・気になる問題 スカリー捜査官氏
n は奇数とします。f(x) = Σ[k=1→n] |cos(kx)| としたとき、f(x) は、x=π/2 で最小値をとり
そうな気がするのですが、正しいでしょうか?証明・反例などあれば教えて下さい。
空舟さんからのコメントです。(平成26年11月16日付け)
次の命題を主張すれば良い: cosx≠0 ならば、f(x) > (n-1)/2 ・・・■
0<A≦π/8、 0≦B≦π/2 に対して、{2cos(A)-cos(B+A)}/sin(A) > (π/4+B/2)/A ・・・★
に帰着できて、これはグラフソフトによると正しそうです。
グラフソフトによらない証明はうまくできていないのですが、以下に、■が★に帰着できる
ことを示します。
[1] 0≦x≦π/2 で考察すれば良い。
(説明) |cos(π±kx)|=|cos(x)| より
[2] f(x)の極小値を与えるxは、以下の形に書ける:
x=pπ/2q (p、qは互いに素で、pは奇数、q∈{1,2,..,n})
よって、示すべきことは以下に帰着される。
q≠1、pとqは互いに素 ならば、 f(pπ/2q) > (n-1)/2 ・・・●
(説明) coskx の符号を c[k] とする。すなわち、f(x)=Σc[k]cos(kx) 、 c[k]cos(kx)≧0
0≦x≦π/2 は、coskx=0 を満たすxによって、c[k]の組が定値である区間に分割される。
それぞれの区間において、f(x)の二階微分を考えると、f''(x)=Σ{-k2・c[k]cos(kx)} となる
が、c[k]cos(kx)≧0 だから、 f''(x)≦0 が言える。
f''(x)≦0 なら区間の端以外では極小にならない。区間の端とは、すなわち、
あるq∈{1,2,..,n}があって、cos(qx)=0 となるとき、すなわち、qx=pπ/2 (pは奇数、 q≦n)
qとして最小のものを選べば、qとpは互いに素
[3] ●は q≦n≦2q の場合を示せば十分である
(説明) まず、n<q のときは、[2]の条件を満たさないので、x=pπ/2q は、f(x)の最小値を与
えない。
x=π/2のときに、f(x)=(n-1)/2を与えることから、f(x=pπ/2q) はその最小値より大きい
と言える
これで n≦2q に対して●を仮定できたことになる。
n>2q の場合、n=2Aq+m、 0≦m<2q とおける。
f(x) = Σ[k=1からn] |cos(kx)|
= A*Σ[k=1から2q] |cos(kx)| + Σ[k=1からm] |cos(kx)|
>A*(Σ[k=1から2q-1] |cos(kx)| +1) + (m-1)/2 (上記仮定より)
>A*((2q-1-1)/2+1) + (m-1)/2 (仮定より)
= Aq+(m-1)/2
= (n-1)/2 より n>2qに対しても●が成り立つことが従った。
[4] さらにp=1 の場合すなわちx=π/2qで考察すれば良い。
(説明) 1≦k≦q のときの、|cos(kx)|の和は、pが変わっても足される順番が変わるだけで
ある。
q<k<n のとき、 |cos(kx)| の値は、(q-1)通りある。
p=1 とすれば、小さい順に選ばれていくから和を最小にする。
[5] そのとき、n=q+mとおくと、f(x)は次のように書ける。
f(x)=Σ[1からq] cos(kx) + Σ[1からm] sin(kx)
Σcos(kx) = {sin(nx+x/2)-sin(x/2)}/2sin(x/2) 、
Σsin(kx) = {cos(nx+x/2)-cos(x/2)}/{-2sin(x/2)}
という恒等式がある。これを使って整理すると、
f(π/2q) = {2cos(π/4q)-cos(mπ/2q+π/4q)}/2sin(π/4q)-1/2
従って、次を示せば良い。
q≧2、0≦m≦q のとき、 {2cos(π/4q)-cos(mπ/2q+π/4q)}/sin(π/4q) > n = q+m
あるいは、 π/4q=A 、mπ/2q=B とおいて次を示せば良い。
0<A≦π/8、 0≦B≦π/2 に対して、
{2cos(A)-cos(B+A)}/sin(A) > (π/4+B/2)/A ・・・★
空舟さんからのコメントです。(平成26年11月18日付け)
f(x)=Σabs(cos(kx)) [1からn]
次の命題を主張する: cosx≠0 ならば、 f(x) > (n-1)/2 ・・・■
[1] 0≦x≦π/2 で考察すれば良い。
[2] f(x)の極小値を与えるxは以下の形に書ける。:
x=pπ/2q, p,qは互いに素でpは奇数、 q∈{1,2,..,n}
よって示すべきことは以下に帰着される。
q≠1、pとqは互いに素 ならば、 f(pπ/2q) > (n-1)/2 ・・・●
[3] ●は q≦n≦2q の場合を示せば十分である。
[4] さらにp=1 の場合すなわちx=π/2qで考察すれば良い。
[5] そのときn=q+mとおくとf(x)は次のように書ける。
f(x)=Σcos(kx) [1からq] + Σsin(kx) [1からm(m=0のときは0)]
(説明) 示すべき不等式は:q≠1, 0≦m≦q, x=π/2q のとき
Σcos(kx) [1からq] + Σsin(kx) [1からm] > (q+m-1)/2
以下において常に x=π/2q (定数) とする
[6] mx≦π/6 の場合を考えれば良い。すなわち、 3m≦q の場合を考えれば良い。
mx≦π/6の場合に示すべき不等式が成り立つと仮定する:
Σcos(kx)[1からq]+Σsin(kx)[1からK-1] > (q+K-1)/2
mx>π/6の場合に対してkx≦π/6を満たす最大のkをKとすると:
Σsin(kx)[K+1からm] > Σsin(π/6) = (m-K)/2
この2式から
Σcos(kx)[1からq]+Σsin(kx)[1からm]
= Σcos(kx)[1からq]+Σsin(kx)[1からK]+Σsin(kx)[K+1からm]
>(q+K-1)/2 + {m-K}/2= (q+m-1)/2 となって示すべき不等式が従う。
[7] mx≦π/6 を満たす最大のmについて考えれば良い。
従って q=3m, q=3m+1, q=3m+2 のどれかである
(説明) mx≦π/6 を満たす最大のmをMとする。仮定より
Σcos(kx)[1からq]+Σsin(kx)[1からm]+Σsin(kx)[m+1からM] > (q+M-1)/2
よって、
Σcos(kx)[1からq]+Σsin(kx)[1からm]
>(q+M-1)/2 - Σsin(kx)[m+1からM]
>(q+M-1)/2 - Σ1/2[m+1からM] = (q+m-1)/2
[8] m≧1の場合は次のG(x)に対してG(x)>2m を示せば良い。
G(x)=Σ{cos(kx)+cos(2mx-(k-1)x)+sin(mx-(k-1)x)+sin(kx)} [1からm]
よって、 g=cos(kx)+cos(2mx-(k-1)x)+sin(mx-(k-1)x)+sin(kx) ≧ 2 を示せば十分。
(説明) G(x)>2m が示されたとする。
G(x)=Σcos(kx)[1からm]+cos(kx)[2mからm+1]+sin(kx)[mから1]+sin(kx)[1からm]
=Σcos(kx)[1から2m]+cos(kx)[q-mからq-1]+sin(kx)[1からm]
q=3m の場合 f(x)=G(x)-cos(2mx)=G(x)-1/2>2m-1/2 = (4m-1)/2 = (q+m-1)/2
q=3m+1 の場合 f(x)=G(x)>2m = (q+m-1)/2
q=3m+2 の場合 f(x)=G(x)+cos(2mx+x)>G(x)+1/2>(4m+1)/2 = (q+m-1)/2
∵ cos(2mx+x)=sin((m+1)x) > sin(q/3) = 1/2
[9] g≧2 を示す。[8]の実現。
g=cos(kx)+cos((2m+1)x-kx)+sin(mx-(k-1)x)+sin(kx)
= cos(kx)+sin(kx)+cos((2m+1-k)x)+cos((q-m-1+k)x)
= 2cos(π/4)cos(π/4-kx) + 2cos((q+m)x/2)cos((q-3m-2+2k)x/2)
1≦k≦m≦q/3 の範囲でkに対して単調増加関数と分かる。
よって、 k=1 の場合に g≧2 を示せば十分である。
g(k=1)=cosx+sinx+cos(2mx)+sin(mx)
考察区間で、cosx、sinx は正だから、cosx+sinx = √(1+2sinxcosx) > 1
よって、残り示すべきは、 0≦mx≦π/6 の範囲で cos(2mx)+sin(mx)≧1
sin(mx)=s とおくと、 0≦s≦1/2 に対応し、cos(2mx)+sin(mx)-2=(1-2s^2)+s-1=s(1-2s)≧0
これで示すべきことがほぼ示された。
[10] m=0 の場合の検討
[7] より q≦2 に限られる。q=1はcosx=0の場合。
q=2 の場合は個別検討 1/√2 > 1/2 による。
--追記------
(注意) [3]の議論でnが奇数であることを使っています。
(予想) nが8以上の偶数のとき、より強く:cosx≠0 ならば f(x)=Σabs(cos(kx)) [1からn] >n/2
が成り立ちそうです。8以上としたのは...
n=2 のときは x=π/4 で f(x)=1/√2=0.707...
n=4 のときは x=π/6 で f(x)=1+√3/2=1.866...
n=6 のときは x=π/10 で f(x)=2.965...
(話題) xがπ/2の整数倍でなければ、lim[n→∞] (f(x)-n/2)/n → (2-π/2)/π が成り立ち
そうです
(話題) F(x) = ∫|cost| dt [0からx] に対して、x>0 のとき F(x) > x/2 が成り立つようです。