極限値の計算                               戻る

 当HP読者のHN「ブルート」さんからの出題です。
                                      (平成30年7月28日付け)

 次の極限値を求めよ。

(1) limn→∞ 1/n{√(1/n)+√(2/n)+・・・+√(n/n)}

(2) limn→∞ {1/(n+1)+1/(n+2)+・・・+1/2n}

(3) limn→∞ {1/√(n^2+1^2)+1/√(n^2+2^2)+・・・+1/√(n^2+n^2)}



































(答) らすかるさんが考察されました。(平成30年7月28日付け)

 すべて区分求積の問題ですね。

(1) limn→∞ (1/n)Σk=1〜n √(k/n)=∫01√xdx=2/3

(2) limn→∞ Σk=1〜n 1/(n+k)=limn→∞ (1/n)Σk=1〜n 1/(1+k/n)=∫011/(1+x)dx=log2

(3) limn→∞ Σk=1〜n 1/√(n2+k2)=limn→∞ (1/n)Σk=1〜n 1/√(1+(k/n)2)

  =∫011/√(1+x2)dx=log(1+√2)


 ブルートさんからのコメントです。(平成30年7月28日付け)

 なるほど!区分求積法の存在を忘れていました...。ありがとうございます。ところで、なぜ
積分範囲は、0〜1になるのでしょうか?


 らすかるさんからのコメントです。(平成30年7月28日付け)

 一般に、 limn→∞ (1/n)Σk=1〜n f(k/n)=∫01f(x)dx です。


 ブルートさんからのコメントです。(平成30年7月28日付け)

 そうなんですね!ありがとうございます。


 ハンニバル・フォーチュンさんからのコメントです。(平成30年7月28日付け)

 (1/n)Σk=1〜n f(k/n)≒(∫01f(x)dx)/(1-0)

 左辺は離散的な平均値 、右辺は連続的な平均値

 「limn→∞」で一致する(≒は=になる)という式なのですよね……。

 limn→∞ (1/n)Σk=1〜n f(k/n)=∫01f(x)dx/(1-0) の形で把握することもアリではないかと
個人的には思っております。


 らすかるさんからのコメントです。(平成30年7月28日付け)

 考え方としては、「平均値」ではないと思います。例えば、「KIT数学ナビゲーション」のペー
ジの図のように、f(x)の[0,1]の区間をn個に区切ってn個の矩形を作ると、各矩形の幅は1/n、
高さはf(k/n)なので、(1/n)Σk=1〜n f(k/n)が矩形の合計面積になる、という考え方なので、
最後の「/(1-0)」は不要です。

# より一般には、limn→∞((b-a)/n)Σk=1〜n f(a+(b-a)k/n) = ∫abf(x)dx です。
 (k=1〜nはk=0〜n-1でもOK)

 もし「平均値」だとしたら、「区分求積」という名前は合わないですね。


 ハンニバル・フォーチュンさんからのコメントです。(平成30年7月29日付け)

 次元解析的には、「最後の「/(1-0)」は不要です」〉には、私には少々不安が残ります。わざ
わざ1で割るような式にした理由には、応用上の観点を密かに密輸していたからでして、そ
の点の舌足らずを大いに反省しております。どうかお許しください。

 らすかるさんがより一般的な式をご提示くださいましたので、ありがたく頂戴いたしまして、
私の意図するところをくどいようですが再度投稿させて頂きたく存じます。

 らすかるさんによる式は区分求積法による真っ当かつ正当なものでして、いささかの疑念
もありません。式(1)とします。

  limn→∞((b-a)/n)Σk=1〜n f(a+(b-a)k/n) = ∫abf(x)dx ・・・(1)

 一方、別の見方もあるのですよ、との私なりの(私にはこちらの式が先に思い浮かぶので
すが…)、式変形をした上で、解釈を述べることといたします。以下のように変形いたします。
式(2)とします。

  limn→∞(1/n)Σk=1〜n f(a+(b-a)k/n) = ∫abf(x)dx/(b-a) ・・・(2)

 両辺を(b-a)で割っただけですが、解釈のひとつの例として次のように考えてみます。

 (自動車などの)物体Aの直線運動を考えます。時刻aから時刻bまでの速度を表す関数が
fで与えられています。

 ∫abf(x)dx は、時刻aから時刻bまでAが動いた距離を表します。

 ∫abf(x)dx/(b-a)は、Aの運動の時刻aから時刻bまでの平均速度を表します。即ち、これ

が式2の右辺です。一方、式(2)の左辺は、まず「limn→∞」のない

   (1/n)Σk=1〜n f(a+(b-a)k/n)

を考えます。

 時刻aから時刻bまで等間隔にn個の時刻を設定し、各時刻での物体Aの速度を計測し、こ
れらの相加平均を算出しています。むろん、これは真の〈Aの運動の時刻aから時刻bまでの
平均速度〉ではありません。n個ではサンプルが足らないからです。

 ここで「limn→∞」の極限操作を行えば、真の平均速度が得られる(真の平均速度に収束す
る)、すなわち、式(2)の左辺は、式(2)の右辺と一致する……というひとつの解釈が得ら
れます。

 さて、式(1)から式(2)に変形するにあたり、両辺を(b-a)で割ったわけですが、さきほどの
物体Aの運動のモデルでの次元解析では、(b-a)は、時間に相当する次元を持っています。

 らすかるさんによる一般化をする前の式に、先日私が式変形をした際に、「最後の「/(1-0)」
は不要です。」との瑕疵があるように見えますが、この(1-0)は一般化すれば、(b-a)になるべ
きものでして、個人的な気持ちといたしましては、わざわざついつい書きたくなるファクターな
のでした。

 以上、貴重な場をお借りいたしまして長々と愚にもつかない弁解をさせて頂きました。申し
訳ありませんでした。


 らすかるさんからのコメントです。(平成30年7月29日付け)

 もともと瑕疵とは思っていません。「/(1-0)」を書いた意味もわかっています。区分求積の
式は面積の極限が積分の値に等しいという式であって、平均値の極限を言うものではあり
ません、という意味です。

 平均値の極限と考えるとしたら、その式を区分求積の概念を使わずに証明するのは大変
ではありませんか?


(コメント) 式(1)は、微少な長方形の面積(距離)の和として考えている

       式(2)は、面積(距離)の和としてではなく、平均の速さとして考えている

   ということでしょうか?そう考えないと、ハンニバル・フォーチュンさんの見方は、左辺が
   微少な長方形の面積(距離)の和、右辺は平均の速さとなって、物理学的矛盾に陥っ
   てしまうような...雰囲気。

    区分求積法は、らすかるさんが仰るように、式(1)の見方だと思います。式(2)の見
   方は初見でした...。