平方数の行列式
当HPがいつもお世話になっているHN「GAI」さんからの出題です。
(平成24年11月21日付け)
平方数に対する普遍性を行列式に当てはめて、a、b、c、d、e、f、g、h、i≠0、±1で
|a b c| |d e f| |g h i| |
|a2 b2 c2| |d2 e2 f2| |g2 h2 i2| |
のいずれの行列式も1を満たすものが存在するだろうか?
(答) 当HP読者のHN「数々の和」さんから解答をお寄せいただきました。
(平成24年12月3日付け)
整数解を見つけました!
3 4 5
2 3 3
-864 -1304 -1287
各成分の平方
9 16 25
4 9 9
746496 1700416 1656369
HN「数々の和」さんからの続報です。(平成24年12月15日付け)
すべての成分が自然数である解を見つけました!
383 582 566
2 3 3
3 4 5
もう少し小さな数値で自然数解がないかを追いかけていますが、うまくつかまりません。
また、平方数の行列式において、a、b、c、d、e、f、g、h、i≠0、±1で
|a b c| |d e f| |g h i| |
|a2 b2 c2| |d2 e2 f2| |g2 h2 i2| |
のいずれの行列式も1を満たすものが存在するだろうか?という問いかけに対して、第2行
及び第3行の6個の成分を既知としたとき、第1行の成分を計算する公式が見つかりました。
a,b,c を x,y,z とし未知数であることをはっきりさせておこう。d〜iは既知数である。
p=ei-fh 、q=fg-di 、r=dh-eg、p’=ei+fh 、q’=fg+di 、r’=dh+eg とおくと、問題は
px+qy+rz=1 ・・・ (1) pp’x2+qq’y2+rr’z2=1 ・・・ (2)
という不定方程式を解く問題になる。pqr≠0とする。(2)をr倍して(1)を代入すれば
pp’rx2+qq’ry2+r’(1-px-qy)2=r
展開して整理すると、
(pp’r+p2r’)x2+2pqr’xy+(qq’r+q2r’)y2-2r’(px+qy)=r-r’ ・・・ (3)
ここで、 pp’r+p2r’=p(p’r+pr’)=p[(ei+fh)(dh-eg)+(ei-fh)(dh+eg)]=p(2dehi-2efgh)= -2ehpq
同様にして qq’r+q2r’=-2dgpq 、r-r’=-2eg なので、(3)は、
-2ehpqx2+2pqr’xy-2dgpqy2-2r’(px+qy)=-2eg
両辺に -pq/2 を掛け、 X=pqx 、Y=pqy と置くと、 ehX2-(dh+eg)XY+dgY2+r’(pX+qY)=egpq
すなわち、 (eX-dY)(hX-gY) +r’(pX+qY)=egpq となる。
さらに、 pX=p[-g(eX-dY)+d(hX-gY)]/(-eg+dh)= p[-g(eX-dY)+d(hX-gY)]/r
同様にして、 qY=q[-h(eX-dY)+e(hX-gY)]/r だから、
pX+qY=[-(gp+hq)(eX-dY)+(dp+eq)(hX-gY)]/r
ここで、-(gp+hq)=-egi+fgh-fgh+dhi=i(dh-eg)=ir ・・・ (4)
dp+eq=dei-dfh+efg-dei=-f(dh-eg)=-fr ・・・ (5)
よって、 pX+qY=i(eX-dY)-f(hX-gY) となり、(3)は、
(eX-dY)(hX-gY) +r’[ i(eX-dY)-f(hX-gY)]=egpq
両辺から fir’2 を引くと、左辺は因数分解できて、 (eX-dY-fr’)(hX-gY+ir’)=egpq-fir’2
このとき、右辺=egpq-fir’2=eg(ei-fh)(fg-di)-fi(dh+eg)2
=e2fg2i-de2gi2-ef2g2h+defghi-d2fh2i-2defghi-e2fg2i
=-dh・di・fh-ei・eg・di-fg・eg・fh-dh・ei・fg
=-(r+r’)/2・(q’-q)/2・(p’-p)-(p+p’)/2・(r’-r)/2・(q’-q)/2
-(q+q’)/2・(r’-r)/2・(p’-p)/2-(p+p’)/2・(q+q’)/2・(r+r’)/2
=(-1/8)[(r’-r)(pq’-pq+p’q’-p’q+p’q-pq+p’q’-pq’)
+(r’+r)(p’q’-p’q-pq’+pq+pq+pq’+p’q+p’q’)]
=(-1/8)[2(r’-r)(p’q’-pq)+2(r’+r)(p’q’+pq)
=(-1/4)(r’p’q’-r’pq-rp’q’+rpq+r’p’q’+r’pq+rp’q’+rpq)
=(-1/2)(pqr+p’q’r’)
したがって、(3)は、 (eX-dY-fr’)(hX-gY+ir’)= (-1/2)(pqr+p’q’r’)
ここで、(1/2)(pqr+p’q’r’) を2個の数 −vとuの積に分け、連立方程式
eX-dY-fr’=-v 、hX-gY+ir’=u
を解くと、 X=(du+gv-q’r’)/r 、Y=(eu+hv-r’p’)/r
したがって、 x=(du+gv-q’r’)/(pqr) 、y=(eu+hv-r’p’)/(pqr)
rz=1-[(dpu+gpv)-pq’r’]/(pqr)-[(equ+hqv)-qr’p’]/(pqr)
=[-(dp+eq)u-(gp+hq)v+pqr+(pq’+p’q)r’]/(pqr)
ここで、(4)(5)より、 dp+eq=-fr 、gp+hq=-ir で、さらに、
pq’+p’q=(ei-fh)(fg+di)+(ei+fh)(fg-di)=2efgi-2dfhi=2fi(eg-dh)=-2fir
したがって、 rz=(fru+irv+pqr-2firr’)/(pqr)
よって、 z=(fu+iv)+pq-2fir’]/(pqr)
ここで、 pq-2fir’=pq-2fi(dh+eg)=pq-2(fh・di+ei・fg)
=pq-2[(p’-p)/2・(q’-q)/2+(p’+p)/2・(q’+q)/2]
=pq-(1/2)(2p’q’+2pq)=-p’q’
したがって、 z=(fu+iv)-p’q’)/(pqr)
(結論) 6数 d,e,f,g,h,i が与えられ、p=ei-fh≠0 、q=fg-di≠0 、r=dh-eg≠0
とする。
p’=ei+fh 、q’=fg+di 、r’=dh+eg 、uv=(pqr+p’q’r’)/2 を満たす任意のuとvに対して
a=(du+gv-q’r’)/(pqr) 、b=(eu+hv-r’p’)/(pqr) 、c=(fu+iv-p’q’)/(pqr)
とすれば題意を満たす。(なお、p,q,r の中の何れかが0である場合には言及しなかった。)
(コメント) 技巧的な計算で圧巻ですね!
383 582 566
2 3 3
3 4 5
の場合について、d=2,e=3,f=3,g=3,h=4,i=5 なので、p=3,q=-1,r=-1
このとき、p’=27,q’=19,r’=17 で、uv=(3+8721)/2=4362 を満たす u,v として、
u=727 ,v=6 とすると、
a=(1454+18-323)/3=383 、b=(2181+24-459)/3=582 、c=(2181+30-513)/3=566
となり、数々の和さんの答えと一致する。
(偶然選んだ u、v に対して、数々の和さんの答えと一致して驚きました!)
このような機会を与えてくださった数々の和さんに感謝します。
GAI さんからのコメントです。(平成24年12月31日付け)
「数々の和」さんからの報告を見て、圧巻な式変形と数多くの変数を巧に操作して解答に
導かれる力に感動しました。私には導き方はわかりませんが、次のようなものが存在すると
のことです。
|2
3 2| |4 2 3| |9 6 7| |
|2 3 5| |3 2 3| |9 5 7| |
| 2 3 6| | 3 2 3| |17 11 16| |
| 5 7 6| | 6 4 7| |17 16 20| |
| 8 7 8| |12 11 7| |17 15 16| |
|10 7 12| | 4 2 7| |17 12 20| |
さらに、フィボナッチ数を多数含む例として、
|1167 2 5| |1698 3 8| |2866 5 13| |
| 610 5 13| |1054 8 21| |1665 13 34| |
(コメント) 数字が簡潔で綺麗ですね!