正射影・空間の必須手法                   目次に戻る

■ 正射影について

 空間図形は実物そのものを紙面に描けないこともあって、一般的に理解しづらいことが多
い。そこで、正射影を考えることによって、空間図形を把握してみよう。正射影は概念として
は単純であるが、正射影固有の性質が面白い。

正射影の定義
 図形Fの任意の点をPとする。点Pを通り、平面αに垂直な直線mを
引き、mとαとの交点をQとする。点Pが図形F全体を動くときに点Qが
動いて出来る平面α上の図形をF’とする。

  このとき、「図形Fを平面αに正射影した図形がF’である」という。

練習1(点の正射影) 点P(3,7,−1)の平面α:x−2y+z=0 上への正射影を求めよ。
                                            (答) (5,3,1)

練習2(直線の正射影) 直線m:x=y−1=2−2z の平面α:x−2y+z=0 上への正射
    影を求めよ。                    (答) (x−6)/5=(y−3)/2=−z

練習3(ベクトルの正射影) 上への正射影を求めよ。   (答) (/|2

 練習3の応用として、次の問は即答できるだろう。

練習4 球面S:(x−1)2+y2+(z+1)2=36 の中心をCとする。点AをS上の1点とする
    とき、AにおけるSの接平面上に任意の点Pをとる。このとき、内積CPCAを求め
    よ。                                         (答) 36

練習5 同一直線上にない3点A、B、Cについて、直線ACに関してベクトルABと対称なベ
    クトルを、ABACを用いて表せ。                       (答) 略

 正射影と面積

 面積Sの図形Fを含む平面をαとし、Fを平面βへ正射影した図形F’の面積をS’とすると、

   S’=S・cosθ (ただし、θはαとβのなす角)

 ここでは、特別な場合について考えて納得してもらうことにしよう。

 左図において、長方形ABCDの面積Sは、
S=AB・CDである。A、B、C、Dのβ上への正
射影をP、Q、R、Sとするとき、ABは2平面α、
βの交わりと平行と仮定して、

  PQ=AB 、 PS=AD・cosθ

 よって、

  S’=PQ・PS=AB・AD・cosθ=S・cosθ


(注意) 一般の平面図形Fでは、Fを交線にに平行な辺を持つ長方形に細分して上と同様
    に考えれば、やはり上の公式は成り立つ。もう少し厳密な証明は読者に任せる。

 この公式に関連した問題は数多い。有名な問題をいくつか紹介しよう。

1.OA⊥OB、OB⊥OC、OC⊥OAとなっている四面体OABCの4つの面△ABC、△OBC、
 △OCA、△OABの面積をそれぞれS、A、B、Cとすると、S2=A2+B2+C2 が成り立つ
 ことを示せ。

2.球面S : x2+y2+z2=1 と平面α : x+y+z=1 との交線をCとする。Cの xy 平面へ
 の正射影をFとするとき、Fの方程式、Fの囲む図形の面積をそれぞれ求めよ。
                      (答) x2+xy+y2−x−y=0、z=0  2π/(3

3.空間内に面積1の正三角形ABCを考える。△ABCを xy 平面、yz 平面、zx 平面にそれ
 ぞれ正射影して出来る図形の面積をU、V、Wとする。空間内で△ABCを含む平面を動か
 すとき、U+V+Wの最大値を求めよ。                       (答) 

4.空間に下図のような立方体ABCD-PQRSとその対角線ARに垂直な平面αがある。こ
 の立方体のαへの正射影は正六角形になる。この正六角形の面積を求めよ。(答) 9

          

■ 空間の必須手法について

 「空間はどうも苦手だ」、「空間の問題は図が描きにくいから嫌いだ」などという声をよく耳に
するが、「空間」とは我々が日常慣れ親しんでいるはずの”3次元の世界”に他ならないのだ
から”感覚がつかみにくい”ということはないはずなのである。

 以下では、空間特有の必須手法を整理し、演習していこう。

(1) 垂線の足を求めること(平面・直線)
(2) 点と平面(直線)の距離
(3) 平面(直線)に関する対称点
(4) 平面と平面、直線と直線、直線と平面のなす角
(5) 直線を含む平面、平面と平面の交線
(6) 球と直線、平面と直線、球と平面、直線と直線の共有点
(7) 円、球、接平面のベクトル方程式

練習1  空間内に2直線がある。
    m : x−1=(y−4)/3=(z+1)/2 、n : x−a2=(y−2a)/2=z+2 (aは実数)
    このとき、次の問いに答えよ。

(1) mとnは常に同一平面上にないことを示せ。
(2) nを含み、mと平行な平面πの方程式を求めよ。 (答) x−y+z−a2+2a+2=0
(3) 原点と平面πの距離が1/となるようなaの値を求めよ。 (答) 1±、−1、3

練習2  空間において、4点O(0,0,0)、A(1,2,3)、B(−2,−1,3)、C(−3,1,−2)
    がある。このとき、次の問いに答えよ。

(1) △ABCの面積を求めよ。                          (答) 3√59/2
(2) 四面体OABCの体積を求めよ。

練習3  空間内に点A(3,−4,2)を中心とする半径4の球面SとS上の点P(1,−2,0)
    がある。PにおけるSの接平面をαとするとき、次の問いに答えよ。

(1) αの方程式を求めよ。                       (答) x−y+z=3
(2) 原点OとAはαに関して同じ側にあるか、反対側にあるか。       (答) 反対側

練習4  空間の2点A(1,2,3)、B(5,6,7)を直径とする球をSとする。点Q(−7,2,3)
    からSへの最短距離dとそれを与えるS上の点の座標を求めよ。
                               (答) 4  (−1/3,10/3,13/3)

練習5  空間に4点A(1,0,0)、B(0,2,0)、C(0,0,2)、D(2,3,4)がある。次の問
    いに答えよ。

(1) Dから3点A、B、Cを通る平面へ下した垂線の足をHとするとき、Hの座標を求めよ。
                                        (答) (−1,3/2,5/2)
(2) Hから2点B、Cを通る直線に下した垂線の足をKとするとき、Kの座標を求めよ。
                                         (答) (0,1/2,3/2)
(3) 点Pが△ABCの内部及び辺上を動くときのPとDの距離の最小値を求めよ。
                                              (答) √66/2

練習6  直線 m : 1−x=y+1=(z−1)/4 を含み、平面α : 4x−y−z=6 とのなす角
    が45°となる平面の方程式を求めよ。   (答) 8x+4y+z=6、2x−2y+z=6

練習7 次の問いに答えよ。

(1) 平面上の長さ r の2つのベクトルOAOBは直交しているとする。このとき、
  OPOAcosθ+OBsinθ (0≦θ≦2π) の点Pは、どんな図形を描くか。
                         (答) 平面OAB上でOを中心とする半径 r の円
(2) 空間のベクトルOM=(,0)、ON=(1,−1,2)に対して、
  OPOMcosθ+ONsinθ (0≦θ≦2π) の点Pは、どんな図形を描くか。また、
  OQ
=(2,1,1)の点Qはこの図形上の点であることを示し、そのときのθの値を求め
  よ。                                 (答) 前半は略 θ=π/6
(3) 上で求めた図形をxy平面へ正射影してできる図形の方程式を求め、そのグラフを描
  け。                                    (答) x2−xy+y2=3