・ 考える力を育む                 S.H氏

 2月11日の「NHKニュース10」で、めずらしく数学の話題が取り上げられていた。わが
国にも、西洋に負けないくらいの和算が発達していて、日本各地に和算の問題と解答が
書かれた「算額」が神社等に奉納されている。私の知っている高校の体育館通路にも算
額が掲示されている。(残念ながら、その高校は平成16年3月で統廃合されてしまう。算
額はどうなってしまうのだろう?)

 江戸時代の頃から始まった風習のようで、数学の問題が解けたことを神仏に感謝し,ま
すます勉学に勤しむことを祈願して奉納されたものらしい。全国に約800面の算額が存
在するようで、そのうち29面が岩手県一関市周辺(平泉の中尊寺等)に奉納されている。
                                    (参考:算額のホームページ

 「NHKニュース10」によれば、各地の小・中学校で、生徒の考える力を育むために、こ
の算額、すなわち、和算を授業に取り入れているところが増えているとのことである。

 番組で取り上げられていた問題は、

 米 3石、麦 2石で、銀 151匁 で、米 1石、麦 5石で、銀 137匁 であった。
このとき、米 1石は、銀何匁であるか。

 男のキャスターの方は、方程式を用いて解いていたが、森田美由紀キャスターは、方程
式を用いないで、小学生にも分かるように鮮やかに解いていた。

 問題文から、  米 15石、麦 10石で、銀 755匁
           米 2石、麦 10石で、銀 274匁
 したがって、 米 13石 は、銀 481匁 で、米 1石 は、銀 37匁となる。

 森田美由紀さんは、多分NHKでは、実力派のキャスターだろう。優しく、心を癒してくれ
るような話し方に、ファンもきっと多いに違いない。もちろん、私もファンであるが、今度の
改編で、ニュースを離れるとか。残念でならない。森田美由紀さんとは、同時期同じキャン
パスで過ごしたわけであるが、もしかしたら、中央食堂で学生時代の森田さんにあってい
たかもしれない。(互いの学部が近かったから...。)

 最近の小学校では、考える力を育むことに熱心なあまり、基本的な計算技能の習熟が
おろそかになる傾向がある。算数に割りあてられる時間には制限があり、「考える力を育
む」時間が増えれば、当然「計算練習」の時間は減少する。

 教育界にとって衝撃的な報告が最近なされた。

 長野県の2003年度学力実態調査(小4〜高3対象)によれば、 80×40 の正答率が
なんと 48.2% しかなかったという。前回の調査では、66.9%あったとのことであるの
で、この落ち込みは異常としか思えない。38.8%の児童が、「320」という誤った解答を
していたという。さらに、 47×64 の正答率は、39.9%で、さらに悪い。前回の調査で
は、80×40 の正答率とほぼ同じの 66.2%であることを考えると、掛け算そのものの
定着率が非常に悪くなっているということである。

 長野県の調査のように、全国でも同じ状況が各地の小学校で起こっているのであろうか?
基本的な計算技能の習熟抜きには、「考える力を育む」ことは考えられないと個人的には
思うのだが、みなさんはどうお考えだろうか?

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