・ 根と解の違い                   S.H氏

 昭和48年(1973年)度入学生から、高校では、方程式の根とはいわずに、方程式の解と
いうようになった。どのような理由から、そうなったのかは分からない。私の周りでは、今もっ
て、「根と係数の関係」「根の公式」というおじさんがいっぱいいて、思わず年齢(トシ)が類推
されてしまう。今時の高校生に、「根の公式」などと書けば、多分、「ね」の公式と呼ぶだろう
し、「どういう植物の根っこの公式ですか?」と真顔で聞いてきたりなんかして、おじさんたち
をたじろがせることだろう。
 しかし、最近読んだ本:   永田雅宜 著 線形代数の基礎(紀伊國屋書店)
によれば、「根」と「解」は似て非なるものだという。

 n 次の多項式が、次のように因数分解されるものとする。
F(X)=a0+a1n-1+・・・+an-1X+an=a0(X−α1)(X−α2)・・・(X−αn)
このとき、
 方程式 F(X)=0 のとは、α1、α2、・・・、αn のことをいう。
   根は、必ず n 個あり、同じ数が重なっているときは、重根といわれる。
これに対して、
 方程式 F(X)=0 のとは、F( α )=0 となるような数 α のことをいう。

(例) (X−1)2=0 の解は、X=1
    (X−1)2=0 の根は、X=1,1 (または、 1(重根))

 現在使われている教科書では、上記の例の場合、「重解」という言葉で説明されている。
しかし、「解」の定義を厳密に適用すれば、(X−1)2=0 となる X は、1 しかないわけで、
それを、「重なっている解」という意味で、「重解」というのは少し違和感を感じる。
 表向きは「解」といいながら、依然として根底には、「根」という概念が横たわっているのだ
ろう。ここら辺に違和感のもとがありそうである。

 よおすけさんからの情報です。(平成24年4月23日付け)
 根と解のことは、上記の通りなので、ここには詳しく書きませんが、これも実はあったとい
うことを書きます。
 例えば、「2次方程式 x2-2x+1=0 を解け。」について、x2-2x+1=(x-1)2 なので、求める
2次方程式は、

  根 x=1、1 (または 1(重根))
  解 x=1
  解集合 x=1

特に、前者の根のほうです。今は「重解」または「重複解」となっていますが、昔は、「等根」
などという言い方もありました。「重解」というよりはマシかもしれませんが、自分としてはや
や違和感があるような…。

(コメント) よおすけさん、情報ありがとうございます!でも、「等根」は初耳です...。



 上記話題に関連して、よおすけさんからの情報提供です。(平成25年7月7日付け)

 例えば、次の分数方程式です。

 (x+3)/(x+4)+1/(x−2)=6/(x2+2x−8)

 分母が0では方程式が成り立たないので、x+4≠0、x−2≠0、x2+2x−8≠0 を前提
条件とします。

 両辺に、x2+2x−8 をかけて分母をはらえば、

  (x+3)(x−2)+(x+4)=6 より、 x2+2x−8=0

 左辺を因数分解して、 (x−2)(x+4)=0 より、 x=2 または x=−4

 どちらも前提条件に反するので、この方程式を満たすxの値はない。

 このとき・・・なんですが、以前は躊躇なく「解なし」と答えていたのですが、高校生の頃この
サイトなどで「根」という言葉を見かけてから、「解なし」なのか「根なし」なのか迷うようになり
ました。今では「根」という言葉もだいぶ慣れていますが、このパターンになると未だに迷い
ます。「根なし」って以前使われたことがあったのかな・・・?


 空舟さんからのコメントです。(平成25年7月7日付け)

 「関数の根」・・・(出典不十分のタグがついているけれど・・・)

あるいは

代数方程式」・・・ページの諸概念という項目の「根」という部分を参考にして・・・

 解という言葉は、「方程式」に対する物である一方、根という言葉は、「関数」あるいは「多
項式」に対するものなので、「方程式を解け」って言われたら、どっちかというと「解」という言
葉を使えば良いような感覚がします。

 問題の分数方程式は、分母を払って計算した結果、「前提条件に反するから解なし」とい
う風になるのは何か後味が悪いけれど、よく考えると元の方程式は常に「左辺=右辺+1」
という関係が成り立っているという事情のようです。


(コメント) 分数方程式 (x+3)/(x+4)+1/(x−2)−6/(x2+2x−8)=0 を通分する
      と、 (x2+2x−8)/(x2+2x−8)=0 から、 1=0 と同義になる。すなわち、
      解なしというよりも方程式そのものが「不能」と言った方がしっくりくるかも...。


 よおすけさんからのコメントです。(平成25年7月8日付け)

 そういえば、紹介した方程式は整理して通分したら、分母分子が約分されて、xやx2の係
数が0になるから、結局は「不能」になるんですね。「不能」っていうと連立一次方程式ぐらい
しか見かけなかったです。モノグラフ「方程式」初版があれば購入してみたいですが・・・。


(コメント) モノグラフ「方程式の理論と解法」の改訂版が手元にあります。好きなシリーズ
      だったので、大体揃っています...。


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