・四角形の面積                      なつ 氏

 A=40°、B=100°、C=80°、D=140°、AB=AD=1 であるような四角形ABCDの面
積を求めてください。

     


(コメント) 面白そうな問題だったので、解いてみました。

  辺AB上に、EDとBCが平行となるように点Eをとる。このとき、
 △AEDは2等辺三角形で、ED=x とおくと、 x=1/(2cos40°)

  よって、四角形ABCDの面積は、

 sin40°/(4cos40°)+(1−1/(2cos40°))sin80°/(2cos40°)
   =sin40°-sin40°/(4cos40°)
   =(2sin80°-sin40°)/(4cos40°)

 ところで、 θ=40°とおくと、 3θ=120°から、 2θ=120°-θ なので、

 sin80°=(/2)cos40°-(-1/2)sin40°より、 2sin80°-sin40°=cos40°

 以上から、四角形ABCDの面積は、cos40°/(4cos40°)=/4


(別解) BD2=1+1-2cos40°=2(1-cos40°)=4sin220°より、BD=2sin20°

 △ABDは2等辺三角形なので、∠DBC=30°より、BDsin30°=sin20°

 BC=ED=1/(2cos40°)なので、四角形ABCDの面積は、

 sin40°/2+sin20°/(4cos40°)
=(sin80°+sin20°)/(4cos40°)
=2sin50°cos30°/(4cos40°)
=cos40°/(4cos40°)
=/4


(コメント) 特殊な図形で何かあるかな?と思いつつ面積を求めたところ、割と綺麗な結果
      に驚いています。初等幾何的な解法はあるのでしょうか?


 らすかるさんからのコメントです。(平成28年5月4日付け)

 上図を見ていたら、初等幾何学的な解答を思い付きました。

(別解) ∠PAB=20°となるようにCBの延長上に点Pをとる。このとき、

 △APBは、AP=AB=1、頂角20°底角80°の二等辺三角形、△APD
は一辺の長さが1の正三角形となる。さらに、△PCD≡△APB なので、

    △APQの面積=四角形BCDQ

  従って、四角形ABCDの面積=正三角形APDの面積=/4


(コメント) なるほど!上手く正三角形が隠れていたのですね。らすかるさんに感謝します。


 S(H)さんの紹介でHN「壊れた扉」さんの別解もいただきました。(平成28年5月4日付け)

(別解) △ABDは底角70°の二等辺三角形なので、∠DBC=30°より、∠BDC=70°

 ここで、DA上にDE=DCとなる点Eを取ると、△DBE≡△DBC で、∠EBC=60°より、

∠EBA=40°すなわち、∠EAB=∠EBA より、△EABは二等辺三角形。

 今、ABを底辺として頂角が点D側にある正三角形FABを描き、DF、EFを結ぶと、

  AB=AF 、AB=AD より、 AD=AF なので、△ADFは二等辺三角形

   ここで、∠DAF=20°より、∠ADF=80°

   また、∠BED=80°より、∠ADF=∠BED なので、

  BEとDFは平行である。

  ところで、△FABが正三角形で、△EABが二等辺三角形より、

  △FEA≡△FEB・・・(*) また、△DEB≡△DCB・・・(**) で、

  等積変形より、 △FEB=△DEB・・・(***)

 (*)、(**)、(***)より、 △FEA=△FEB=△DEB≡△DCB

よって、四角形ABCD=△EAB+△DEB+△DCB
             =△EAB+△FEA+△FEB=正三角形FAB

 以上から、正三角形FABの面積を求めれば良いので、面積は、/4


(コメント) 図が若干込み入っていますが、正三角形を作るという方針が貫かれていますね!
      S(H)さん、壊れた扉さんに感謝します。


 なつさんからのコメントです。(平成28年5月4日付け)

 遅くなりました。なつです。お返事ありがとうございます。HPは興味深い内容が多く、よく参
考にさせてもらっています。これからの更新も楽しみにしております^^

 図形問題についてですが、/4で正解です。私の意図していた解法をらすかるさんがす
でに投稿しておられますので、私からいうことは何もございません。お見事です。


 DD++さんからのコメントです。(平成28年5月4日付け)

 sin40° - sin40°/4cos40° = /4 つまり、 4sin40° - tan40° =  というのを見
て不思議に思ったので調べてみると、以下のような計算が成り立つことがわかりました。

  4sin20° + tan20° =  、4sin40° - tan40° =

  4sin80° - tan80° = - 、4sin100° + tan100° = -

  4sin140° + tan140° =  、4sin160° - tan160° =   (以下略)

 なんでこんなことが起きるのか不思議に思ったのですが、どうも

   tan3θ - tanθ = 2sinθ/cos3θ

なる恒等式が成立するようです。

 よって、3倍すると 60° 絡みになる角度の場合に 4sinθ ±  tanθ のどちらかが ±
のどちらかになります。

 今回の四角形の面積を求める問題は、辺DC上に点Fを菱形ABFDができるように取って
ある状態で、菱形ABFD(sin40°)から三角形BFC(tan40°/4)を切り落とす形で問題を作っ
たのではないかと思います。

 つまり、同じようにしてこんな類似問題を作ることができます。

 AB=AD=1、A=160°、B=40°、C=140°、D=20°であるような四角形ABCDの面積を求め
よ。

 さて初等的に解けるでしょうか?


 らすかるさんからのコメントです。(平成28年5月5日付け)

 前問と全く同じ方法で解けますね。

  BCの延長上に、∠APC=40°となるようにPをとれば、

 △APDは正三角形、△ABP≡△PDCなので、

  四角形ABCDの面積=△APDの面積=/4


 GAI さんからのコメントです。(平成28年5月5日付け)

 DD++さんに習ってこの図形を解いてみました。成り立つことになる三角関数での関係式を
調べたところ、

cos10°-sin20°=sin40°、cos20°-sin10°=sin50°、cos20°+sin10°=1+tan10°sin40°

が起こることになりそうです。何とか

  cos10°+sin20°=(1+tan10°sin40°)/tan40°

の関係で繋がれることを見つけました。


 らすかるさんからのコメントです。(平成28年5月5日付け)

cos10°-sin20°=sin40°、cos20°-sin10°=cos40°、cos20°+sin10°=sin40°

cos10°+sin20°=cos40°

とも表せますね。


(コメント) 私の何とはなしに「3θ=120°」と置いた計算が新たな数式の発見に繋がったよ
     うで、とても嬉しく思います。DD++さん、GAI さん、らすかるさんに感謝します。


(追記) 高校2年生のk.t.さんからメールで次のような問題をいただいた。
                                       (平成28年5月21日付け)

 tan(3π/11)+4sin(2π/11)= が成り立つことを示せ。

 上記と同じ匂いのする問題であり、k.t.さんからは、「この手の問題は、初等幾何では証
明できませんか?」とのことなので、少し考えてみることにした。

 まずは、代数的な解法から考えてみよう。

(解) x=e^(2πi/11)とおくと、ド・モアブルの定理から x11=1 である。

 まず、 x−1/x=e^(2πi/11)−e^(−2πi/11)=2i・sin(2π/11) である。

  1/x=x10 なので、 x−x10=2i・sin(2π/11)

 すなわち、 i・4sin(2π/11)=2(x−x10

 また、 tan(3π/11)=sin(3π/11)/cos(3π/11)
              =2sin2(3π/11)/2sin(3π/11)cos(3π/11)
              =(1−cos(6π/11))/sin(6π/11)

において、 1−cos(6π/11)=1−(x3+x-3)/2=(2x3−x6−1)/(2x3

       sin(6π/11)=(x3−x-3)/(2i)=(x6−1)/(2ix3

なので、

 i・tan(3π/11)=(x6−2x3+1)/(x6−1)=(x3−1)2/(x6−1)=(x3−1)/(x3+1)

ここで、(x3−1)/(x3+1)=(x3−x33)/(1+x3) を実際に割り算して商を求めると、

 (x3−1)/(x3+1)=x3−x6+x9−x12+x15−x18+x21−x24+x27−x30

 x11=1 なので、

 (x3−1)/(x3+1)=x3−x6+x9−x+x4−x7+x10−x2+x5−x8
            =−x−x2+x3+x4+x5−x6−x7−x8+x9+x10

 以上から、

 i・tan(3π/11)+i・4sin(2π/11)
=−x−x2+x3+x4+x5−x6−x7−x8+x9+x10+2(x−x10
=x−x2+x3+x4+x5−x6−x7−x8+x9−x10
=x+x3+x4+x5+x9−(x2+x6+x7+x8+x10

 そこで、 A=x+x3+x4+x5+x9 、B=x2+x6+x7+x8+x10 とおくと、

 i・tan(3π/11)+i・4sin(2π/11)=A−B

 A+B=x+x2+x3+x4+x5+x6+x7+x8+x9+x10

すなわち、 1+A+B=1+x+x2+x3+x4+x5+x6+x7+x8+x9+x10
             =(1−x11)/(1−x)=0

  よって、 A+B=−1

 また、AB=(x+x3+x4+x5+x9)(x2+x6+x7+x8+x10
      =x3+x7+x8+x9+1
         +x5+x9+x10+1+x2
            +x6+x10+1+x+x3
               +x7+1+x+x2+x4
                  +1+x4+x5+x6+x8
      =5+2(x+x2+x3+x4+x5+x6+x7+x8+x9+x10)=5−2=3

 よって、A、Bは、2次方程式 t2+t+3=0 の2つの解である。

 解の公式より、 t=(−1±i)/2 で、 A−B=±i

 すなわち、 i・tan(3π/11)+i・4sin(2π/11)=±i より、

    tan(3π/11)+4sin(2π/11)=±

 明らかに、tan(3π/11)+4sin(2π/11)>0 なので、

  tan(3π/11)+4sin(2π/11)=

が成り立つ。


(コメント) 代数的には示せたものの、これを初等幾何的に示すには、どんな図形を使えば
      いいのだろう?難問ですね。


 DD++さんからのコメントです。(平成28年5月23日付け)

 一見確かに同じように見えますが、少し調べてみると実は(初等幾何程度の深さでは)別物
なのではないかと思います。というのは、wolfram先生の力を借りて似たような式を量産すると
以下のようになるのです。

 tan(π/3) - 4sin(π/3) = - 、tan(π/4) - 4sin(π/4) = -

 tan(π/6) - 4sin(π/6) = -1

 tan(π/7) - 4sin(2π/7) = - 、tan(2π/7) - 4sin(3π/7) = -
 tan(3π/7) - 4sin(π/7) =

 tan(π/9) + 4sin(π/9) =  、tan(2π/9) - 4sin(2π/9) = -
 tan(4π/9) - 4sin(4π/9) =

 tan(π/11) + 4sin(3π/11) =  、tan(2π/11) - 4sin(5π/11) = -
 tan(3π/11) + 4sin(2π/11) =  、tan(4π/11) + 4sin(π/11) =
 tan(5π/11) - 4sin(4π/11) =

 tan(π/12) + 4sin(π/12) =  、tan(5π/12) - 4sin(5π/12) =

 tan(π/18) + 4sin(π/18) = 1 、tan(5π/18) - 4sin(5π/18) = -1
 tan(7π/18) - 4sin(7π/18) = 1

 よく見ると、これらの式は似たような二系統が混在しており、

(A) 分母の素因数が2と3のみである場合
 ・・・tanとsinで角度は共通。tanの前にも係数がつくことがある。登場する平方根は±
   と±のみ。

(B) 分母が(何らかの性質を持つ)素数である場合
 ・・・tanとsinで角度は異なる。tanの前に係数がつかない。登場する平方根は分母の平方
   根のみ。

 /9は(A)でたまたまtanに係数がつかなかっただけで、/11は(B)。もっと掘り下げれば多分
共通の理論等も言えるのだろうと思いますが、初等幾何で同じように考えるというのはかな
り厳しい道だと感じました。

 参考として、/9の3つの式の初等幾何学的証明を投稿しておきます。

(1) tan(π/9) + 4sin(π/9) =

 AB=2、∠A=π/3、∠B=π/6、∠C=π/2 の直角三角形ABCを考える。辺BC上に点 D、E

を取り、∠Aを三等分、すなわち、∠BAD=∠DAE=∠EAC=π/9 とする。

 点Bから線分ADの延長に垂線BFを下ろし、線分BFの延長と線分AEとの交点をGとする。

   直角三角形ABFに注目すると、BF=ABsin(π/9)=2sin(π/9)

    △ABF≡△AGF より、BG=2BF=4sin(π/9)

 ∠EGB=∠ABF=7π/18=∠AEC=∠BEG より、BE=BG=4sin(π/9)

  また、AC=ABsin(π/6)=1 なので、EC=ACtan(π/9)=tan(π/9)

よって、 tan(π/9)+4sin(π/9)=EC+BE=BC=ABcos(π/6)=

(2) tan(2π/9) - 4sin(2π/9) = -

 AC=2、∠A=π/6、∠B=5π/18、∠C=5π/9 の三角形ABCを考える。辺BCの延長(C方

向)上に CD=2 となる点Dをとり、点Cから線分ABおよびADに垂線CEおよびCFを下ろす。

 AC=CD=2 および ∠ACD=4π/9 より、∠ACF=∠DCF=2π/9 なので、AD=4sin(2π/9)

 ∠ADC=π/2-∠DCF=5π/18=∠B より、 AB=AD=4sin(2π/9)

 また、CE=ACsin(π/6)=1 なので、BE=CEtan(2π/9)=tan(2π/9)

 よって、tan(2π/9)-4sin(2π/9)=BE-AB=-AE=-ACcos(π/6)=-

(3) tan(4π/9) - 4sin(4π/9) =

 AB=2、∠A=π/3、∠B=π/6、∠C=π/2 の直角三角形ABCを考える。辺BCの延長(B方

向)に ∠CAD=4π/9 となる点Dをとる。線分ADの延長(A方向)に AE=2 となる点Eをとる。

点Aから線分BEに垂線AFを下ろす。

 AB=AE=2 および ∠BAE=π-(∠CAD-∠CAB)=8π/9 より、∠BAF=∠EAF=4π/9

 よって、BE=4sin(4π/9)

 ∠EDB=π/2-∠CAD=π/18=π/2-∠EAF=∠DEB より、BD=BE=4sin(4π/9)

 また、AC=ABsin(π/6)=1 なので、CD=ACtan(4π/9)=tan(4π/9)

 よって、tan(4π/9)-4sin(4π/9)=CD-BD=BC=ABcos(π/6)=


#これらを参考に/11をやろうとするなら、まずをどこから生み出すかという課題をクリ
 アしないといけません。

  sin(π/11)sin(2π/11)sin(3π/11)sin(4π/11)sin(5π/11)=/32

つまり、半径1の円に内接する正11角形の辺及び4つの異なる長さの対角線の総乗が
というのはありますが、これを今回に使えるかも、そもそもこれを初等幾何で証明できるかも
謎ですね。


 空舟さんからのコメントです。(平成28年5月24日付け)

 次のように一般化できました。

【命題】 pを4N+3型素数としてθ=2π/pとおく。pを法とする平方剰余について、0以上p-1以
    下で代表系をとったときに、4を法として2か3に合同な集合をAとすると、

  tan(θ) - Σ[a∈A] 4sin(aθ) = -√p が成り立つ

例 p=19 では、 tan(θ)-4sin(6θ)-4sin(7θ)-4sin(11θ) = -√19

  p=23 では、 tan(θ)-4sin(2θ)-4sin(3θ)-4sin(6θ)-4sin(18θ) = -√23

[考察過程] z=exp(2πi/p)とおくと、(z-1/z)/(z+1/z) = Σc[k]z^k

         ただし、k≡0,1 (mod 4) のとき c[k]=1、他の時 c[k]=-1

 一方、ガウス和により、 √-p = Σd[k]z^k

         ただし、kが平方剰余のときd[k]=1, 他の時 d[k]=-1

 これらを比較して観察しました。


 DD++さんからのコメントです。(平成28年5月24日付け)

 情報ありがとうございます。19や23も4sinを2セットか3セット作ればいけそうだとは思ってい
ましたが、具体的な式までは手が回りませんでした。

 問題は、これを初等幾何で証明できるのかですが……。


 GAI さんからのコメントです。(平成28年5月25日付け)

 ガウス和に結びついているなんて思ってもいませんでした。

 p=83 なら、

tan(θ)-4sin(3θ)-4sin(7θ)-4sin(10θ)-4sin(11θ)-4sin(23θ)-4sin(26θ)-4sin(27θ)
 -4sin(30θ)-4sin(31θ)-4sin(38θ)-4sin(51θ)-4sin(59θ)-4sin(63θ)-4sin(70θ)
  -4sin(75θ)-4sin(78θ) = -√83  (なおθ=2*π/83)

が成立すると言うわけですね。こんなこと見えるわけありません。

 4N+1型の素数に対する類似の一連の式は何かありませんか?



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