観点別評価                             戻る

 最近の中学・高校では、旧来の評価方法を見直し、評価の観点の分類を行って、それら
について、まず評価し、それらを総合して、教科の評定とする観点別評価が導入されつつ
ある。

 小学校では、以前より、このような観点別の評価がなされていた。私自身の小学校時代
の通知票を思い返してみると、「読み書きができる」とか、「内容をよく理解している」とか、
国語という教科がいくつかに細分化され、そこに、○とか◎などがゴム印で押されていたよ
うに思う。

 数学では、4つの観点について、まず評価することになる。

 関心・意欲・態度  数学的な見方や考え方  表現・処理  知識・理解

 「表現・処理」や「知識・理解」は、旧来のテスト問題とリンクすると思うが、「数学的な見
方や考え方」や「関心・意欲・態度」なども、それに対応したテスト問題を作ることになって
いる。

 すぐ結果が返ってくる「表現・処理」や「知識・理解」は評価できるにしても、短い試験時
間で、「数学的な見方や考え方」や「関心・意欲・態度」は、テスト問題として測定可能な
のだろうか、ちょっと疑問である。

 4つの観点を、テスト問題としてどのようにとらえていくか、今一番頭の痛いところである。

 そこで、問題である。

 4つの観点ごとに1題ずつ問題を作り、合計100点満点の試験を作りたい。ただ、事務

作業の軽減を考えて、点数を見ると、どの観点が○で、どの観点が×かを、個々の問題

を調べることなく、分かるようにしたい。


 どのような配点にしたらよいだろうか? ただし、配点はすべて5の倍数で、何れも10

点以上あるものとする。




























(答) 10点、15点、20点、55点 の配点とすれば、如何なる組み合わせに対しても、
   それらの合計点数は相異なる。(ちょっと、これは現実的ではないですね?)

(求め方) 4 題の配点を、X、Y、Z、W ( X<Y<Z<W )とすると、
     X+Y+Z+W=100 であることから、 10 ≦ X < 25 でなければならない。
    X は、5 の倍数なので、X の可能性は、 10、15、20 の場合しかない。
    そこで、表を作って、しらみつぶしに求めると、

          
合計
10 15 20 55 100
10 15 25 不可
10 15 30 不可
10 15 35 不可
10 20 25 不可
10 20 30 不可
10 20 35 不可
10 25 30 不可
10 30 不可
15 20 25 不可
15 20 30 不可
15 25 30 不可
20 25 不可

   であるから、求める場合は上記のただ一つである。

  たとえば、80点だった場合、直ちに、X、Y、W が○で、Zが×であることが知られる。

 上記の問題では、5の倍数という条件が入っていたが、これを撤廃して、

   10題の問題の合計点数は、100点満点で、如何なる組み合わせに対しても、それ

  らの合計点数は相異なるようにしたい。各問題の配点は、自然数とするとき、果たして、

  このようなテスト問題を作ることは可能であろうか?

 これについては、読者の方に解決を委ねよう。(→ 解答は、こちらまで)


 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、この問題を整理された。
                                       (平成22年8月3日付け)

 冒頭の問題を、5で割った形で書き直せば次のようになる。

 4つの自然数 A、B、C、D ( A<B<C<D ) で次の条件を満たすものを求めよ。

(1) A+B+C+D=20
(2) A、B、C、D から何個かを取りだして和を作ればすべて異なる。
(3) A≧2


 ※(3)は問題を簡単にし解を一意的にするためのものだから、これはなしにしてこの問題
  を解いてください。


 この問題について、HN「攻略法」さんが考察された。(平成22年8月5日付け)

 (1)を満たす並びをすべて列挙して、(2)を満たすかどうか確認する。

No. 1 (1 2 3 14) ・・・ 1+2=3 より、題意を満たさない。
No. 2 (1 2 4 13) ・・・ 題意を満たす。(*)
No. 3 (1 2 5 12) ・・・ 題意を満たす。(**)
No. 4 (1 2 6 11) ・・・ 題意を満たす。
No. 5 (1 2 7 10) ・・・ 1+2+7=10 より、題意を満たさない。
No. 6 (1 2 8 9) ・・・ 1+8=9、1+9=2+8 より、題意を満たさない。
No. 7 (1 3 4 12) ・・・ 1+3=4 より、題意を満たさない。
No. 8 (1 3 5 11) ・・・ 題意を満たす。
No. 9 (1 3 6 10) ・・・ 1+3+6=10 より、題意を満たさない。
No. 10 (1 3 7 9) ・・・ 1+9=3+7 より、題意を満たさない。
No. 11 (1 4 5 10) ・・・ 1+4=5、1+4+5=10 より、題意を満たさない。
No. 12 (1 4 6 9) ・・・ 1+9=4+6 より、題意を満たさない。
No. 13 (1 4 7 8) ・・・ 1+7=8 より、題意を満たさない。
No. 14 (1 5 6 8) ・・・ 1+5=6 より、題意を満たさない。
No. 15 (2 3 4 11) ・・・ 題意を満たす。
No. 16 (2 3 5 10) ・・・ 2+3=5、2+3+5=10 より、題意を満たさない。
No. 17 (2 3 6 9) ・・・ 3+6=9 より、題意を満たさない。
No. 18 (2 3 7 8) ・・・ 2+8=3+7 より、題意を満たさない。
No. 19 (2 4 5 9) ・・・ 4+5=9 より、題意を満たさない。
No. 20 (2 4 6 8) ・・・ 2+4=6、2+8=4+6 より、題意を満たさない。
No. 21 (2 5 6 7) ・・・ 2+5=7 より、題意を満たさない。
No. 22 (3 4 5 8) ・・・ 3+5=8 より、題意を満たさない。
No. 23 (3 4 6 7) ・・・ 3+4=7、3+7=4+6 より、題意を満たさない。

 以上から、求める場合の数は、

   (1 2 4 13) 、(1 2 5 12) 、(1 2 6 11) 、(1 3 5 11) 、(2 3 4 11)

の5通りである。


 また、冒頭の問題の後半の問題も書きなおせば次のようになる。

 10個の自然数があり、その和は100である。その10個の中から何個かを取りだし
て作った和が全て異なるようなものは存在するか。


 しかし、10個はあまりにも多すぎて明らかに無理です。1000点満点でもできません。10
個を減らしてこれが可能な数の中で最大の個数に変えてください。そして、そのとき、条件を
満たす自然数の組の個数を求めてください。


 このFNさんの問いかけに対して、攻略法さんが考察された。(平成22年8月5日付け)

 1+2+4+・・・+2n-1+M=S とすると、

=S−(2−1)≧2 のとき、すなわち、 S≧2n+1−1 なら、解がある。

・1個の場合・・・(100)
・2個の場合・・・(1,*) で、2番目は、100-1=99≧2  ∴解の1つが(1,99)である。
・3個の場合・・・(1,2,*) で、3番目は、100-(1+2)=97≧4  ∴(1,2,97)
・4個の場合・・・(1,2,4,*) で、4番目は、100-(1+2+4)=93≧8  ∴(1,2,4,93)
・5個の場合・・・(1,2,4,8,*) で、5番目は、100-(1+2+4+8)=85≧16  ∴(1,2,4,8,85)
・6個の場合・・・(1,2,4,8,16,*) で、6番目は、100-(1+2+4+8+16)=69≧32 ∴(1,2,4,8,16,69)
・7個の場合・・・(1,2,4,8,16,32,*) で、7番目は、100-(1+2+4+8+16+32)=37<64 より解なし
・8個以上の場合は、100を超えるから、解なし

 また条件を満たす自然数の組の個数は、

 1個の場合 1通り ・・・ (100)
 2個の場合 49通り ・・・ (1,99)、 (2,98)、・・・、(49,51)
 3個の場合 760通り
 4個の場合 4974通り
 5個の場合 10571通り
 6個の場合 1156通り

●並びの生成
(*)の並びの場合
 辞書式順序の最小のものを求めようとすれば、単純に、1番目は1、2番目は2、3番目は
3となるが、1+2=3 より、3はNG。したがって、4。 ∴ (1,2,4)

 4番目は、5となるが、1+4=5 より、NG。6も、2+4。7も1+2+3=7 より、NG。したがって、8。
∴(1,2,4,8)

 このように、順に数字を追加していくと、「2のべき乗」列が現れていく。

 数学的な背景で言うと...

 2のべき乗の並び(1、2、4、8、16、32、・・・)について(「2進法」と「組合せ」との関係)
 ・「n個の問題の正解、不正解」を、n個のビット列 {b123 ・・・bn}
 ・「合計点」を、2進法表記 x=b1・1+b2・2+b3・4+ ・・・+bn・2n-1 と対応させること
 で、x は連続する非負整数を重複することなく表すことができるので、『何個かを取りだして
 和を作ればすべて異なる』を満たす。

 したがって、4番目の数を8とした並び(1,2,4,8)は、和を15とした最小の並びを与える。

 また、4番目の13は、前3つが決まれば自ずと決まり、8以上なので置き換えてもよい。
 これは、『A+B+C+D=20』を満たす。

(**)のような並びの場合、「連続しなくてよい」とした場合になる。上記のようなべき乗の並び
でなくてもよい。その並びや数は不明。

(コメント) FNさん、攻略法さん、ありがとうございます。点数を見れば、どの観点かが分か
      るというのはある意味邪道ですが、そうであったらいいな〜という思いで問題を作
      りました。

 3個の場合 760通り というのが気になったので計算してみました。

(1,2,97)、(1,3,96)、・・・、(1,48,51)
(2,3,95)、(2,4,94)、・・・、(2,47,51)
(3,4,93)、(3,5,92)、・・・、(3,46,51)、(3,48,49)
(4,5,91)、(4,6,90)、・・・、(4,45,51)、(4,47,49)
(5,6,89)、(5,7,88)、・・・、(5,44,51)、(5,46,49)、(5,47,48)
(6,7,87)、(6,8,86)、・・・、(6,43,51)、(6,45,49)、(6,46,48)
(7,8,85)、(7,9,84)、・・・、(7,42,51)、(7,44,49)、(7,45,48)、(7,46,47)
(8,9,83)、(8,10,82)、・・・、(8,41,51)、(8,43,49)、(8,44,48)、(8,45,47)
(9,10,81)、(9,11,80)、・・・、(9,40,51)、(9,42,49)、(9,43,48)、(9,44,47)、(9,45,46)
(10,11,79)、(10,12,78)、・・・、(10,39,51)、(10,41,49)、(10,42,48)、・・・、(10,44,46)
(11,12,77)、(11,13,76)、・・・、(11,38,51)、(11,40,49)、(11,41,48)、・・・、(11,44,45)
(12,13,75)、(12,14,74)、・・・、(12,37,51)、(12,39,49)、(12,40,48)、・・・、(12,43,45)
(13,14,73)、(13,15,72)、・・・、(13,36,51)、(13,38,49)、(13,39,48)、・・・、(13,43,44)
(14,15,71)、(14,16,70)、・・・、(14,35,51)、(14,37,49)、(14,38,48)、・・・、(14,42,44)
(15,16,69)、(15,17,68)、・・・、(15,34,51)、(15,36,49)、(15,37,48)、・・・、(15,42,43)
(16,17,67)、(16,18,66)、・・・、(16,33,51)、(16,35,49)、(16,36,48)、・・・、(16,41,43)
(17,18,65)、(17,19,64)、・・・、(17,32,51)、(17,34,49)、(17,35,48)、・・・、(17,41,42)
(18,19,63)、(18,20,62)、・・・、(18,31,51)、(18,33,49)、(18,34,48)、・・・、(18,40,42)
(19,20,61)、(19,21,60)、・・・、(19,30,51)、(19,32,49)、(19,33,48)、・・・、(19,40,41)
(20,21,59)、(20,22,58)、・・・、(20,29,51)、(20,31,49)、(20,32,48)、・・・、(20,39,41)
(21,22,57)、(21,23,56)、・・・、(21,28,51)、(21,30,49)、(21,31,48)、・・・、(21,39,40)
(22,23,55)、(22,24,54)、・・・、(22,27,51)、(22,29,49)、(22,30,48)、・・・、(22,38,40)
(23,24,53)、(23,25,52)、(23,26,51)、(23,28,49)、(23,29,48)、・・・、(23,38,39)
(24,25,51)、(24,27,49)、(24,30,48)、・・・、(24,37,39)
(25,26,49)、(25,27,48)、・・・、(25,37,38)
(26,27,47)、(26,28,46)、・・・、(26,36,38)
(27,28,45)、(27,29,44)、・・・、(27,36,37)
(28,29,43)、(28,30,42)、・・・、(28,35,37)
(29,30,41)、(29,31,40)、・・・、(29,35,36)
(30,31,39)、(30,32,38)、・・・、(30,34,36)
(31,32,37)、(31,33,36)、(31,34,35)
(32,33,35)

 以上から、

 {47+45+・・・+3+1}+{1+1+2+2+・・・+11+11}+{12+10+9+7+6+4+3+1}

=24(47+1)/2+2・11(1+11)/2+52=760

 よって、3個の場合は確かに、760通りあることが示された。



   以下、工事中