・ある歴史上の人物                      GAI 氏

 数学に関心を持たれる人なら一度は耳にされたことがあるメルセンヌとフェルマー、しかし、
日本人全体の1パーセントも、共に名前を知る人は居ないのではなかろうか?こんな2人が
どんな人物であったのかを思い知る意味で、次のエピソードを紹介します。

 メルセンヌが1643年、友人フェルマーに宛てた手紙に、

「N=2^36*3^8*5^5*11*13^2*19*31^2*43*61*83*223*331*379
                    *601*757*1201*7019*823543*616318177*100895598169

に対し、Nのその自分自身を除く約数の総和は元のNに対してどれ位の比率か?」

と問いかけた。

 これに対しフェルマーは正しい回答を寄こしたという。

 当時卓上計算機もプログラムで処理できるコンピュータの影も形も無い時代にこんな問い
掛けをしたメルセンヌのセンスと、これをいとも解決してしまうフェルマーの途轍もない計算
力をご堪能下さい。


(コメント) 自分自身を除く約数の総和は、

(1+・・・+2^36)(1+・・・+3^8)(1+・・・+5^5)(1+11)(1+・・・+13^2)(1+19)(1+・・・+31^2)(1+43)(1+61)
*(1+83)(1+223)(1+331)(1+379)(1+601)(1+757)(1+1201)(1+7019)(1+823543)(1+616318177)
*(1+100895598169)-N

で求められますが、計算しようとは思いませんね!


 GAIさんからのコメントです。(平成29年10月17日付け)

 上記の(コメント)に付け加えたい事があったので追記しておきます。

 このNは、「A046061」のa(168)に対応しています。

 まず、メルセンヌが与えた式は、如何にも素因数分解されたものの様に見えますが、これ
に対し正しい回答を与えるためには、その点を見破ることにあります。

 実は、823543=7^7 の姿で紛れ込んでいる事に気付かないといけません。

 次に、100895598169 ですが、こんな大きな数がこの姿で与えてあれば誰だって素数であ
ると信じ込みます。ところが、この壁もフェルマーはクリアーしてきて、

  100895598169=112303*898423

と結構大きな素数同士の積に成功します。(これを見つけ出すだけでも凄いと思う。)

 後は計算を間違いなくこなし、正解に到る。

 これが、このメルセンヌの出題におけるセンスであり、この落とし穴を見事に見つけ出し、
しかも眼も眩む計算を機械に頼らず紙と鉛筆のみを使って成し遂げるフェルマーの能力の
凄さに感服するものです。


(コメント) ...ということは、求める和は、

(1+・・・+2^36)(1+・・・+3^8)(1+・・・+5^5)(1+11)(1+・・・+13^2)(1+19)(1+・・・+31^2)(1+43)(1+61)
*(1+83)(1+223)(1+331)(1+379)(1+601)(1+757)(1+1201)(1+7019)(1+・・・+7^7)(1+616318177)
*(1+112303)(1+898423)-N

となるのかな?


 DD++さんからのコメントです。(平成29年10月17日付け)

 問題が「総和を求めよ」ではなく「総和の元の数に対する比率を求めよ」であることと、そも
そもこの問題が解いてもらうために作られたものだということが重要ですね。

 まず、3^8 部分を計算してみると、(3^9-1)/2 = (3^3-1)(3^6+3^3+1)/2 = 13*757 で、757

部分は、757+1 = 758 = 2*379 であり、他にも 1201 部分は、1201+1 = 1202 = 2*601 など、

どうも最初から分数で式を作ると綺麗に全部約分されていきそうな気配があります。

 とすると、2^37-1 = 137438953471 の素因数もこの中にあるのだろうという予想がたち、大

きい方の数で試しに割ってみると、 2^37-1 = 137438953471 = 223*616318177 が見つか

ります。ここまでお膳立てされている問題において、

 83+1 = 84 = 2^2*3*7 や 223+1 = 224 = 2^5*7

に含まれる 7 が用意されていないのは不自然と思えば、どこかに 7 を素因数にもつ合成数

がいるだろうと予想がつきますし、616318177+1 = 616318178 = 2*7^3*898423 と、ひとまず

一桁の素因数で割った残りを割り切るものが見当たらないこと、素因数部分の合計で、

100895598169 を超えそうなものが 2^37-1 しかない(そしてこれは 100895598169 で割り切

れない)こと、この二点から 100895598169 が 898423 の倍数なのではないかと推論するこ

とは、私程度でもできたことなので、フェルマーレベルの数学者なら朝飯前だったんじゃない

かと思います。


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