・ 鏡の不思議                    S.H氏

 鏡と正対すると、左右は逆になるのに、上下はもとのままである。これは、直立しても、横に
なっても同じである。このことを不思議に思ったことがある人は、多分たくさんいるに違いない。
 このことは、目が左右についているからとか、いろいろな本で、その理由は説明されている。
このことを、数学的に考えてみようと思う。


         

 上図のように、点P のX軸に関する対称点を P’とすると、点P が鏡(X軸)に対面したときに
見ているのは、実際は、点P’を見ている。このような点を、点Pの鏡像という。
 また、線分QRが鏡(X軸)と平行な場合には鏡像Q’R’も鏡(X軸)と平行な線分で、しかも、
その向きは変わらない。
 このことを空間内で考察すると、鏡の不思議が解明できる。


      

 互いに直角に交わる直線により、空間内での上下、左右、前後の関係が表わされる。
この3本の直線の平面(鏡)による鏡像もまた、3本の互いに直角に交わる直線となるが、そ
の向きに注目すると、面白い現象が起きている。
 すなわち、3つの向きのうち、ただ一つだけの向きが逆向きになり、他の2つの向きは同じ
である。
 たとえば、上図のような場合、上下と前後の向きは同じであるが、左右の向きが逆向きに
なっている。
 上図だと、左右の向きが平面(鏡)と直角になっていて、日常の感覚と違和感を覚えるが、
空間内での上下、左右、前後の関係のうち、なぜ左右のみが逆向きになるのかは理解でき
る。
   (参考文献:矢野健太郎 著  鏡(数学100の問題より) (日本評論社))

(追記)
 平成16年5月14日付けで、ハンドルネーム「amitake」さんという方から、この話題につ
いてメールを頂戴した。
 鏡の不思議さを明快に説明されたもので、私なりに解釈して、以下のように補足したいと
思う。上記本文の不備をご指摘いただいたamitakeさんに感謝いたします。
 上記本文で示したかったことは、
 空間内での上下、左右、前後の関係のうち、鏡に相対する向きだけが変化し、それ
以外は変化しない!

という点である。
 それで、鏡を通すと左右が入れ替わるということを説明するために、便宜上、通常とは異な
る配置にしてある。そのために多少、この図で誤解が生じたようである。
 この鏡の不思議に対して、amitakeさんのお考えは次のようであると拝察される。
 鏡を前にして、自分の目より右にあるものは右にあるし、上にあるものは上にある。唯一異
なることは、鏡に対して、自分と鏡の像が向き合っていることだけである。
 このときの向き合う関係から、自分の右肩は虚像の左肩と一致する。右肩から発せられた
光線は鏡に反射して目に届くが、下図のように、それがあたかも虚像の左肩から発せられた
ものと認識される。同様のことが、自分の左肩でも起こる。


        

 このようにして、鏡の像が左右逆になるということが説明される。

(追々記) 広島工業大学の大川研究室より、次のHPの存在をお教えいただいた。
      永井俊哉ドットコム : 『 鏡像はなぜ左右だけ逆なのか 』
     この話題について、とても詳しく述べられている。大変参考になりました。

(追記) 平成20年6月15日付け
 今日の「熱血!平成教育学院」(フジTV系)では、「理科の時間」に、
 鏡を移動させて見方を変えると、上下が逆に見えることがある。
それは、どんな場合か?

という問題が出題された。これは、鏡の特性 :
  空間内での上下、左右、前後の3つの向きのうち、ただ一つだけの向きが逆向き
 になり、他の2つの向きは同じである

を知っていれば、
   鏡を頭の上方に移動させ、見上げる または 鏡を足下に置いて見下ろす
が正解であることが直ちに分かる。


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