・有理数を表す分数式 at 氏
気が向いたら、次の問題を考えてみてください。
問題 任意の正の有理数 r に対して、r = (a3 + b3)/(c3 + d3) となるような正の整数 a,b,
c,d が存在することを示せ。
例えば、r = 2014/89 に対しては、
a=15245564020815625,b=5028023793584375,c=4995666418340864,d=3348083581659136
とすれば、(a3 + b3)/(c3 + d3) = r となります。)
DD++さんが考察されました。(平成26年8月15日付け)
r=p/q とし、3<r・(s/t)3<9 となるような自然数 s,t を探します。有理数の稠密性より、こ
のような s,t は必ず存在します。このとき、
a=3ps3t+9qt4 、b=3ps3t-9qt4 、c=ps4+9qst3 、d=-ps4+9qst3
とすると、 b=3qt4(r・(s/t)3-3)>0 、c=qst3(-r・(s/t)3+9)>0 より、これらは全て自然数で
あり、恒等式 (a3 + b3)/(c3 + d3) = p/q が成立します。
実際に、 a3 + b3=54p3s9t3+1458pq2s3t9=p(54p2s9t3+1458q2s3t9)
c3 + d3=54p2qs9t3+1458q3s3t9=q(54p2s9t3+1458q2s3t9)
より、 (a3 + b3)/(c3 + d3) = p/q が成り立つ。
例として、2014/89 の場合は、2014/89*(2/3)3=6.70…… なので、p=2014、q=89、s=2、t=3
として、 2014/89 = (2098893+801273)/(754783+110303) とできます。
もっと簡単な恒等式も作れるでしょうかね?
(コメント) r から、a、b、c、d を実際に構成されているわけで、感動的ですね!
at さんからのコメントです。(平成26年8月15日付け)
DD++さん、この問題を考えていただき、ありがとうございます。DD++さんの解法は鮮やか
ですね。見事に証明できていると思います。以下は別解です。
(1) 1/2 < r < 2 の場合、r=n/m (n、mは正の整数)とする。
a=m+n、b=2n-m、c=m+n、d=2m-n とすれば、(a3 + b3)/(c3 + d3) = r となる。
(2) r が一般の有理数の場合、整数sを適当に選べば、1/2 < (64/125)s・r < 2 となる。
s>0 のときは、p=4s、q=5s、 また、 s<0 のときは、 p=5-s、q=4-s とおくことによって、
1/2 < (p/q)3・r < 2 となる。このとき、(1)より、ある正の整数A、B、C、Dを用いて、
(p/q)3・r=(A3 + B3)/(C3 + D3)
と表せる。よって、 a=Aq、b=Bq、c=Cp、d=Dp とすれば、(a3 + b3)/(c3 + d3) = r となる。
DD++さんからのコメントです。(平成26年8月15日付け)
「a=m+n、b=2n-m、c=m+n、d=2m-n とすれば、(a3 + b3)/(c3 + d3) = r」とは...おお、そ
んな組み合わせが...素晴らしい。
GAI さんからのコメントです。(平成26年8月15日付け)
どうも三乗和には、フェルマーの大定理「x3+y3=z3 を満たす自然数が存在しない」に引き
ずられて、敬遠する心理があるが、どんな有理数でも成り立つというものすごい条件下で、
この三乗和(しかも、その2つの商)にこんな強力な法則が存在しているなんてビックリです。
半日は、この問題にあれこれ挑戦しておりましたが、どこから攻めても跳ね返されていました。
DD++さんのいつものような、どこからこんな解法を思い付くんだろうという手法の見事さに
圧倒され、ここに書かれた情報を元にあらゆる有理数とはいきませんが、そのほんの一部
である以下の有理数を構成してみました。確かに作れることに改めて驚いています。
(→ 数式の例)
DD++さんからのコメントです。(平成26年8月15日付け)
最小とはだいぶかけ離れた数になりますけどね。問題を見て最初に整数について人力でこ
こまで作ったりしていましたが、この式で作ったものはこれよりだいぶ大きくなると思います。
1=(1^3+1^3)/(1^3+1^3)
2=(8^3+10^3)/(3^3+9^3)
3=(17^3+37^3)/(21^3+21^3)
4=(3^3+9^3)/(4^3+5^3)
5=(6^3+9^3)/(4^3+5^3)
6=(3^3+3^3)/(2^3+1^3)
7=(9^3+12^3)/(2^3+7^3)
8=(2^3+2^3)/(1^3+1^3)
9=(63^3+63^3)/(17^3+37^3)
10=(1^3+19^3)/(7^3+7^3)
11=見つけられず
12=(42^3+84^3)/(17^3+37^3)
13=(9^3+12^3)/(4^3+5^3)
14=(1^3+3^3)/(1^3+1^3)
これでも最小(一応、4数のうち最大のもので比較するとしましょう)ではないものもあると思
いますが...。また、私の発想の痕跡を記しておきます。
3乗和が難しいのは、何か置き換えたときに項数が増えるからなんですよね。そこで3乗和
を (x+y)3+(x-y)3 と考えることで、 2x(x2+3y2) と項数をある程度抑えることを考えました。
あとはこの和をどうするかですが、分母側にも同じような和が出てくるので、
(x2+3y2)/((3y)2+3x2)=1/3 という形にすることで消します。すると単純な分数になるので、余
計な3をうまく打ち消すのと、整数が全部正になるように帳尻合わせをしてあの形になります。