将棋の場合、対局前に振り駒(対局者の一方が自分の歩を5枚取って手のひらの中でよ
く振り混ぜ、床などの上にふわっと落とす)を行い、「歩」の枚数が多いときは振った側が先
手、「と」の枚数が多いときは振った側が後手となります。ただし、重なったり立ったりした駒
は数えず、「歩」と「と」が同数の場合はもう一度やり直します。駒を振った側が先手となるこ
とを振り歩先(ふりふせん)といいます。
囲碁の場合、先手が非常に有利なので通常は、強い方が白石(後手)を持ち、弱い方が
黒石(先手)を持ち、対局を始めます。問題は、強さが同等の場合です。その対局のことを
互先(たがいせん)といい、先手・後手は通常次のような「ニギリ」で決めます。
対局者の一方が白石を幾つか握り、盤上に手で隠すように置きます。もう一方の対局者
が、白石の個数が奇数だと思えば黒石を1個、偶数だと思えば黒石を2個盤上に置きます。
白石の偶奇があっていれば、黒石を置いた対局者が黒石を持ち先手となります。外れれ
ば、黒石を置いた対局者が白石を持ち後手となります。ただし、黒番の方が有利になるの
で、公平にするため、黒番は白番に対して、「6目半コミ」というハンデを負うことになります。
これは、終局時に白に加えられる地となります。
そこで疑問が湧きます。将棋の場合は確率的にも平等ということは理解できますが、果た
して囲碁の場合の先手後手の決め方は確率的に平等なのでしょうか?
囲碁の場合、最初に「白石を幾つか握り」とあるので、全く白石をとらない場合は考えなく
てよいところに問題点があります。
例えば、白石を5個取った場合、起こりうる全ての場合の数は、25−1=31(通り)
そのうち、奇数個になるのは、
1個・・・ 5通り 、3個・・・ 5C3=10(通り) 、5個・・・ 1通り
よって、奇数個になる確率は、16/31で、偶数個になる確率15/31よりも大きい。
一般に、白石をn個とった場合、奇数個の場合の数は、2n-1通り、偶数個の場合の数は、
2n-1−1通りなので、奇数個になる確率の方が偶数個になる確率よりも大きい。
白石を全くとらない場合も含めれば、奇数個、偶数個の確率は等しくなるのだが...。
確率的に差があるのに、なぜ囲碁の世界では「ニギリ」で先手後手を決めるのだろうか、
とても不思議だ。