・対称式とペル方程式                     DD++氏

 対称式をいろいろいじっていたときに、次のような恒等式が成立することに偶然気がついた。

 (t-a2) (t-b2) = (t+ab)2 - t (a+b)2

 少し調べると、どうもこの恒等式はペル方程式に関して大変興味深い現象を起こすらしい。

 ペル方程式 x2 - 5y2 = -1 の最小解は、x=2, y=1 である。これを (t+ab)2 - t (a+b)2 = -1
と比較して、t+ab=2、 t=5、 a+b=1 と考えると、a+b=1、 ab=-3 から、これらは s2-s-3=0 の解
とわかるので、a、b = (1±√13)/2 となり、2乗すると a2、b2 = (7±√13)/2
 ここで、(t+ab)2 - t (a+b)2 = -1 ということは、 (t-a2) (t-b2) = -1 ということでもあるので、
代入すると、{5-(7-√13)/2} {5-(7+√13)/2} = -1、つまり、{(3+√13)/2} {(3-√13)/2} = -1
分数にならないよう全体を3乗すると、(18+5√13) (18-5√13) = -1で、展開して、
182 - 13×52 = -1

 こうして x2 - 5y2 = -1 の解から全く別のペル方程式 x2 - 13y2 = -1 の解 x=18、 y=5 が
生成される!しかも、これは最初に x=-2, y=1 と選んでもよいわけで、その場合 a+b=1、 ab=-7
から最終的に x2 - 29y2 = -1 の解 x=70、y=13 も生成される!

 これを使って、もう少し遊んでみよう。

 x2 - 2y2 = -1 の最小解は、x=1、 y=1 だが、あえて2番目の解、しかも、x が負である x=-7、
y=5 からスタートしよう。

 (-7)2 - 2×52 = -1 と (t+ab)2 - t (a+b)2 = -1 を比較して、t+ab=-7、t=2、a+b=5 と考えると、
a+b=5、ab=-9 から、これらは、s2-5s-9=0 の解なので、a、b = (5±√61)/2 となり、2乗すると
a2、b2 = (43±5√61)/2 で (t-a2) (t-b2) = -1 に代入して、{(39+5√61)/2} {(39-5√61)/2} = -1
分数にならないよう全体を3乗すると、(29718+3805√61) (29718-3805√61) = -1
今回は右辺を 1 にしたいのでさらに全体を2乗して、

  (1766319049+226153980√61) (1766319049-226153980√61) = 1

つまり、 17663190492 - 61×2261539802 = 1 となり、こうしてフェルマーの有名な問題の解
x=1766319049、 y=226153980 が得られる。

 さて、フェルマーのもう片方である x2 - 109y2 = 1 は少し手間がかかる。

 x2 - 10y2 = -1 の解 x=-3、y=1 から出発する。a+b=1、ab=-13 から a、b = (1±√53)/2 で、
2乗すると、a2、b2 = (27±√53)/2 から {(7+√53)/2} {(7-√53)/2} = -1 これを3乗して
(182+25√53) (182-25√53) = -1 つまり、1822 - 53×252 = -1 となる。
 そしてこの x2 - 53y2 = -1 の解から再出発する。a+b=25、ab=129 から、a、b = (25±√109)/2
で、2乗すると、a2、b2 = (367±25√109)/2 から、{(261+25√109)/2} {(261-25√109)/2} = -1
3乗して、 (8890182+851525√109) (8890182-851525√109) = -1
右辺を1にするためにさらに2乗して、

(158070671986249+15140424455100√109) (158070671986249-15140424455100√109) = 1

つまり、 1580706719862492 - 109×151404244551002 = 1 となり、こうして方程式の解
x=158070671986249、 y=15140424455100 が得られる。

 この計算についての未解決問題です。(私もわかりません、誰か突き止めて教えてください)

(1) N=13 と N=29 の解が N=5 の解から、N=61 の解が N=2 の解から、N=53 の解が N=10
  の解から、N=109 の解が N=53 の解から、それぞれ生成されたのには

 13×5-1 = 64 = 82 、29×5-1 = 144 = 122 、61×2-1 = 121 = 112
 53×10-1 = 529 = 232 、109×53-1 = 5776 = 762

という数値的関係が背後で何か重要な役割を果たしているのだろう。

 ところで、109×10-1 = 1089 = 332 でもあるわけだが、N=109 の解を N=10 の解のどれか
から直接生成することはできないのだろうか?

(2) あるNでの解を知りたい場合に、どのNの何番目の解から出発するべきか確実に判定す
  る方法は?そもそもどんなNでもそれより小さい別のNの解から生成できるのか?

(3) 今回の4つは全てそのNでの最小解だったが、こうして得た解は必ず最小解? それと
  も2番目や3番目の解である場合もある?

(4) =+1の方でも同じようにできるが、失敗する(途中の二次方程式で整数解が出てしまう)
  場合もかなりある。=-1ではなぜそのようなことが起こらないのか?


(コメント) 大変興味ある現象ですね!


 GAI さんからのコメントです。(平成27年8月18日付け)

 興味深く読まさせて頂きました。とりあえず、(1)について調べてみました。

 x2 - 10y2 = -1 の11番目までの解 (x,y)=(t+ab,a+b)=(10+ab,a+b)が下記

{{3,1}、{117,37}、{4443,1405}、{168717,53353}、{6406803,2026009}、{243289797,76934989}、
{9238605483,2921503573}、{350823718557,110940200785}、{13322062699683,4212806126257}、
{505887558869397,159975692596981}、{19210405174337403,6074863512559021}}

で、これについて調べてみました。(→ 計算例

 以上から、目的の109を直接作り出すことはできませんでした。

t=10 → D=53 → D=109 と2段構えで行くしかないようですね。


 DD++さんからのコメントです。(平成27年8月18日付け)

 やっぱり無理でしたか。掛けて1を引く(=+1のときは1を足す)と平方になるのは必要条件で
はおそらくあっても十分条件ではないわけですね。


 GAI さんからのコメントです。(平成27年8月18日付け)

 (2)(3)について調べてみました。

最小解以外は急激に大きくなるので3番目までの解で調べました。

 x2-Dy2=-1 の解(x,y)からの変化(ただし、D<100での調査)

 x2-2y2=-1 の5個の解 (x,y)={1,1}、{7,5}、{41,29}、{239,169}、{1393,985} から産み出
される a、b に含まれる√Dの値{5,5,685,27613,964661}(上の解の順序に対応する。)

(-x,y)からのDの出現 {13,61,1013,29525,975805}

・・・・ (→ 計算例

ほとんどが最小解で処理することになりそうです。


 GAI さんからのコメントです。(平成27年8月19日付け)

 (4)が気になったので、ペル方程式 x2-Ny2=1 からの変化も調べてみました。
(-1に較べると増加の仕方が穏やかなので、5個の解で追跡しました。)

 興味を引いたのが、N=7 の下段に、69 が出現することでした。このことは、

x2-7y2=1 ・・・ (*) の解から、x2-69y2=1 ・・・ (**) の解が発見できることを意味する。

 (*)は比較的容易に(x,y)=(8,3) が見つかる。(?)

 下段を加味して、(-x,y)=(-8,3)=(7+ab,a+b) となり、a+b=3、ab=-15

 これから、a、b=(3+√69)/2、(3-√69)/2 すなわち、a2、b2=(78+6√69)/4、(78-6√69)/4

 ここで、恒等式から、 (t-a2)(t-b2)=1 の方が、(7-(78+6√69)/4)(7-(78-6√69)/4)=1

すなわち、(50-6√69)/4・(50+6√69)/4=1 の両辺を3乗することで(整数が出現するように
するため。6,9乗でもOK)

 (7775-936√69)(7775+936√69)=1 すなわち、 77752-69・9362=1

 このことは、ペル方程式 x2-69y2=1 の解が (x,y)=(7775,936) であることを示す。
(こんな大きな値は勘では無理無理)

 このことは、936人×936人で兵士が正方形に隊列を組んで69師団が行進しているとき、
一人が遅刻してやってきたときはその一人を取り込んで、7775人×7775人による正方形
の一個師団が構成できることを想像できる。

 DD++さんが指摘されている a、b が整数になることも(この表の0の場合)ありますが、十分
こちらも活用できると思われます。


 DD++さんからのコメントです。(平成27年8月19日付け)

 GAIさん、ありがとうございます。これって根号内の数なので、結果が平方の約数を持つ場
合それで割れるんですが、そこはひとまず考慮してない感じですかね。

 どうも 0 になるパターンは、N=k2±1 のとき限定みたいですね。小さい方のNで最小解と2
番目だけ見ていったので、そりゃよく遭遇するわけでした。0以外で平方数はざっと見た感じ
では1つもなさげ?

 77752-69・9362=1 を 69・9362 = 77752-1 = 7774・7776 と変形し、ユークリッドの互除法
を使って、

  7774と69の最大公約数は23 、7776と69の最大公約数は3

とやると、69が因数分解できたり。こっちはこっちでまた、どんな数でもうまくいくわけではな
いみたいですけれど。



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