・不思議な関係 S.H氏
次の等式
275+845+1105+1335=1445
は、1966年に発見されたものである。実際に確かめてみると、
275 | = | 1 | 4 | 3 | 4 | 8 | 9 | 0 | 7 | ||||
845 | = | 4 | 1 | 8 | 2 | 1 | 1 | 9 | 4 | 2 | 4 | ||
1105 | = | 1 | 6 | 1 | 0 | 5 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
1335 | = | 4 | 1 | 6 | 1 | 5 | 7 | 9 | 5 | 8 | 9 | 3 | |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | |||||||||||||
1445 | = | 6 | 1 | 9 | 1 | 7 | 3 | 6 | 4 | 2 | 2 | 4 |
となり、成り立っている。(計算には、ExcelのVBAを利用)
このような等式は、どのようなきっかけで発見されたのだろうか?
(追記) xk+yk+・・・+zk=Nk のような形の不定方程式は、フェルマーの問題の延長
で昔から考えられてきたようである。(もちろん、文字は全て自然数とする。)
中でも有名なものは、 x3+y3+z3=N3 という形の方程式らしい。
この解は、無数にあることが知られている。
直ぐ思いつくものとしては、 ( x , y , z )=( 3 , 4 , 5 )
の場合で、このとき、N=6
である。(→ 参考:ピタゴラスより美しい?)
あまり自明でないものとしては、例えば ( x , y , z )=( 25 ,
31 , 86 ) の場合だ
ろう。この場合、N=88 である。
何れも一つ解が見つかれば、その比例定数倍したものも解になるので、解は無数にある
というわけである。
この形の方程式の一般解が、オイラーにより与えられている。
講談社ブルーバックス 現代数学小事典(寺阪英孝 編)に、その記載(p.167)がある。
ただ、その記載の通りに計算すると誤った答が導かれるので、多分誤植があるのだろう。
いくつか実験をして、次の式が正しいものと判断される。
x=-(a2+3b2)2+(c2+3d2)(ac+3bd+3ad-3bc)
y= (a2+3b2)2-(c2+3d2)(ac+3bd-3ad+3bc)
z= (c2+3d2)2-(a2+3b2)(ac+3bd+3ad-3bc)
N= (c2+3d2)2-(a2+3b2)(ac+3bd-3ad+3bc)
表計算ソフト Excel のセルに数式を設定して、いろいろ遊んでみたのが下図である。
さて、上記のオイラーが与えたと言われる数式であるが、
x3+y3+z3=N3
が本当に成り立つのか、確認しようとする気が失せるほど長い。オイラーは、どのようなア
イデアのもとに、この数式を発見したのだろうか?むしろ、そちらの方に関心がある。
(追記) 平成18年5月14日 広島工業大学の大川研究室より、この話題について、いろ
いろお教えいただいた。
良く本に載っているオイラーの式と言われる物が間違っている場合があるということであ
るが、確かに私がインターネットで検索したHPの中にも、式の通り計算しても結果が得ら
れない場合があった。(実際に、確認済み)式の複雑さからか、なかなか検証困難なため
だろうか?
また、HPサイト「コンピュータ数論」をご紹介いただいた。上記の話題についてよくまとめ
られていて大いに参考になった。そこでは、
x ,y ,z ,N を整数とするとき、
x3+y3+z3=N3 の既約パラメータ解は無数に存在する
ことが示されている。とても感動的な結果である。
また、x3+y3+z3=N3 の解として、ラマヌジャンは次の式を残しているようだ。
x=3a2+5ab-5b2
y=4a2-4ab+6b2
z=5a2-5ab-3b2
N=6a2-4ab+4b2
オイラーの式と比べて、その簡素さにただ驚くばかりである。
また、オイラーの時代には、 x4+y4+z4=N4 には解はないだろうと予想されていたら
しいが、反例(Elkies 1987年)が発見されたという。Frye による最小解は、
958004+2175194+4145604=4224814
であるそうだ。
(追記) 平成18年5月17日 広島工業大学の大川研究室からの連絡で、上記のオイラー
の式が正しいことが確認された。数式処理ソフトMathematicaを用いられたそうだ。
手計算で確認しようと思えば、次のように考えるのが筋だろう。
A=a2+3b2 、B=ac+3bd 、C=c2+3d2 、D=3ad-3bc とおくと、
x=-A2+C(B+D) 、 y= A2-C(B-D)
z= C2-A(B+D) 、 N= C2-A(B-D)
このとき、 x+y = 2CD 、 xy = C2D2-(A2-BC)2 なので、
x3+y3 = (x+y)3-3xy(x+y)
= 8C3D3-6CD(C2D2-(A2-BC)2)
= 2C3D3+6CD(A2-BC)2
同様にして、 N-z = 2AD 、 Nz = (C2-AB)2-A2D2 なので、
N3-z3 = (N-z)3+3Nz(N-z)
= 8A3D3+6AD((C2-AB)2-A2D2)
= 2A3D3+6AD(C2-AB)2
これらが等しいことを言えばいいのだが、...。
つまり、 2C3D3+6CD(A2-BC)2=2A3D3+6AD(C2-AB)2 から
(A3-C3)D3=3D(C(A2-BC)2-A(C2-AB)2)
=3D(CA4-2A2BC2+B2C3-AC4+2A2BC2-A3B2)
=3D(CA4+B2C3-AC4-A3B2)
=3D(AC(A3-C3)-B2(A3-C3))
=(A3-C3)(3AC-3B2)D
が成り立つことを示せばいいのだが、...。
ここで、
3AC-3B2=3(a2+3b2)(c2+3d2)-3(ac+3bd)2
=3a2c2+9a2d2+9b2c2+27b2d2-3a2c2-18abcd-27b2d2
=(3ad-3bc)2=D2
なので、 (A3-C3)D3=(A3-C3)(3AC-3B2)D が成り立つ。
よって、x3+y3 = N3-z3 より、 x3+y3+z3=N3 であることが言える。
(コメント) 厳密な証明とは言えないが、何とか強引に、成り立つことの確かさを確認する
ことができて「ホッ!」としている。
(追記) 平成18年5月18日、当HPがいつもお世話になっている、らすかるさんから、ラマ
ヌジャンの式について、その証明をいただいた。
風邪を引いて体調が絶不調で、かつ超多忙(従って、休めない...(T.T) )ということで、
整理が覚束なく、この日のアップになってしまいました。らすかるさん、申し訳ないです。
x=3a2+5ab-5b2 、 y=4a2-4ab+6b2
z=5a2-5ab-3b2 、 N=6a2-4ab+4b2
について、x3+y3+z3=N3 が成り立つことを示す。
高々3乗の計算なので腕力があれば何でもないが、らすかるさんは次のように工夫された。
(証明) u=(a+b)/2、 v=(a-b)/2 とおいて、それぞれの変数に代入して整理すると、
x=3u2+16uv-7v2 、 y=6u2-4uv+14v2
z=-3u2+16uv+7v2 、 N=6u2+4uv+14v2
これより、
x+z=32uv 、 xz=(16uv)2-(3u2-7v2)2
N-y=8uv 、 Ny=(6u2+14v2)2-(4uv)2
なので、
xz(x+z)+Ny(N-y)
=32uv{(16uv)2-(3u2-7v2)2}+8uv{(6u2+14v2)2-(4uv)2}
=32uv{(16uv)2-(3u2-7v2)2}+32uv{(3u2+7v2)2-(2uv)2}
=32uv{(16uv)2-(2uv)2}+32uv{(3u2+7v2)2-(3u2-7v2)2}
=32uv・252(uv)2+32uv・84(uv)2
=10752(uv)3
=29・21(uv)3
ところで、
(x+z)3-(N-y)3=(32uv)3-(8uv)3=215(uv)3-29(uv)3=29・63(uv)3
よって、
(x+z)3-(N-y)3=x3+y3+z3-N3+3{xz(x+z)+Ny(N-y)}
より、
x3+y3+z3-N3=29・63(uv)3-3・29・21(uv)3=0
したがって、 x3+y3+z3=N3 が成り立つ。(証終)
(コメント) とても洗練された証明で、分かりやすいですね!高校1年レベルの実力テスト
問題に使えそうな雰囲気です。
GAI さんから、上記に関連した話題の提供です。(平成26年1月19日付け)
237892+619452+428642=428682+619432+237872 37892+19452+28642=28682+19432+37872 7892+9452+8642=8682+9432+7872 892+452+642=682+432+872 92+52+42=82+32+72 |
1237892+5619452+6428642=2428682+7619432+3237872 123782+561942+642862=242862+761942+323782 12372+56192+64282=24282+76192+32372 1232+5612+6422=2422+7612+3232 122+562+642=242+762+322 12+52+62=22+72+32 |
どうやって探し出すんだろう?
攻略法さんからのコメントです。(平成26年1月19日付け)
A+B-C=0 のとき、(X-A)2+(X-B)2+(X+C)2=(X+A)2+(X+B)2+(X-C)2 が成り立つので、
1+2-3=0 より、 (X-1)2+(X-2)2+(X+3)2=(X+1)2+(X+2)2+(X-3)2 において、x=6 とおくと、
52+42+92=72+82+32
同様に、2+21-23=0 より、 (X-2)2+(X-21)2+(X+23)2=(X+2)2+(X+21)2+(X-23)2 において、
x=66 とおくと、 642+452+892=682+872+432
2+77-79=0 より、 (X-2)2+(X-77)2+(X+79)2=(X+2)2+(X+77)2+(X-79)2 において、
x=866 とおくと、 8642+7892+9452=8682+9432+7872
2+921-923=0 より、 (X-2)2+(X-921)2+(X+923)2=(X+2)2+(X+921)2+(X-923)2 において、
x=2866 とおくと、 28642+19452+37892=28682+37872+19432
2+19077-19079=0 より、
(X-2)2+(X-19077)2+(X+19079)2=(X+2)2+(X+19077)2+(X-19079)2 において、
x=42866 とおくと、 428642+237892+619452=428682+619432+237872
類題 次の式を計算してみてください。
(a) 6428642 + 1237892 + 5619452 - (2428682 + 7619432 + 3237872)
(b) 428642 + 237892 + 619452 - (428682 + 619432 + 237872)
(c) 28642 + 37892 + 19452 - (28682 + 19432 + 37872)
(d) 8642 + 7892 + 9452 - (8682 + 9432 + 7872)
(e) 642 + 892 + 452 - (682 + 432 + 872)
(f) 42 + 92 + 52 - (82 + 32 + 72)
(g) 6428642 + 1237892 + 5619452 - (2428682 + 7619432 + 3237872)
(h) 642862 + 123782 + 561942 - (242862 + 761942 + 323782)
(i) 64282 + 12372 + 56192 - (24282 + 76192 + 32372)
(j) 6422 + 1232 + 5612 - (2422 + 7612 + 3232)
(k) 642 + 122 + 562 - (242 + 762 + 322)
(l) 62 + 12 + 52 - (22 + 72 + 32)
(m) 6428642 + 1237892 + 5619452 - (2428682 + 7619432 + 3237872)
(n) 42862 + 23782 + 61942 - (42862 + 61942 + 23782)
(o) 282 + 372 + 192 - (282 + 192 + 372)
(答え)はすべて0。
(コメント) 不思議な関係ですね!
当HP読者のHN「K.F.」さんより、メールでご投稿いただきました。
(令和4年4月22日付け)
私は、上記の後半に載っている式を、岩波書店の『偏愛的数学 驚異の数』の中で見つけ
ました。
123789^2 + 561945^2 + 642864^2 = 242868^2 + 761943^2 + 323787^2
自分でもなんとか作れないものかと試みた結果、いくつかできたのですが、うまく説明でき
ません。「不思議な関係」の式の作り方を、わかりやすく解説した文献やサイトを探していま
す。よろしくお願いします。
(コメント) K.F.さん、ご投稿ありがとうございます。メールにWordファイルが添付されてい
ましたが、セキュリティの関係で開けることが出来ませんでした。悪しからずご了承
ください。
K.F.さんからのコメントです。(令和4年5月12日付け)
ワードが開けなかったとのことですので、中身を再送信しました。
123789^2 + 561945^2 + 642864^2 = 242868^2 + 761943^2 + 323787^2
について、まず、数値を縦に並べ、上 (左辺)と下 (右辺)を見比べると、2つのことがわかり
ます。
1 2 3 7 8 9 ① 万・千・百・十の位の数字は上下同じで、3つの数字の差が一定
5 6 1 9 4 5 万の位: 2・6・4 と 4・6・2、 千の位: 3・1・2 と 2・1・3
6 4 2 8 6 4 百の位: 7・9・8 と 8・9・7、 十の位: 8・4・6 と 6・4・8
2 4 2 8 6 8 ② 十万・一の位の数字は、3つの和が上下等しく、2乗の和も等しい
7 6 1 9 4 3 十万の位: 1 + 5 + 6 = 2+ 7 + 3 、 1² + 5² + 6² = 2² + 7² + 3²
3 2 3 7 8 7 一の位: 9 + 5 + 4 = 8+ 3 + 7 、 9² + 5² + 4² = 8² + 3² + 7²
そこで、①、②のような数字の例を探し出しました。
③ 3つの数字の差が一定の例
1・2・3、 1・3・5、 1・4・7、 1・5・9 2・3・4、 2・4・6、 2・5・8、 3・4・5
3・5・7、 3・6・9、 4・5・6、 4・6・8 5・6・7、 5・7・9、 6・7・8、 7・8・9
④ 3つの数字の和が等しく、2乗和も等しい例
3²+3²+0²=1²+1²+4²、 2²+2²+5²=1²+4²+4²、 0²+4²+5²=6²+2²+1²、 5²+5²+2²=3²+3²+6²
1²+5²+6²=7²+3²+2²、 0²+6²+6²=8²+2²+2²、 0²+5²+7²=8²+3²+1²、 6²+6²+3²=4²+4²+7²
0²+5²+8²=9²+2²+2²、 7²+6²+2²=3²+4²+8²、 0²+7²+7²=9²+4²+1²、 7²+7²+1²=3²+3²+9²
1²+6²+8²=2²+4²+9²、 8²+5²+5²=7²+7²+4²、 3²+7²+8²=4²+5²+9²、 8²+8²+5²=6²+6²+9²
③と④の例を組み合わせて、新しい式を作りました。
上 (左辺) 下 (右辺)
1 2 3 7 8 9 十万の位: 1・6・8 と 2・4・9
6 2 7 8 5 4 万の位: 2・2・5 と 1・4・4
8 5 8 9 5 2 千の位: 3・7・8 と 4・5・9
2 1 4 7 7 8 百の位: 7・8・9 と 7・8・9
4 4 5 8 7 6 十の位: 8・5・5 と 7・7・4
9 4 9 9 4 1 一の位: 9・4・2 と 8・6・1
これより、
123789²+ 627854²+ 858952²= 214778²+ 445876²+ 949941²
数値を逆にしても式が成立します。
987321²+458726²+ 259858²= 877412²+ 678544²+ 149949²
桁数がもっと多くても式が作れます。
123456789²+ 572347235²+ 637892674²= 756783453²+361238347²+ 215674898²
987654321²+ 532743275²+ 476298736²= 354387657²+743832163²+ 898476512²
#ネット検索すると、様々な国の言葉で「不思議な関係」の式を紹介していますが、
987321²+532275²+・・・のように、数値を逆にしても式が成立することに言及したサイトは見
つけられませんでした。
(コメント) K.F.さんの数式の作り方から「本当に出来るのかな?」という思いがあったの
ですが、成立しているということは正に「不思議な関係」ですね。再度Wordの内容
を送信していただいたK.F.さんに感謝します。
以下、工事中