確率3                                     戻る

 当HPがいつもお世話になっているHN「よおすけ」さんからの出題です。
                                      (平成27年11月22日付け)

 z[1]〜z[6]は6乗して1になる相異なる数とします。z[1]だけが書かれた球、z[2]だけが書か
れた球、z[3]だけが書かれた球、z[4]だけが書かれた球、z[5]だけが書かれた球、z[6]だけ
が書かれた球が1個ずつ同じ袋に入っています。

 中を見ないで1個ずつ、計6回取り出したとき、出た6数の和が0となる確率を求めなさい。
ただし、一度取り出した球はその度に元に戻すものとします。







































(答え) DD++さんが考察されました。(平成27年11月22日付け)

 3回の時点で、和の取りうる値は、37通りあり、

  確率1/18である値が1種
  確率5/72である値が6種
  確率1/36である値が12種
  確率1/72である値が12種
  確率1/216である値が6種

 よって、求める確率は、

  (1/18)2+(5/72)2・6+(1/36)2・12+(1/72)2・12+(1/216)2・6 = 85/1944

# 2014年センター試験の問題を思い出しますね。


 at さんからのコメントです。(平成27年11月23日付け)

 この袋の中から復元抽出で球を n 回取り出すとき、球に書かれた数の合計が 0 になる確
率を P(n) とすると、P(n)は次式で計算可能。(→ 参考:「A002898」)

  P(n)=(1/6^n)*Σ[k=0,n]Σ[r=0,k]((-2)^(n-k))*comb(n,k)*(comb(k,r))^3.

これを使って計算すると、P(6)=85/1944.

P(n)
=(1/6^n)*([x^0*y^0](x^2+x*y+x^(-1)*y+x^(-2)+x^(-1)*y^(-1)+x*y^(-1))^n)
=(1/6^n)*([x^0*y^0]((x+y)*(x+x^(-1))*(1+x^(-1)*y^(-1))-2)^n)
=(1/6^n)*([x^0*y^0](Σ[k=0,n]comb(n,k)*((x+y)*(x+x^(-1))*(1+x^(-1)*y^(-1)))^k*(-2)^(n-k)))
=(1/6^n)*Σ[k=0,n]Σ[r=0,k]((-2)^(n-k))*comb(n,k)*(comb(k,r))^3


(コメント) z[1]〜z[6]は1の6乗根なので、

     A+a=B+c=C+b=A+C+c=a+B+b=0

 となる対が存在する。A、a、B、b、C、c から和が0となるように6個選んで並べる場合の
 数を求めればよい。

 起こりえるすべての場合の数は、 66=46656(通り)

A、a、A、a、A、a の場合の順列の数は、 6!/(3!3!)=20(通り)
A、a、A、a、B、c の場合の順列の数は、 6!/(2!2!)=180(通り)
A、a、A、a、C、b の場合の順列の数は、 6!/(2!2!)=180(通り)
A、a、B、c、B、c の場合の順列の数は、 6!/(2!2!)=180(通り)
A、a、B、c、C、b の場合の順列の数は、 6!=720(通り)
A、a、C、b、C、b の場合の順列の数は、 6!/(2!2!)=180(通り)
B、c、B、c、B、c の場合の順列の数は、 6!/(3!3!)=20(通り)
B、c、B、c、C、b の場合の順列の数は、 6!/(2!2!)=180(通り)
B、c、C、b、C、b の場合の順列の数は、 6!/(2!2!)=180(通り)
C、b、C、b、C、b の場合の順列の数は、 6!/(3!3!)=20(通り)
A、C、c、A、C、c の場合の順列の数は、 6!/(2!2!2!)=90(通り)
a、B、b、a、B、b の場合の順列の数は、 6!/(2!2!2!)=90(通り)

 以上から、 20×3+180×6+720+90×2=2040(通り)

 よって、求める確率は、 2040/46656=85/1944

# DD++さんやatさんの結果と同じで安心しました!


 GAI さんからのコメントです。(平成27年11月26日付け)

 最初の (x^2+x*y+x^(-1)*y+x^(-2)+x^(-1)*y^(-1)+x*y^(-1))^n の部分の式は、どんな所
から思い付くのですか?また、この式の最後の詰めで、((x+y)*(x+x^(-1))*(1+x^(-1)*y^(-1)))^k
から(comb(k,r))^3が出現するのは何故ですか?
(定数項の部分を出さないといけないことは何となく分かるんですが・・・)

 最初、DD++さんの解法を辿っていたら、まさに37種もの値が出現してきて、整理しながら
進んでいたら、優に2〜3時間はかかってしまいました。atさんの母関数的手法(Frobenius
の硬貨交換問題問題の時も同様)が使いこなせれば飛躍的に計算が楽になります。


 DD++さんからのコメントです。(平成27年11月26日付け)

 複素数平面上に正三角形状の格子を思い浮かべれば、37種といいつつ実は7種計算する
だけで済みますよ。


 GAI さんからのコメントです。(平成27年11月26日付け)

 この確率はランダムウォークで原点から複素平面の単位円上にある6点

  z=cos(2π/6)+i*sin(2π/6) 、z^2 、z^3 、z^4 、z^5 、z^6

の任意の方向を選んで6歩あゆんだ時、原点に戻っている確率に同じという訳ですね。

 従って、歩む方向をいろいろ変化させ、また歩む歩数もいろいろ変えることでいろいろな問
題が出てきますね。サイトを頼りに調べてみたら、pが素数のとき、進む方向を

  z=cos(2π/p)+i*sin(2π/p) 、z^2 、z^3 、z^4 、・・・ 、z^p

のいずれからでも選べ、N歩の後再び原点に戻っている確率P(N,p)が

  P(N,p)=N!/(N/p)!^p/p^N (if p|N  、その他の時は0)

 ちなみに、 P(2,2)=2!/1!^2/2^2=1/2 、P(4,2)=4!/2!^2/2^4=3/8 、P(6,2)=6!/3!^2/2^6=5/16
  P(8,2)=8!/4!^2/2^8=35/128 、P(10,2)=10!/5!^2/2^10=63/256
  P(3,3)=3!/1!^3/3^3=2/9 、P(6,3)=6!/2!^3/3^6=10/81 、P(9,3)=9!/3!^3/3^9=560/6561
  P(12,3)=12!/4!^3/3^12=3850/59049 、P(15,3)=15!/5!^3/3^15=28028/531441
  P(5,5)=5!/1!^5/5^5=24/625 、P(10,5)=10!/2!^5/5^10=4536/390625
  P(15,5)=15!/3!^5/5^15=1345344/244140625
  P(7,7)=7!/1!^7/7^7=720/117649 、P(14,7)=14!/2!^7/7^14=13899600/13841287201

 なお、進める方向が、このx^6=1の場合は2歩以上は戻れて、

P(2,6)=6/6^2=1/6=0.166667
P(3,6)=12/6^3=1/18=0.0555556
P(4,6)=90/6^4=5/72=0.0694444
P(5,6)=360/6^5=5/108=0.0462963
P(6,6)=2040/6^6=85/1944=0.0437243
P(7,6)=10080/6^7=35/972=0.0360082
P(8,6)=54810/6^8=1015/31104=0.0326325
P(9,6)=290640/6^9=6055/209952=0.0288399
P(10,6)=1588356/6^10=14707/559872=0.0262685 (何と3%もいかない。酔っぱらったら帰れない!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

となりました。


 at さんからのコメントです。(平成27年11月26日付け)

 私も複素平面上で考えました。まず、複素平面の単位円上にある6点

  z=cos(2π/6)+i*sin(2π/6) 、z^2 、z^3 、z^4 、z^5 、z^6

を考えました。

 次に、この複素平面を実軸方向に2倍、虚軸方向に(2/)倍したもの
を考えました。このように考えると、

  z 、z^2 、z^3 、z^4 、z^5 、z^6

はそれぞれ、 1+i 、-1+i 、-2 、-1-i 、1-i 、2

に対応します。そうして、これら6つの複素数を次のように、2変数 x、y の単項式に対応さ
せました。

1+i → x*y 、-1+i → x^(-1)*y 、-2 → x^(-2) 、-1-i →  x^(-1)*y^(-1)
1-i → x*y^(-1) 、2  → x^2

 このように考えれば、6個の複素数 z、z^2、z^3、z^4、z^5、z^6 からn個を復元抽出で取り
出すとき、それらの和が0となるような場合の数は、

 (x^2+x*y+x^(-1)*y+x^(-2)+x^(-1)*y^(-1)+x*y^(-1))^n

を展開したときのx^0*y^0 という項の係数となります。

 さて、

 [x^0*y^0](Σ[k=0,n]comb(n,k)*((x+y)*(x+x^(-1))*(1+x^(-1)*y^(-1)))^k*(-2)^(n-k))

という式が、 Σ[k=0,n]Σ[r=0,k]((-2)^(n-k))*comb(n,k)*(comb(k,r))^3 と変形できる過程を
以下に示します。

[x^0*y^0](Σ[k=0,n]comb(n,k)*((x+y)*(x+x^(-1))*(1+x^(-1)*y^(-1)))^k*(-2)^(n-k))
=[x^0*y^0](Σ[k=0,n]comb(n,k)*(x+y)^k*(x+x^(-1))^k*(1+x^(-1)*y^(-1))^k*(-2)^(n-k))
=[x^0*y^0](Σ[k=0,n]comb(n,k)*(Σ[p=0,k]comb(k,p)*x^p*y^(k-p))
 *(Σ[q=0,k]comb(k,q)*x^(-k+2*q))*(Σ[r=0,k]comb(k,r)*x^(-r)*y^(-r))*(-2)^(n-k))
=[x^0*y^0](Σ[k=0,n]comb(n,k)
 *(Σ[p,q,r]comb(k,p)*comb(k,q)*comb(k,r)*x^(p-k+2*q-r)*y^(k-p-r))*(-2)^(n-k))

(ここで、p-k+2*q-r=0 かつ k-p-r=0  の場合を考えればよい。この2式から q=r かつ p=k-r
となる)

=Σ[k=0,n]comb(n,k)*comb(k,k-r)*comb(k,r)*comb(k,r)*(-2)^(n-k)
=Σ[k=0,n]comb(n,k)*(comb(k,r))^3*(-2)^(n-k)


 GAI さんからのコメントです。(平成27年11月29日付け)

 at さんの素晴らしい発想に感激しました。これを真似て、単位円上の(1,0)を一つの頂点
とする正三角形で作ると、x軸方向を2倍、y軸方向を2/にして、(x^2+y/x+1/(xy))^n の展
開式の定数項から、{n=3->6,n=6->90,n=9->1680,n=12->34650,・・・}

 また、単位円上の(1,0)を一つの頂点とする正四角形で作ると、(x+y+1/x+1/y)^n の展開
式の定数項から、{n=2->4,n=4->36,n=6->400,n=8->4900,・・・}で上手く処理ができました。

 ところが、単位円上の(1,0)を一つの頂点とする正八角形で作ると、x、y軸方向の引き延
ばしをどう工夫しても、上手く対応する関係が見つけられませんでした。

 この場合は、どの様な母関数で処理したらいいのでしょうか?
n=2->8,n=4->168,n=6->5120,n=8->190120,・・・ となるはずなんですが・・・。

 できたら正九角形での母関数も教えて下さい。


 at さんからのコメントです。(平成27年11月29日付け)

 無理矢理に母関数で処理をするとすれば、たとえば、次のようにすればいいです。

 求める場合の数を a(n) とすると、

a(n)=(n!)*[x^n](Σ[k=0,∞](x^(2k))/(k!)^2)^4
  =(n!)*[x^n](1+x^2+x^4/(2!)^2+x^6/(3!)^2+x^8/(4!)^2+ … )^4.

 いくつか計算してみると、

a(8)=190120、a(10)=7939008、a(50)=453687526340726999466185734291092880939008、

a(100)=163481443380087416632279448361484485900921794816941809380834609069208470347747273095168

 正九角形での母関数については、求める場合の数を b(n) とすると

b(n)=(n!)*[x^n](Σ[k=0,∞](x^(3k))/(k!)^3)^3=(n!)*[x^n](1+x^3+x^6/(2!)^3+x^9/(3!)^3+ … )^3

となると思います。