カステラの分配                             戻る

 いま、9本のカステラがある。これを、同じ量、同じ大きさで、10人に切り分けたい。包丁を
使う回数を、できるだけ減らすには、どのように切り分けたらよいだろうか?ただし、いくつか
のカステラをまとめて、一気に切るということはしないものとする。

             





















(答) 次のように切り分ければよい。
      

   普通に考えたら、各カステラを10等分し、それを分ければよいが、それでは包丁を使
  う回数が、81回で、あまりにも多すぎる。上のように切れば、21回で済む。

   この切り方には、数学の話がからむ。
          
  という分解を用いて、上のカステラは切られた。
  (両辺を10倍すれば、2等分が5本、5等分が4本であることが直ぐ分かる。)
  この分解の仕方は、一通りではない。例えば、次のようにも分解できる。
          
  包丁の使う回数を意識すれば、最初の分解が最適だと分かる。

   この問題は、ロンドンの大英博物館に保存されている「リンド・パピルス」にのっている
  問題である。「リンド・パピルス」は、現存する世界最古の数学手稿で、紀元前17世紀
  頃ヒクソス王朝の時代にアーメスと呼ばれた書写士が、その頃まで伝わっていた「数学」
  を分類して記述したものである。1877年アイゼンロールにより、訳出された。
   「リンド・パピルス」では、後者の分解を用いた解を示している。このように分数を分解
  して、遺産相続とか財産の分配に利用されたらしいが、実のところ、このような計算方
  法が、どのような役割を果たしていたのかは、よく分かっていないらしい。ただ、分母が
  101 までの奇数で、分子が 2 の分数を、分子が 1 の分数の和で示した表があるの
  で、古代エジプトにおいては、必要性が十分あったのだろう。 

     という分解は、エジプトにおいては、  とかかれた。
  エジプト人は、整数の逆数として、単位分数(分子が 1 の分数)を考えたようだ。

  ところで、話は元に戻って、カステラを等分する方法を確認しておこう。

 包装紙か何かを、等分に折り曲げて折り目をつけて、それを下図のようにカステラにそえ
て切ればよい。(これには、平行線の公理が用いられる。)

             

(参考文献:R.マンキェヴィッチ 著 植松靖夫 訳 世界の数学の歴史(東洋書林)
       小堀 憲 著 物語数学史(新潮社)
       武隈良一 著 数学史(培風館))