・対称多項式                           nagi 氏

 (激難!)対称多項式の命題です。

 Aをn×n正値エルミート行列とする。

  S_k(A):=Σ_{1≦i_1<i_2<…<i_k≦n}λ_{i_1}λ_{i_2}…λ_{i_k}
           (但し、1≦k≦n、A:=U^*diag(λ_1,λ_2,…,λ_n)U、Uはn次ユニタリー行列)

k次基本対称多項式と呼ぶ。このとき、

  S_k(A+B)^{1/k}≧S_k(A)^{1/k}+S_k(B)^{1/k}

の証明を教えてください。


 DD++さんからのコメントです。(平成29年2月16日付け)

 Bの正確な定義はなんでしょう。


 nagiさんからのコメントです。(平成29年2月17日付け)

 Bもn×n正値エルミート行列です。


 DD++さんからのコメントです。(平成29年2月17日付け)

 S_k の定義内に、A:=U^*diag(λ_1,λ_2,…,λ_n)U とありますが、これに対し、

 B:=U^*diag(μ_1,μ_2,…,μ_n)U

である(つまり、U が予め定義されていて、S_k は U で対角化可能なものに限って適用する)
のか、

 B:=U'^*diag(μ_1,μ_2,…,μ_n)U'

である(つまり、U の中身は S_k が出てくるたびに自由に取り替えてよい)のか、ということを
聞きたいです。


 nagiさんからのコメントです。(平成29年2月17日付け)

 Uは予め与えられてません。余計な事を書いて混乱させたかもしれません。シンプルにこう
書けばいいでしょうか。

 S_k(A)はn×n正値エルミート行列Aのk次基本対称多項式を表すものとする。

 「A、Bをn×n正値エルミート行列とする。このとき、

  S_k(A+B)^{1/k}≧S_k(A)^{1/k}+S_k(B)^{1/k}

が成立する事を示せ」

 これで、意味が分かるでしょうか?


 DD++さんからのコメントです。(平成29年2月17日付け)

 対角化の内容は気にせず単純に固有値だけで、ということですね。考えてみようと思います。

 しかし、k=1 の場合は自明として、k≧2 は n=k=2 の場合ですら一筋縄ではいきませんね。
√det(A+B) ≧ √det(A) + √det(B) という意味になるわけですが、根号以上に A+B という
のが厄介……。

 一般の話をすると、AとBそれぞれ固有値を指定した場合(AやBの内容はいろいろあるが、
右辺は一定になる)、

(1) AとBそれぞれ固有値を左上から小さい順に並べた対角行列にした場合が左辺が最も
  小さいこと
(2) その場合A+Bの固有値が明らかで、ヘルダーの不等式やミンコフスキーの不等式、マク
  ローリンの不等式あたりにより不等号が成立すること

の2つをそれぞれ証明するのかな、という感覚です。しかし片方ずつでも超難解っぽいですね。


 DD++さんからのコメントです。(平成29年2月18日付け)

 証明完了はしていませんが、最初に考えた方向性とは全く違うところから肉薄することに成
功しましたので中間報告。以下の命題を考えます。

「C、D は n×n 正値エルミート行列で、S_k(C) = S_k(D) = 1 とする。このとき、0<x<1 を満た
す任意の実数 x について、次が成立する。

  S_k( x*C+(1-x)*D ) ≧ 1」

 これが、元の命題と同値のようです。

[元 => これ]  元の命題の不等式で、A = x*C、B = (1-x)*D とおくと、

  S_k( x*C+(1-x)*D )^(1/k) ≧ S_k(x*C)^(1/k) + S_k((1-x)*D)^(1/k)

 ここで、x*C の各固有値は C の固有値の x 倍なので、S_k(x*C) = x^k * S_k(C) = x^k

同様に、S_k((1-x)*D) = (1-x)^k

よって、右辺 = x + (1-x) = 1 なので、両辺 k 乗してこの命題は成立します。

[これ => 元]  (S_k(A))^(-1/k)*A の各固有値は A の固有値の (S_k(A))^(-1/k) 倍なので、

  S_k( (S_k(A))^(-1/k)*A ) = (S_k(A))^(-1) * S_k(A) = 1

 同様に、S_k( (S_k(B))^(-1/k)*B ) = 1

 よって、C = (S_k(A))^(-1/k)*A, D = (S_k(B))^(-1/k)*B とすることができます。

さらに、x = (S_k(A))^(1/k) / { (S_k(A))^(1/k) + (S_k(B))^(1/k) } とすると、

  S_k( (A+B) / { (S_k(A))^(1/k) + (S_k(B))^(1/k) } ) ≧ 1

  S_k(A+B) / { (S_k(A))^(1/k) + (S_k(B))^(1/k) }^k ≧ 1

 分母を払って両辺 1/k 乗すると元の命題が示されます。

ということで、この S_k( x*C+(1-x)*D ) ≧ 1 という重み付き平均の不等式を示せばいいこと
になりました。

 さらに言えば、この C と D の非対角成分はすべて一致している(もちろん重み付き平均も
一致)という制限をつけても元の命題と同値です。

 ただの x の k 次多項式で、x=0 のときと x=1 のときは等号が成立するので、この間で常に
左辺の第二次導関数≦0 が成り立てばおしまい……なんですが、まずそれが真かどうかに
自信なし。とはいえ ^(1/k) という厄介な要素の片方が消えたので、元の命題より証明は楽か
な、と思います。さて、ここからどうしよう。


 at さんからのコメントです。(平成31年4月27日付け)

 元々の質問である次の問い:

 S_k(A):=Σ_{1≦i_1<i_2<…<i_k≦n}λ_{i_1}λ_{i_2}…λ_{i_k}
         (但し、1≦k≦n、A:=U^*diag(λ_1,λ_2,…,λ_n)U、Uはn次ユニタリー行列)

は、n×n正値エルミート行列Aのk次基本対称多項式を表すものとする。

 A、Bを n×n正値エルミート行列とする。このとき、

  S_k(A+B)^{1/k}≧S_k(A)^{1/k}+S_k(B)^{1/k}

が成立する事を示せ。


の解答が、以下のファイルにありました。

INEQUALITIES FOR SYMMETRIC FUNCTIONS AND HERMITIAN MATRICES

 このファイルの7ページ目にある、THEOREM 3 が解答になると思います。

 THEOREM 3 の証明では、3ページ目にある THEOREM 2 と、6ページ目にある
min f = Er(α1,...,αk ) という事実を使っているようです。


  以下、工事中!


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