・次の式は予想できるか?                   GAI 氏

 sin(x)/x=(1-x^2/π^2)(1-x^2/(2*π)^2)(1-x^2/(3*π)^2)・・・・(1-x^2/(n*π)^2)・・・・・ の展

開式と sin(x)/x の級数展開 sin(x)/x=1-x^2/3!+x^4/5!-x^6/7!+x^8/9!-x^10/11!+・・・・・ を比

較することから、 zeta(k)=1/1^k+1/2^k+1/3^k+・・・・・+1/n^k+・・・・ の値を求めようといろい

ろ計算していたら、副産物として次の等式が出てきました。

 zeta(4)=zeta(2)^2-2*π^4/5!

 zeta(6)=(-zeta(2)^3+3*zeta(2)*zeta(4)+6*π^6/7!)/2

 zeta(8)=(zeta(2)^4-6*zeta(2)^2*zeta(4)+8*zeta(2)*zeta(6)+3*zeta(4)^2-24*π^8/9!)/6

 zeta(10)=(-zeta(2)^5+10*zeta(2)^3*zeta(4)-20*zeta(2)^2*zeta(6)-15*zeta(2)*zeta(4)^2
                    +30*zeta(2)*zeta(8)+20*zeta(4)*zeta(6)+120*π^10/11!)/24
(なんと複雑に絡み合っているか!)

 それ以上は複雑すぎて手を出していませんが、これに続く関係式をどこかで見た方は教え
て下さい。これだけから zeta(12) での関係式を出すことは出来ますかね?


【追伸】 zeta(2)(=Z)のみで式を構成しましたら,他の偶数値は、

 zeta(4)=Z^2-2π^4/5!

 zeta(6)=Z^3-3π^4/5!*Z+3π^6/7!

 zeta(8)=Z^4-4π^4/5!*Z^2+4π^6/7!*Z+2π^8(1/5!^2-2/9!)

 zeta(10)=Z^5-5π^4/5!*Z^3+5π^6/7!*Z^2+5π^8(1/5!^2-1/9!)*Z+5π^10(1/11!-1/(5!7!))

の様な変化になりました。


 DD++さんからのコメントです。(平成28年10月19日付け)

 そもそも、これはどのような規則を意図しているのですか?

 zeta(4)=zeta(2)^2-2*π^4/5!

 zeta(4)=2*zeta(2)^2-2*π^4/45

 zeta(4)=-zeta(2)^2+7*π^4/180

 zeta(4)=2*zeta(2)^2/5

など、多数作れる中からどうしてこの式を?しばらく首を捻ってわかりました。

 「2次から得られる zeta(2)=π^2/6 だけがなぜか未知である状態で」、4次以降のところか
ら等式を導けという話なのですね。だとすれば、単純に対称式の話で終わりなのでは、とい
う気がします。


 DD++さんからのコメントです。(平成28年10月20日付け)

(解決編) m個の文字のn次対称式の問題といえば、m≦n次の問題の方が目にする機会
      が多く、解法もよく知られています。一方で、m>nの場合というのはあまり見ませ
      んよね。こちらはニュートンの恒等式から出発して割と簡単に解決します。

 念のため、ニュートンの恒等式の話から。

 m個の変数 x[i] に対し、T[k] および S[k] を以下のように定義します。

 T[k] = 全ての変数のk乗の合計 、S[k] = 全ての変数のうち異なるk個の積の合計

 この S[k] は、k≦m ならばk次基本対称式、k>m ならば、「0」ということになります。

 このとき、以下が成立します。

 T[n] - T[n-1]S[1] + T[n-2]S[2] - … + (-1)n-1 T[1] S[n-1] + (-1)n n S[n] = 0

(証明) m=nの場合、

xn - S[1] xn-1 + S[2] xn-2 - … + (-1)n-1 S[n-1] x + (-1)n S[n] = (x-x[1]) (x-x[2]) …… (x-x[n])

という恒等式で、xにx[1]からx[n]まで順番に代入して合計すると得られます。

 m<nの場合、

 x[m+1] = x[m+2] = …… = x[n] = 0 を追加して、n文字のn次ニュートン恒等式を作ると得
られます。

 m>nの場合、

 n+1文字のn次ニュートン恒等式の左辺だけを作ります。x[1] = 0 とすると、n文字n次ニュ
ートン恒等式の左辺になるので、これは「0」になります。つまり、因数定理より、これは、x[1]
を因数に持ちます。そして、これは対称式なので、x[2] から x[n+1] まで全て因数に持ちます。
しかし、これはn次斉次式なので、そのようなものは「0」に限ります。

 よって m=n+1 の場合について示されました。

 以下、m=n+2 の場合、m=n+3 の場合、と帰納的に示されます。  (証終)

 今回の場合は変数が無限にありますが、和が絶対収束することがわかっているので、有
限の場合と同等の計算規則が適用可能で、ニュートンの恒等式を用いることができます。

 1, 1/4, 1/9, 1/16, …… で、ニュートンの恒等式を用いると、係数比較より、

  S[k] = π^(2k)/(2k+1)! 、T[k] = zeta(2k)

なので、1次の T[1] - S[1] = 0 より、 zeta(2) - π^2/3! = 0

 2次の T[2] - S[1]T[1] + 2S[2] = 0 より、 zeta(4) - π^2/3!*zeta(2) + 2*π^4/5! = 0

 3次の T[3] - S[1]T[2] + S[2]T[1] - 3S[3] = 0 より、

  zeta(6) - π^2/3!*zeta(4) + π^4/5!*zeta(2) - 3*π^6/7! = 0

 4次の T[4] - S[1]T[3] + S[2]T[2] - S[3]T[1] + 4S[4] = 0 より、

  zeta(8) - π^2/3!*zeta(6) + π^4/5!*zeta(4) - π^6/7!*zeta(2) + 4*π^8/9! = 0

(以下略)

 これが一番規則性の見えやすい等式だと思います。S[k] = π^(2k)/(2k+1)! を先に用いず
に、ニュートンの恒等式の方からS[k]を逐次zetaで表してから、このS[k]の式に放り込んで
zeta(2k)について解けば、GAIさんの作った式も得られますが、手間もかかるし見通しも立ち
にくいのでやる意味はないでしょうね。


 GAI さんからのコメントです。(平成28年10月20日付け)

 なんと見事な調和がとれているものなのだな〜。例の関係式からzeta(2)を決定して、それ
を基に、次のアタック点zeta(4)へよじ登り、さらに2つの足場を頼りにzeta(6)へ行くルートを
探しという雰囲気でよじ登っていました。

 zeta(10)まで登ったとき、zeta(2)からzeta(4)、zeta(6)、zeta(8)に渉る式を眺めていたら、と
ても美しい式とは思えず、しかし数値的には決定できる要素は含んでいるとは感じていまし
た。

 定義より、zeta(2)、zeta(4)、zeta(6)、・・・・、zeta(2*n)には何かしら調和が必要であるはず
だが、いま手にした関係式では余りにもグロテスクであると・・・。

 では、zeta(12)なら(zeta(2)〜zeta(10)を決定されている数値を入手しているという前提で)

 zeta(12)=π^12(1/6/11!-1/90/9!+1/945/7!-1/9450/5!+1/93555/3!-6/13!)
          =691π^12/638512875

とやれば直ぐに次のポイントには登れるわけですね。こんな便利な登山道が整備されてい
れば、あえて道に迷いそうなルートは命取りになりそうです。



                         投稿一覧に戻る