・ 美しい連分数 S.H氏
自然対数の底 e は、2.7182818284・・・ と続く無理数(循環しない無限小数)である。
通常、この値は、
鮒ひと鉢、ふた鉢、・・・
と暗記されるが、余りに味気ない。
実は、連分数に書き直すと、次のような美しい振る舞いをすることを最近知った。
最も、正則連分数展開すると、
となって、美しさが失われるかに見える。
しかし、その先を求めると、
[2;1,2,1,1,4,1,1,6,1,1,8,1,1,10,1,1,・・・]
となるらしい。(これは、連分数の表記法!)
([2;1,2,1,1,4,1,1・・・]までは、手持ちの電卓で確認しましたが、その先の「6,1,1,・・・」に
ついては、現在未確認です。)
これを、じっと見つめると、何となく別な意味での美しい規則性が感じられるから不思議だ!
(追記) 平成17年3月26日 当HPがいつもお世話になっている「らすかる」様より、連分
数展開の誤りのご指摘を頂いた。上記では、既に誤りは訂正済みである。
らすかる 様に感謝いたします。
我々が普通に知っている世界では不規則に並ぶ数字の列も、連分数展開すると鮮やか
に規則的に並ぶということが起きるようだ。
無理数 = 1.4142135623731・・・・・ の正則連分数展開は
[1;2,2,2,2,2,2,2,2,2,2,2,2,2,2,2,2,・・・]
無理数 = 1.73205080756888・・・・・ の正則連分数展開は
[1;1,2,1,2,1,2,1,2,1,2,1,2,1,2,1,2,・・・]
このように、あるところから同じ数字が周期的に繰り返し表れる連分数は、循環連分数と
いわれ、
= =
と表記される。(循環節の始めと終わりにドット(・)を打つのは、普通の数の場合と同様である。)
、 のような無理数は、2次の無理数(整数係数の2次方程式の無理数解)とい
われる。
このとき、次の定理が知られている。
2次の無理数は循環連分数となり、逆に、循環連分数は2次の無理数である。
(Lagrange)
この定理より、自然対数の底 e は、2次の無理数ではないので、循環連分数にはなりえ
ない。
また、よく知られた無理数として、
円周率 π = 3.14159265358979・・・・・
があるが、この正則連分数展開
π = [3;7,15,1,292,1,1,1,2,1,3,・・・]
は、お世辞にも美しいとはいえない。
円周率については、次のような連分数展開が、とても美しい!
(追々記) 黄金比 φ は図形的な美を醸し出すが、実は数そのものでも美しいようだ。
黄金比 φ は、整数係数の2次方程式 φ2−φ−1=0 の解であるので、Lagrange の
定理から、循環連分数となる。
φ2−φ−1=0 より、 φ2=φ+1 なので、
このことから、 φ= となる。 何と、単純で美しいのだろう!
(追記) 黄金比について、当HP読者のK.S.さんよりメールを頂いた。
(平成25年3月5日付け)
φ2−φ−1=0 より、 φ2=φ+1 なので、
φ=1+1/φ
という見方をすれば、連分数表示が得られる。また、
φ=√(1+φ)
という見方をすれば、根号表示が得られる。
(追記) 平成25年5月23日付け
最近の大学入試で連分数を取り上げる大学が増えてきた。2011年の東京大学、2012
年の京都大学など。2013年度も順天堂大学医学部で出題された。来年度もこの流行が続
くのだろうか?
順天堂大学医学部(2013)
このとき、a、b、c、x、y の値を求めよ。
(解) 題意より、 y=1/(2+y) と書けるので、求める2次方程式は、 y2+2y−1=0
よって、 a=1、b=2、c=−1 となる。
このとき、y>0 に注意して、 y=−1+
また、 x=2/(1+y) なので、 x= (終)
京都大学 前期理系(2012)
さいころをn回投げて出た目を順に X1、X2、・・・、Xn とする。さらに
Y1=X1 、Yk=Xk+1/Yk-1 (k=2、・・・、n)
によって、Y1、Y2、・・・、Yn を定める。 (1+)/2≦Yn≦1+ となる確率 pn を求
めよ。
(実験) さいころを1回投げて出た目の数を X1 とする。
このとき、Y1=X1 なので、 (1+)/2≦Y1=X1≦1+ となる確率 p1 を求めるに
は、 1.366・・・≦X1≦2.732・・・ すなわち、 X1=2 のみより、 p1 =1/6
さいころを2回投げて出た目の数を X1 、X2 とする。
このとき、Y2=X2+1/Y1=X2+1/X1 なので、 (1+)/2≦Y2≦1+ となる確率
p2 を求めるには、 1.366・・・≦X2+1/X1≦2.732・・・
このとき、 (X1 ,X2)=(1,1)、(2,1)、(2,2)、(3,2)、(4,2)、(5,1)、(6,1)
なので、求める確率 p2 は、 p2 =7/36
さいころを3回投げて出た目の数を X1 、X2 、X3 とする。
このとき、Y3=X3+1/Y2 、Y2=X2+1/X1 なので、 (1+)/2≦Y2≦1+ となる
確率 p3 を求めるには、 1.366・・・≦X3+X1/(X1X2+1)≦2.732・・・
このとき、
(X1 ,X2 ,X3)
=(1,1,1)、(1,1,2)、(1,2,2)、(1,3,2)、(1,4,2)、(1,5,2)、(1,6,2)、
(2,1,1)、(2,1,2)、(2,2,1)、(2,2,2)、(2,3,1)、(2,4,1)、(2,5,1)、
(2,6,1)、(3,1,1)、(3,2,1)、(3,2,2)、(3,3,2)、(3,4,2)、(3,5,2)、
(3,6,2)、(4,1,1)、(4,2,1)、(4,2,2)、(4,3,1)、(4,4,2)、(4,5,2)、
(4,6,2)、(5,1,1)、(5,2,1)、(5,2,2)、(5,3,2)、(5,4,2)、(5,5,2)、
(5,6,2)、(6,1,1)、(6,2,1)、(6,2,2)、(6,3,2)、(6,4,2)、(6,5,2)、
(6,6,2)
なので求める確率 p3 は、p3 =43/216
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数列 1/6,7/36,43/216,・・・ は、
(1−(1/6))/5,(1−(1/6)2)/5,(1−(1/6)3)/5,・・・
と考えられるので、求める確率 pn は、pn =(1−(1/6)n)/5 と予想される。 (終)
(コメント) 厳密には数学的帰納法で証明するところだが、数列の一般項を予想しただけで
も何点かはもらえるかな?
上記の実験では、そんなに部分点がもらえそうにないので、実験をヒントに解答をでっち上
げてみた。
(解) (1+)/2≦Yn≦1+ となる確率が pn なので、
同様に、Yn<(1+)/2 となる確率を qn、1+<Yn となる確率を rn とおく。
このとき、明らかに、 pn+qn+rn=1 である。ここで、Yn≧1 である。
実際に、n=1のとき、 Y1=X1≧1 で、n=1のとき成り立つ。
Yn≧1と仮定すると、Yn+1=Xn+1+1/Yn≧1 で、Yn+1≧1
以上から、数学的帰納法により、 Yn≧1 が成り立つ。
pn+1 と pn の関係を調べるために、1.366・・・≦Xn+1+1/Yn≦2.732・・・ において、
Yn≧1より、 Xn+1=1 または 2 でなければならない。
Xn+1=1 のとき、 0.366・・・≦1/Yn≦1.732・・・ すなわち、(−1)/2≦1/Yn
から、 Yn≦+1=2.732・・・
よって、1/6の確率で、この場合の確率は、pn+qn となる。
Xn+1=2 のとき、 0≦1/Yn≦0.732・・・ すなわち、1/Yn≦−1 から、
Yn≧(+1)/2
よって、1/6の確率で、この場合の確率は、pn+rn となる。
以上から、 pn+1=(1/6)(pn+qn)+(1/6)(pn+rn)=(1/6)(pn+1)
ここで、 p1 =1/6 である。
よって、 pn+1−1/5=(1/6)(pn−1/5) から、
pn−1/5=(1/6)n-1(p1−1/5)=−(1/5)(1/6)n
すなわち、求める確率は、 pn={1−(1/6)n}/5 となる。 (終)
(コメント) 最初、(1+)/2 と 1+ にすごく違和感を感じたのですが、上記のように
解いてみると、互いに巧妙な関係になっていて、練りに練られた問題になっている
ことに感動させられます。さすが京大ですね!