・偶関数の分解                         DD++ 氏

 ここ数日ちょっと気になっていることがあるのですが、どうにも自力ではスッキリしないので
協力を求めます。

 任意の関数 f(x) に対し、g(x) = f(x)+f(-x) とすると、g(x) は偶関数になります。逆に、任意
の偶関数 g(x) に対し、f(x) = (1/2) g(x) とすると、g(x) = f(x)+f(-x) となる f(x) の一例が容易
に得られます。

 これに類することが掛け算でできないか考えてみると、意外にも足し算と比べてずっと話
が込み入っていることがわかります。

 任意の関数 f(x) に対し、g(x) = f(x)*f(-x) とすると、g(x) は偶関数になります。しかし、任意
の偶関数 g(x) に対し、f(x) = √g(x) とすると、g(x) = f(x)*f(-x) となる f(x) の一例が得られる
かといえば、そうでもありません。
(以下、与えられた偶関数 g(x) から g(x) = f(x)*f(-x) となる実関数 f(x) の一例を求めること
を「分解」と呼ぶことにします)

 例えば g(x) = 1+x^2 では、f(x) = √(1+x^2) でうまく分解できます。しかし、g(x) = 1-x^2 の
場合、f(x) = √(1-x^2) ではうまく分解できていません。

 というのは、g(2) = -3 であるのに対し、f(2) や f(-2) は定義域外なので値が存在せず、
g(2) = f(2)*f(-2) は成立しません。

 また、f(x) = 1-x^2 (x>0 のとき)、 1 (x≦0 のとき) とすれば一応分解できていますが、g(x)
が2回微分可能であるのに対し、f(x) は2回微分不可能になってしまっています。

 g(x) = 1-x^2 と同じだけ微分可能なものに分解するには、

  f(x) = 1-x や f(x) = (1+x^3)/(1+x+x^2)

などと分解する必要があります。さらには、g(x) = x^2-1 の場合は、微分可能性や連続性を
諦めてもなお分解は不可能です。

 さて、これについて、以下を考えています。どうにかスッキリ解決できないでしょうか?

(1) f(x) の微分可能性や連続性を全く気にしなければ、g(x) が分解可能な必要十分条件は、
  g(0)≧0 である。

  本当でしょうか?(真なら証明し、偽なら反例を挙げてください)

(2) g(x) が二次偶関数、つまり g(x) = Ax^2+B (A≠0) である場合に、任意の回数微分可能
  な f(x) に分解可能である必要十分条件は何でしょう?

(3) g(x) が四次偶関数、つまり g(x) = Ax^4+Bx^2+C (A≠0) の場合に、任意の回数微分可
  能な f(x) に分解可能である必要十分条件は何でしょう?

(4) 同様に、 g(x) が任意の多項式偶関数の場合に、任意の回数微分可能な f(x) に分解可
  能である必要十分条件は何でしょう?

(5) g(x) がn回微分可能な任意の偶関数の場合に、n回微分可能な f(x) に分解可能である
  必要十分条件は何でしょう?


 らすかるさんからのコメントです。(平成28年10月23日付け)

 (5)について、g(0)>0のときは、以下のようにすれば条件を満たすf(x)が作れると思います。

 f(x)=g(x)/h(-x) (x≦0 のとき) 、h(x) (x≧0 のとき)

  ただし、h(x)は、n+2次多項式Σ[k=0〜n+2]a[k]x^k で、

 a[0]=√g(0)
 a[k](1≦k≦n)は、g(x)/h(-x)とh(x)のx=0における k 階微分係数が一致するように定める。
 a[n+1]=0
 a[n+2]は、h(x)が正値関数になるような十分大きい値(必要なければ0でよい)。

 二次式について(n=2として)具体的に計算してみると、

 g(x)=ax^2+b (a>0、b>0)のとき、h(x)=ax^2/(2√b)+√b となりますので、

f(x)=(ax^2+b)/{ax^2/(2√b)+√b} (x≦0 のとき) 、ax^2/(2√b)+√b (x≧0 のとき)

 a<0 の場合は、h(x)が正値関数になるように四次の項を加え、例えば、

f(x)=(ax^2+b)/{a^2x^4/(8b√b)+ax^2/(2√b)+√b} (x≦0 のとき)
   a^2x^4/(8b√b)+ax^2/(2√b)+√b (x≧0 のとき)

のようにすればOKです。
(共通化するために、a>0の場合も四次の項を加えても問題ありません)

 具体例としては、g(x)=3x^2+4のとき、

 f(x)=(3x^2+4)/(3x^2/4+2) (x≦0 のとき) 、3x^2/4+2 (x≧0 のとき)

 g(x)=-3x^2+4のとき、

 f(x)=(-3x^2+4)/(9x^4/64-3x^2/4+2) (x≦0 のとき) 、9x^4/64-3x^2/4+2 (x≧0 のとき)

# さて、g(0)=0 の場合はどうしましょうか。


 DD++さんからのコメントです。(平成28年10月23日付け)

 なるほど、やはり g(0)=0 を分離した方が見通しがよかったですか。ところで疑問点を2つ。

 1つめに、その a[k] を決める方法ですが、必ず解が存在する保証はできるのでしょうか?
2つめに、正値関数となるよう a[n+2] を決めるという点で、nが奇数の場合は a[n+1] で代用
しちゃって問題ないんでしょうかね?

 g(x) = (1+x)^4 (x≦-1 のとき)、0 (-1<x<1 のとき) 、(1-x)^4 (1≦x のとき) のように微分
は3回まで可能だけど4回目は不可能な偶関数というのもあります。

 あと、ついでに (6) を追加。

(6) g(x) が任意の回数微分可能な任意の偶関数の場合に、任意の回数微分可能な f(x) に
  分解可能である必要十分条件は何でしょう?

 (5) が解決すればこれも同じ手段で自動的に解決するだろうと思っていた私が浅はかでし
た。x^(n+2) 項を持ち出すなんて方法があったとは。


 らすかるさんからのコメントです。(平成28年10月23日付け)

 具体的に少しやってみると、

 {g/h}'=(g'h-gh')/h^2=h' から、h'=g'h/(h^2+g)

 {(g'h-gh')/h^2}'=(g''h^2-ghh''-2g'hh'+2gh'^2)/h^3=h''から、h''=(g''h^2-2g'hh'+2gh'^2)/{h(h^2+g)}

 {(g''h^2-ghh''-2g'hh'+2gh'^2)/h^3}'
=(g'''h^3-3g'h^2h''+6ghh'h''-gh^2h'''-3g''h^2h'+6g'hh'^2-6gh'^3)/h^4=h''

'から、h'''=(g'''h^3-3g'h^2h''+6ghh'h''-3g''h^2h'+6g'hh'^2-6gh'^3)/{h^2(h^2+g)}

 これでは項が増えてきて見通しが悪いので、やり直して、

 {g/h}'=(g'h-gh')/h^2

 ここで、h'を含まない部分をi1とおくと、{g/h}'=i1-(g/h^2)h'

 {i1-(g/h^2)h'}'=i1'-(g'h-2gh')h'/h^3-(g/h^2)h''

 ここで、h''を含まない部分をi2とおけば、{i1-(g/h^2)h'}'=i2-(g/h^2)h''

 {i2-(g/h^2)h''}'=i2'-(g'h-2gh')h''/h^3-(g/h^2)h'''

 ここで、h'''を含まない部分をi3とおけば、{i2-(g/h^2)h''}'=i3-(g/h^2)h'''

 つまり、g/hのm階微分は、im-(g/h^2)h^(m)という形になります。

 im-(g/h^2)h^(m)=h^(m)から、h^(m)=imh^2/(h^2+g) となり、h(0)^2+g(0)=2g(0)>0 なので、
h^(m)(0)は必ず存在することになると思います。

 本当は、g(x)/h(x)でなく、g(x)/h(-x)の微分ですが、h(x)は偶関数になるみたいなので、
g(x)/h(x)で考えて問題ないようです。

 あと、nが奇数の場合は、a[n+1]で良いと思います。考えを進めている間に、なぜかnが偶
数と思い込んでいました。

 (6)が追加されるのは想定内でしたが、私の方法では無理ですね。


 DD++さんからのコメントです。(平成28年10月23日付け)

 h(0)^2+g(0)=2g(0)>0なので、h^(m)(0)は必ず存在することになると思います。

 本当は、g(x)/h(x)でなく、g(x)/h(-x)の微分ですが、h(x)は偶関数になるみたいなので、
g(x)/h(x)で考えて問題ないようです。


と、私も最初は思っていたのですが、案外そうでもないようです。らすかるさんの例示された
g(x) = 3x^2+4 (n=2と思うことにする)に対し、h(x) = x^2+x+2 でも f(x) は x=0 で2回まで(とい
うか3回まで)微分可能です。

 偶関数と決めつけず、h(x) と h(-x) の違いを気にしてやると、hを微分してやるときにマイ
ナスが出る関係で、奇数次では h(0)^2+g(0) ではなく h(0)^2-g(0) で割ることになってしまう
んですよ。

 これは0の可能性があるどころか、必ず0になります。幸いにも a[1] を決めるときには、
0a[1]=0 となるので任意に決めていいというオチになるんですが、a[3] や a[5] を決める際に
も同じかどうかはあまり自明ではないのではないかと思います。


 らすかるさんからのコメントです。(平成28年10月23日付け)

 それならば、最初からh(x)を偶関数限定にして、

 f(x)=g(x)/h(x) (x≦0 のとき) 、h(x) (x≧0 のとき)

とすれば問題はなくなりますね。


 DD++さんからのコメントです。(平成28年10月23日付け)

 なるほど、確かに一例求めればいいだけですから決め打ちでいい話でした。そして頑張っ
て微分しなくても、h(x)h(-x) の n次までが、g(x) のn次テイラー多項式と一致するように取る
だけでよいようですね。偶関数に限るなら h(x)^2 でよし。

 例として、g(x) = 4+3x^2 (並べ替えました)の場合、(2+(3/4)x^2+4次以上)^2 = 4+3x^2+4次
以上 と次数が低い方から順に作って、4次以上は正値偶関数になるように適当に入れれば
よし。

 これなら、h(0)≠0 つまり g(0)>0 でさえあれば、逐次1次方程式にしたときにそれぞれ係
数が0にならない保証も微分よりわかりやすいです。


 DD++さんからのコメントです。(平成28年10月24日付け)

 らすかるさんの、より高次で抑える発想を見て、ちょっと閃きました。

 g(x) に対し、g(x)+u(x)^2 ≧ 0 が常に成り立つような奇関数 u(x) を用意して、

  f(x) = u(x) + √(g(x)+u(x)^2)

とすれば、f(x)*f(-x) = g(x) になります。

 g(0)>0 である多項式関数なら、u(x) はその半分以上の次数を持ち十分大きな係数であ
る多項式奇関数で、g(x)+u(x)^2 の各係数が全部0以上になるようにすればOK。

 懸念は2つ。

 まず、g(x) が多項式関数でなくてもこのような u(x) は必ず存在するのか、という点。もちろ
ん好きなだけ微分できる関数に限ります。

 そして、g(x)+u(x)^2 = 0 となる点での微分可能性の問題。もちろん x=0 以外の点は u(x)
の取り方を変えればそもそも0になること自体を回避できると思います。しかし、g(0)=0 であ
る場合に、x=0 で微分可能かどうか、となると……さてどうでしょうか。


 りらひいさんからのコメントです。(平成28年10月26日付け)

 DD++さんの方法を参考にして、多項式関数に限定して少し考えてみました。

 g(x)が多項式関数のとき、半分ほどはできそうです。もう半分は大変そうな気がします。途
中までしかいってないですけど、ちょっと書き込んでみます。間違っているかもしれませんが。

(ア) g(x) の最低次数が 4m (m=0,1,2,…) で、その係数が正のとき

 G(x) を g(x) = x^(4m)*G(x) となる多項式関数とすると、G(0)>0 となります。G(x)に対し、
G(x)+u(x)^2>0 が常に成り立つような奇関数 u(x) を用意して、

  f(x) = x^(2m) * (u(x) + √(G(x)+u(x)^2))

とすれば、f(x)*f(-x) = g(x) になります。

(イ) g(x) の最低次数が 4m+2 (m=0,1,2,…) で、その係数が負のとき

 G(x) を g(x) = -x^(4m+2)*G(x) となる多項式関数とすると、G(0)>0 となります。G(x)に対し、
G(x)+x^2*v(x)^2>0 が常に成り立つような偶関数 v(x) を用意して、

  f(x) = x^(2m) * (x^2*v(x) + x*√(G(x)+x^2*v(x)^2))

とすれば、f(x)*f(-x) = g(x) になります。

(ウ-1) g(x) の定数項が負のとき

 g(x)=f(x)*f(-x) と分解できると仮定する。x=0 を代入して、g(0) = f(0)^2 ≧ 0 で、これは
g(0)<0 と矛盾する。よって、分解できない。

(ウ-2) g(x) の最低次数が 4m (m=1,2,…) で、その係数が負のとき

および

(エ) g(x) の最低次数が 4m+2 (m=0,1,2,…) で、その係数が正のとき

 これらの場合は少なくとも解析関数には分解できなさそうな気がします。

 g(x) = f(x)*f(-x) と分解できて、f(x)が解析関数であると仮定する。f(x) が x=0 近傍で、

  f(x) = Σ[k=0〜∞]a[k]x^k

と展開されるとすると、f(x)*f(-x) = Σ[k=0〜∞]Σ[i=0〜k](-1)^i*a[i]*a[k-i]x^k となり、この
展開が多項式 g(x) と一致することになる。

 g(0)=0 より、a[0]^2=0 なので a[0]=0 を代入して、

  g(x) = Σ[k=2〜∞]Σ[i=1〜k-1](-1)^i*a[i]*a[k-i]x^k

[ (エ)のm=0の場合はここまでで下へ飛ぶ。 ]

 g(x)のx^2の係数は 0 なので、a[1]^2=0 より a[1]=0 を代入して、

  g(x) = Σ[k=4〜∞]Σ[i=2〜k-2](-1)^i*a[i]*a[k-i]x^k

 以下同様にしていくと、g(x)の最低次数の1/2よりも小さな i に対しては、a[i]=0 となる。

(ウ-2) g(x) の最低次数が 4m (m=1,2,…) で、その係数が負のとき

 i<2m のとき、a[i]=0 となるので、

  g(x) = Σ[k=4m〜∞]Σ[i=2m〜k-2m](-1)^i*a[i]*a[k-i]x^k

 x^(4m) の係数は a[2m]^2 ≧ 0 となるが、これは負であるという場合分け条件と矛盾する。
そのため、f(x)が存在するならば解析関数ではない。

(エ) g(x) の最低次数が 4m+2 (m=0,1,2,…) で、その係数が正のとき

 i<2m+1 のとき、a[i]=0 となるので、

  g(x) = Σ[k=4m+2〜∞]Σ[i=2m+1〜k-(2m+1)](-1)^i*a[i]*a[k-i]x^k

 x^(4m+2) の係数は -a[2m+1]^2 ≦ 0 となるが、これは正であるという場合分け条件と矛盾
する。そのため、f(x)が存在するならば、解析関数ではない。

 こんな感じで、(ウ-2)、(エ)の場合は、f(x)が存在するとしたら解析関数ではない(x=0でテイ
ラー展開できない)無限回微分可能関数となるように思いますが、より詳しくはわかりません。



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