心空き他全部手前向き→中心空き他全部表 : 36手、10通り
←↑→→↓←←↓→↑↑→↓↓←↑→↓←↑←↓→↑←↑→↓→↑←↓→↓←↑
←↑→↓←↓→↑→↓←↑←↓→↑↑←↓→→↓←←↑↑→↓←↑→↓→↑←↓
←↓→↑←↑→→↓↓←↑→↑←←↓↓→↑←↑→↓←↓→→↑↑←↓←↑→↓
←↓→↑←↑→↓←↓→↑←↓→↑→↓←↑→↑←↓←↑→↓←↑→↓←↑→↓
←↓→↑←↑→↓←↓→↑←↓→↑→↓←↑→↑←↓←↑→↓→↑←↓→↑←↓
←↓→↑←↓→↑←↑→↓→↑←←↓→→↓←←↑→→↑←↓←↑→↓→↑←↓
←↓→↑←↓→↑←↑→↓→↑←←↓→→↓←↑→↑←↓↓←↑↑→↓→↑←↓
←↓→↑←↓→↑←↑→↓→↑←←↓→→↑←↓→↓←←↑→→↑←↓←↑→↓
←↓→↑←↓→↑←↑→↓→↑←←↓→→↑←↓→↓←↑→↑←↓↓←↑↑→↓
↑←↓→↑←↓↓→↑←↓→↑←↓→↑→↓←↑→↓←↑←↓→→↑↑←←↓→
中心空き他全部前向き→空き位置問わず全部表 : 27手、1通り
←↓→↑←↑→↓←↓→↑←↓→↑→↓←↑→↑←↓←↑→
(注意) 「対称形はすべて削除」において、左右対称、上下対称、回転対称の他に、「全部
裏」を「全部表」にする場合は、“前後対称”(手順を逆順にして同じになるもの)も除
いている。
最終形の空きマス位置を中心に限定すると両方とも最短36手で、空きマス位置を限定し
ない場合は全部前向きの方が少ない手数でできる。
GAIさんは、「最初さいころを同じ向きにセットしておけば、36手ですべて上面がどんな数
字でも揃えることが可能なんですね。平面ルービックキューブと命名しましょう。」と提案され
た。(平成21年10月4日付け)
らすかるさんからの続報です。(平成21年10月11日付け)
最初の状態が、 「中心空き他全部裏」 、 「中心空き他全部手前向き」 のどちら
であっても、「中心空き他全部表」(以下、この状態を「基本形」と呼ぶことにする。)までの
最短手数は、36手であった。こういう結果になると、
「もしかして、どんなパターンでも36手以内?」
なんて考えが浮かんで調べたくなり、しばらくこの問題を研究していました。
そこで、9×9のマス目のうち空きの可能性が9通りで、そのうちの1通りに対して、8個の
さいころの目の出方が68通りあるので、全パターン数は、9×68=15116544通りとなる。
このうち、36手以内で基本形まで到達できるパターン数を調べたところ、14029322通り
であった。(即ち、全体の92.8%は36手以内で基本形に到達できる!)
こうなると、今度は、
「どんなパターンでも、n 手以内で基本形に到達できる」
を満たす n の最小値を調べたくなって、その結果は、49手であった。
(49手の全パターンを調べるのに、50時間かかりました。)
n 手以内で基本形に到達できるパターンの数は、以下の通り。
手数 | パターン数 | 手数 | パターン数 | 手数 | パターン数 | 手数 | パターン数 | 手数 | パターン数 |
0 | 1 | 10 | 1033 | 20 | 164175 | 30 | 7194780 | 40 | 15018059 |
1 | 5 | 11 | 1665 | 21 | 254759 | 31 | 8537092 | 41 | 15064503 |
2 | 13 | 12 | 2881 | 22 | 421317 | 32 | 10155559 | 42 | 15096825 |
3 | 21 | 13 | 4649 | 23 | 638929 | 33 | 11300883 | 43 | 15107481 |
4 | 37 | 14 | 8113 | 24 | 1022533 | 34 | 12538055 | 44 | 15113862 |
5 | 69 | 15 | 13073 | 25 | 1488625 | 35 | 13294367 | 45 | 15115426 |
6 | 133 | 16 | 22555 | 26 | 2255836 | 36 | 14029322 | 46 | 15116284 |
7 | 213 | 17 | 35851 | 27 | 3094560 | 37 | 14415486 | 47 | 15116488 |
8 | 361 | 18 | 61335 | 28 | 4354768 | 38 | 14748581 | 48 | 15116532 |
9 | 585 | 19 | 97079 | 29 | 5563540 | 39 | 14899521 | 49 | 15116544 |
この結果を見ると、48手以内で基本形に到達できないパターン、つまり基本形から最も
遠いパターンが12個あるわけで、それがどんな形か知りたくなる。
(これの調査にまた25時間かかりました。)
これは、対称形を同一視すると以下の2通りであった。(矢印は表の向き)
|
|
||||||||||||||||||||||
この状態から回転と反転で 8個できる。 |
この状態から回転で4個できる。 |
これら2個のパターンは、基本形にするのに最短で49手かかる。
(参考) 全パターン数 9×68=15116544通りで対称形を同一視すると、1892979通
りになる。これはプログラムと手計算で確認しましたが、手計算は結構面倒でした。
また、目のかわりに6面に色を塗り、前後左右の端や裏も見えるようにして各面の
色を揃えるパズルにするとかなり難しくなって楽しめそうですが、“転がす”ように動
く構造は難しいですね。
これに対して、GAI さんは、100円ショップで12個入りの一辺3cmの立方体の木片を買
ってきて、半分赤色、半分青色に着色し、転がす台座も手作りしてひたすらこれで転がして
この問題を考えられたそうである。
2つの初期条件から基本形ができたので大満足していましたが、この奥に更にこのよう
な背景が隠されていたのに驚いています。このようにさらに突っ込んで解析されているらす
かる氏の発想の柔軟さに敬服しますと、GAI さん。(私も同感です!)
また、GAI さんは続けて...
第3者に勝手にさいころをセットさせ、たちどころに上面に同じ目を揃えることができたら
ちょっとした芸になりますね。正に、これはルービックキューブのさいころ版ですね。しかし、
これが出来るようになるには、いろんなパターンからの手順を覚えておかなければならず
ルービックキューブよりも難しいかも。
と仰っている。
また、らすかるさんはさらにプログラムを改良されて、高速化をはかり、
「指定の初期状態から基本形に到達する最短手数と手順例を求める」
新しいプログラムでは、(らすかるさんのPCで)最大7秒ほどで解が求まったそうである。
また、それを少し手直しして上記のパターン数の表を出力するプログラムも作り、7秒で同
じ表が得られたとのこと。
(上記の表は作るのに100時間かかっているので、5万倍速くなったそうである。)
(コメント) 100時間という数字に圧倒されました!この話題に触れる機会を頂いた
GAI さ
んとらすかるさんに感謝します。