証明の工夫                                戻る

 当HPがいつもお世話になっているHN「GAI」さんからの出題です。
                                        (平成26年3月10日付け)

 すべての自然数nに対し、次の不等式が成立することを示せ。

  (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2n-1)/(2n))≦1/√(3n)





































(答) ABCDEFさんからのコメントです。(平成26年3月10日付け)

 (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2n-1)/(2n))≦1/√(3n) を数学的帰納法で証明するのは難しいが、
より強い形: (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2n-1)/(2n))≦1/√(3n+1) は数学的帰納法で容易に証
明できます。(証明自体は簡単だから省略します。)

 数学的帰納法による証明はより強い形にした方が証明しやすいということはときどき起こ
ります。


(コメント) 数学的帰納法による証明に挑戦してみた。

 n=1 のとき、 左辺=1/2 、右辺=1/√4=1/2 で、左辺≦右辺 が成り立つ。

 n=k(k≧1)のとき成り立つと仮定する。すなわち、

   (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2k-1)/(2k))≦1/√(3k+1)

 両辺に、(2k+1)/(2k+2)を掛けて、右辺は、{1/√(3k+1)}{(2k+1)/(2k+2)} となる。

 そこで、

 {(2k+2)√(3k+1)}2−{(2k+1)√(3k+4)}2=(4k2+8k+4)(3k+1)−(4k2+4k+1)(3k+4)=7k≧0

 よって、 {1/√(3k+1)}{(2k+1)/(2k+2)}≦1/√(3k+4) が成り立ち、命題は、n=k+1のときも

成り立つ。したがって、すべての自然数nに対して、

    (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2n-1)/(2n))≦1/√(3n+1)

 ここで、1/√(3n+1)≦1/√(3n) なので、 (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2n-1)/(2n))≦1/√(3n)


(コメント) 上記の証明は、 (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2n-1)/(2n))≦1/√(3n) を数学的帰納法
      で証明するのと大差ないように思うのだが、どこに難しさがあるのだろう?


 GAI さんからのコメントです。(平成26年3月12日付け)

 1/√(3n+1)≦1/√(3n) に気がつかず、与式を直接数学的帰納法で証明することに、挑戦
してみて下さい。


(コメント) 挑戦してみました!

 n=1 のとき、 左辺=1/2 、右辺=1/√3 で、左辺≦右辺 が成り立つ。

 n=k(k≧1)のとき成り立つと仮定する。すなわち、

   (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2k-1)/(2k))≦1/√(3k)

 両辺に、(2k+1)/(2k+2)を掛けて、右辺は、{1/√(3k)}{(2k+1)/(2k+2)} となる。

 そこで、

 {(2k+2)√(3k)}2−{(2k+1)√(3k+3)}2=(4k2+8k+4)(3k)−(4k2+4k+1)(3k+3)=−3k-3

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ なるほど!これでは、証明が先に進みませんね。


 ABCDEFさんからのコメントです。(平成26年3月12日付け)

  (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2n-1)/(2n))≦1/√(an+b)

 これが数学的帰納法で単純に証明できるような a、b の条件を求めてみました。

 左辺をP(n)とおくと、 P(n)≦1/√(an+b) から、

 P(n+1)=P(n)(2n+1)/(2n+2)≦1/√(an+b)(2n+1)/(2n+2)≦1/√(a(n+1)+b)

が導けることから、 (2n+1)2(an+a+b)≦(2n+2)2(an+b)

 これが、すべての自然数nで成り立つことから、 a≦3b が出る。

 n=1で成り立つことから、 a+b≦4 もちろん、 a≧0 、a+b>0

 よって、 0≦a≦3b 、0<a+b≦4

 これが成り立つとき、すべての自然数nについて、 3n+1≧an+b が成り立つ。

 従って、数学的帰納法で単純に証明できるという条件のもとでは、 a=3 、b=1 が最善で
ある。

(コメント) なるほど!だから、「≦1/√(3n)」ではなく「≦1/√(3n+1)」を証明することを考え
      られたわけですね。


 ABCDEFさんからのコメントです。(平成26年3月12日付け)

 上記の不等式が成り立つような最善のa、bは、a=π、b=0 であるようです。

 (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2n-1)/(2n))≦1/√(πa) を証明してください。


 GAI さんが考察されました。(平成26年3月16日付け)

 In=∫0π/2 sinx dx に対し、I0=π/2 、I1=1 、In=(n-1)/n・In-2 (n≧2) から

  I2m=(2m-1)/2m・I2m-2=(2m-1)/2m・(2m-3)/(2m-2)・・・・・・3/4・1/2・I0
      ={(2m-1)(2m-3)・・・3・1}/{2m(2m-2)・・・・4・2}(π/2)

  I2m-1=(2m-2)/(2m-1)・I2m-3={(2m-2)(2m-4)・・・・4・2}/{(2m-1)(2m-3)・・・・5・3}

  I2m+1=2m/(2m+1)・I2m-1={2m(2m-2)・・・・4・2}/{(2m+1)(2m-1)・・・・5・3}

であることから、0<x<π/2 のとき、sin2m+1x<sin2mx<sin2m-1x から、

  I2m+1<I2m<I2m-1  よって、 I2m・I2m+1<I2m2<I2m・I2m-1

上記のことから、 I2m・I2m-1=1/2m・(π/2)=π/4m 、I2m・I2m+1=1/(2m+1)・(π/2)=π/(4m+2)

従って、 π/(4m+2)<I2m2<π/4m より、 √π/2√(m+1/2)<I2m<√π/2√m

 逆数をとって、2√m/√π<1/I2m<2√(m+1/2)/√π すなわち、

              2/√π<1/(I2m・√m)<2√(m+1/2)/((√π)(√m))

 m→∞ であるとき、 1/(I2m・√m) → 2/√π なので、これを、I2mの式で書き直すと、

   {2m(2m-2)・・・・4・2}/{(2m-1)(2m-3)・・・3・1}(2/π) → 2/√π

さらに、すべての自然数nに対する評価をあたえると、

   (1/2)(3/4)(5/6)・・・・・((2n-1)/(2n))<1/√(πn)

が成立する。

※これから、limn→∞ (1/√n){2・4・6・・・(2n)}/{1・3・5・・・(2n-1)}=√π が成立する。これは、
 Wallisの公式と呼ばれているそうです。



  以下、工事中!