第2章 確率分布                          目次に戻る

1.確率分布

  x1、x2、・・・、x という値を取り得る変数Xが確率変数とは、

   X=x のときの確率 pが定まり、かつ、 Σk=1〜n=1 のときを言う。

 このとき、Xの確率分布とは、次の表のような x と pの対応関係を言う。

 
  x1   x2   ・・・   x 
  p1   p2  ・・・   p

  X=x のときの確率 pは、 p=P(X=x) とも書かれる。

 上の表で確率変数Xの確率分布が与えられるとき、「確率変数Xはこの分布に従う」という。

(問) 白球5個、黒球3個が入っている袋の中から球を1個ずつ元に戻さずに3個取り出す
   とき、白球のでる回数をXとする。確率変数Xの確率分布を求めよ。

 確率変数Xが上表に示された分布に従うとき、

 E(X)=Σk=1〜n・p をXの期待値(平均値)

 V(X)=Σk=1〜n (x−m)2・p (ただし、m=E(X)) をXの分散

と言う。 σ(X)=√V(X) をXの標準偏差という。

 実際に、 x が f 個(1≦k≦n)あるとき、 N=Σk=1〜n とすると、

  平均値 m==(Σk=1〜n・x)/N=Σk=1〜n・(f/N)=Σk=1〜n・p

  分散 σ2=(Σk=1〜n・(x−m)2)/N

        =Σk=1〜n (x−m)2・(f/N)=Σk=1〜n (x−m)2・p

(問) 次の分布の期待値、分散、標準偏差を求めよ。

(1) さいころを1回ふる (2)
 
  1   2   3  4  5  6
  1/6 1/6 1/6 1/6 1/6 1/6
 
   1    2    3 
  3/10  6/10  1/10

(問) ・・・ 期待値という言葉を理解するための良問

 100本のくじの中に、1等100円(1本)、2等10円(9本)の当たりくじがある。このくじを
1本引いたとき、当たる賞金をXとする。このとき、Xの期待値を求めよ。また、このくじを引
くのに、1回2円を払うのは損か得か。

  ≪重要公式≫  V(X)=E(X2)−E(X)2

(問) 上の公式に対して、証明を与えよ。

(問) 次の分布に対して、分散を求めよ。

 
   1    2    3 
  3/10  6/10  1/10

2.確率変数の変換

 確率変数Xに対して、その1次関数 Y=aX+b も確率変数となる。次の公式は基本的で
ある。

(1) E(aX+b)=aE(X)+b    (2) V(aX+b)=a2V(X)

(問) 上の公式に対して、証明を与えよ。

(問) 確率変数Xが次の分布に従うとき、確率変数 Y=2X+3 の平均、分散、標準偏差を
   求めよ。

 
   0    1    2 
  1/4   1/2   1/4

3.確率変数の標準化

 確率変数Xの平均 m=E(X)、標準偏差 σ=σ(X) とする。このとき、確率変数

  Y=(X−m)/σ は、 E(Y)=0 、σ(Y)=1 という著しい特徴を持つ。

(問) 上記を確認せよ。

 平均 0、標準偏差 1 の分布を標準的な分布といい、このような変数に、確率変数Xを変
換することを、Xの標準化という。

(問) a>0である1次式 Y=aX+b によって、期待値0、分散1を持つ確率変数Xから、期
   待値5、分散100の確率変数を作りたい。定数a、bの値を求めよ。

4.期待値の加法定理・乗法定理

 (期待値の加法定理)  E(X+Y)=E(X)+E(Y)

  簡単のため、次の場合について確認してみよう。

X\Y  1    2 


1/3   1/6

1/6   1/3
1/2

1/2
1/2   1/2
   左の分布表から、X+Yの確率分布を作ると
 
X+Y 1    2    3
 

 このとき、 E(X)=    、E(Y)=    、E(X+Y)=

 確率変数XとYが互いに独立とは、Xのとる任意の値 a とYのとる任意の値 b について

    P(X=a ,Y=b)=P(X=a)P(Y=b)

が成り立つときを言う。

(問) 上記の確率分布XとYは独立と言えるか?

 (期待値の乗法定理)  E(XY)=E(X)E(Y)  ただし、XとYは互いに独立

X\Y  1    2 


 

c   d
   左の分布表から、X+Yの確率分布を作ると
 
XY 0    1    2
 

 このとき、 E(X)=    、E(Y)=    、E(XY)=

 以上の公式を用いて、次の定理を得る。(a、b は定数)

(1) E(aX+bY)=aE(X)+bE(Y)

(2) V(X)=E((X−m)2)=E(X2)−E(X)2  ただし、m=E(X)

(3) XとYが互いに独立のとき、 V(X+Y)=V(X)+V(Y)

(4) XとYが互いに独立のとき、 V(aX+bY)=a2V(X)+b2V(Y)