ブラマグプタの問題
インドの数学者に、ブラマグプタ(598〜660)という人がいる。彼は、次のような問題を残して
いる。(原題はすべて文字で表されている。)
15cm隔たった所に、長さ 1cmの棒が垂直に立てられている。いま、2つの棒の間の適当
な所に、長さが分からないロウソクをおいて、明かりを灯したら、下図のような長さの影ができ
た。このとき、ロウソクの長さは、いくらだろうか?(炎の部分の長さは無視するものとする。)
(参考文献:コロソフ 著 山崎 昇・牧野金太郎 訳 数学課外よみもの(T) (東京図書))
(答) 4cm
実際に、ろうそくの長さを、x cm、左側の棒からろうそくまでの距離を、y
cmとすると、
右側の棒からろうそくまでの距離は、15−y cmになるので、相似三角形の辺の比の
関係から、
2 : 1 = 2+y : x すなわち、 2x=2+y
3 : 1 = 18−y : x すなわち 3x=18−y
2つの式を辺々加えて、 5x=20
よって、x=4(cm) である。
一般に、棒の長さを h、影の長さを a 、 b 、 2つの棒の間隔を d とすると、
ろうそくの長さ x は、
x = h(a+b+d)/(a+b)
で与えられる。
(追記) 上記の問題を、当HP読者のJ.Y.さんが考察された。(平成23年12月30日付け)
図のように点に名前をつけます。ここで、四角形GDFIは長方形で、GIBCになることが
わかります。
さらに、GJACとなるように、BC上に点Jをとれば、△GDJ≡△IFC(1辺とその両端の
角)となり、また、平行であることから、△GBJ∽△AGI(2組の角)で、その相似比は、
2+3 : 15 = 1 : 3
になります。相似な図形の対応する部分の長さの比は等しいので、GD : AH = 1 : 3
ここで、GD=1(cm) より、AH=3(cm) となり、 AE=3+1=4(cm) になります。
一般に、
GD=IF=h(=HE)、BD=a 、FC=b (=DJ)、DF=d(=GI)、AE=x とすると、
△GBJ∽△AGIより、 h : x−h = a+b : d が成り立つ。
よって、(a+b)(x−h)=dh より、 x−h=dh/(a+b) から、x=h+dh/(a+b)
すなわち、 x=h+h・d/(a+b) となります。
(コメント) J.Y.さん、別解をいただき、ありがとうございます。△GBJ を考えるのがコツの
ようですね!
(追記) 当HPがいつもお世話になっているHN「S(H)」さんが、上記の問題を考察された。
(平成23年12月31日付け)
左右から光をあてると、影の長さ=h が共通であることに注意して、
DE=x1 、EF=x2 とおくと、 x1 + x2 = 15 で、
√[(2 + x1)2 + h2]・1/√[22 + 12] = h 、√[(x2 + 3)2 + h2]・1/√[12 + 32] = h
このとき、 (2 + x1)2 = 4h2 、(x2 + 3)2 = 9h2 より、 9(2 + x1)2 = 4(x2 + 3)2
x2 = 15 - x1 を代入して、 9(2 + x1)2 = 4(18 - x1)2
因数分解して、 (42 + x1)(-30 + 5x1) = 0 より、 x1=-42 、6
x1>0 なので、 x1=-42 は不適。 よって、 x1=6
このとき、 x2=9 、h=4
(→ 参考:「ブラマグプタ」)
攻略法さんが、種々の解法を整理されました。(平成24年1月2日付け)
下図において、GJAC で、さらに、
GD=IF=h(=HE)、BD=a 、FC=b (=DJ)、DF=d(=GI)、AE=x とする。
その1 ・・・ 相似三角形の長さの比
△AGI∽△ABC なので、対応する長さにおいて、
底辺 : 高さ = GI : AH = BC : AE より、 d : x - h =
a + d + b : x
よって、 x = h(a + b + d)/(a + b)
その2 ・・・ 相似三角形の長さの比
△GBJ∽△ABCなので、対応する長さにおいて、
底辺 : 高さ = BJ : GD = BC : AE より、 a + b : h
= a + d + b : x
よって、 x = h(a + b + d)/(a + b)
その3 ・・・ 面積
面積に注目して、 △GBD + □GDFI + △ICF + △AGI = △ABC より、
ah/2 + dh + bh/2 + d(x - h)/2 = (a + b + d)x/2
よって、 x = h(a + b + d)/(a + b)
その4 ・・・ 相似三角形の面積比
△GBJ∽△ABC で、底辺の比が a + b : a + d + b より、面積比は、
(a + b)2 : (a + d + b)2
よって、 (a + b)h/2・(a + d + b)2/(a + b)2 = (a + d + b)x/2 より、
x = h(a + b + d)/(a + b)
その5 ・・・ 相似三角形の面積比
△ABCの面積は、(a + d + b)x/2
左の三角形について、
△GBD∽△ABE(高さの比が、h:x)、△GBDの面積 ah/2 より、
△ABEの面積は、ah/2 の (x/h)2倍
右の三角形について、
△ICF∽△ACE(高さの比が、h:x)、△ICFの面積 bh/2 より、
△ACEの面積は、bh/2 の (x/h)2倍
よって、面積において、 △ABC=△ABE+△ACEより、
(a + b + d)x/2 = (ah/2) (x/h)2 + (bh/2) (x/h)2
以上から、 x{(a + b)x - h(a + b + d)} = 0 なので、x
= h(a + b + d)/(a + b)
その6 ・・・ 算数
点B、Cから光が発せられたと考えると、△GBD+△ICF=△GBJ において、
棒GDの影がろうそくの長さAEになるのは、15÷(2 + 3) = 3 なので、3
+ 1倍とな
るときである。 よって、x=1×(3+1)=4
一般に、
点B、Cから光が発せられたと考えると、△GBD+△ICF=△GBJ において、
棒GDの影がろうそくの長さAEになるのは、d÷(a + b) なので、
d/(a + b) + 1 = (a + b + d)/(a + b)倍となるときである。
よって、 x = h(a + b + d)/(a + b)
その7 ・・・ 図形と方程式
点B(0,0)、点C(2+15+3,0) = (20,0) とする。
直線BA : y = (1/2)x 、直線CA : y = (-1/3)(x - 20) なので、その交点は、連立
方程式を解いて、(8,4) よって、 x=4
その8 ・・・ ベクトル
点B(0,0)、点C(2+15+3,0) = (20,0) とする。
ベクトルBA = s(2,1) = (2s,s)、ベクトルCA = (20,0) + t(-3,1) = (20-3t,t) な
ので、その交点は、2s = 20-3t、 s = t の連立方程式を解くことで求まる。
(s,t) = (8,4) より、交点は、(8,4) よって、 x=4
(追記) 当HP読者の伊藤 努さんから別解を頂いた。(平成27年10月18日付け)
ローソクの長さを x cmとすると,左側の長さは、2x cm、右側の長さは、3x cm なので、
2x+3x=15+2+3 より、 x=4(cm)
(コメント) 一番自然な相似比による解法が漏れていましたね!伊藤さんに感謝します。