・整数三角形の分類 GAI 氏
3辺と面積が整数となる三角形を整数三角形と呼ぶとする。このとき、3辺が等差数列と
なり、いずれの辺も100以下となる整数三角形は何タイプ存在するか?
ここで、タイプとは相似の三角形は同じタイプと分類することを意味する。
このうち、鋭角三角形、直角三角形、鈍角三角形の割合はどのような比率であるか。
らすかるさんが考察されました。(平成26年7月9日付け)
(3,4,5)形(直角三角形)が、20個
(13,14,15)形(鋭角三角形)が、6個
(15,26,37)形(鈍角三角形)が、2個
(15,28,41)形(鈍角三角形)が、2個
(17,28,39)形(鈍角三角形)が、2個
後は1個ずつで、鈍角三角形が、(25,38,51)、(29,52,75)、(39,62,85)の3個
鋭角三角形が、(51,52,53)、(61,74,87)、(65,76,87)、(75,86,97)の4個
集計すると、
直角三角形:1パターン20個 、鋭角三角形:5パターン10個 、鈍角三角形:6パターン9個
合計:12パターン39個
となりました。
GAI さんからのコメントです。(平成26年7月9日付け)
らすかるさんに追試してもらって、このアルゴリズムでいけると確信できたので、辺の長さを
1000までに拡張して調べてみました。
相似になる個数は調べませんでしたが、パターンについての分類をしました。
辺の長さを1000までにして調査
<直角三角形>(1パターン) ・・・ {3,4,5} 0
<鋭角三角形>(40パターン)
{13,14,15} 1 、{51,52,53} 1 、{193,194,195} 1 、{723,724,725} 1 、{65,76,87}
1 、{75,86,97} 1
{267,278,289} 1 、{305,316,327} 1 、{61,74,87} 1 、{111,124,137} 1 、{255,268,281}
1
{445,458,471} 1 、{123,146,169} 1 、{173,196,219} 1 、{509,532,555} 1 、{699,722,745}
1
{145,182,219} 1 、{375,412,449} 1 、{615,652,689} 1 、{197,244,291} 1 、{447,494,541}
1
{831,878,925} 1 、{255,314,373} 1 、{545,604,663} 1 、{303,364,425} 1 、{493,554,615}
1
{365,436,507} 1 、{555,626,697} 1 、{265,338,411} 1 、{795,868,941} 1 、{339,422,505}
1
{809,892,975} 1 、{435,532,629} 1 、{401,508,615} 1 、{687,796,905} 1 、{697,806,915}
1
{421,542,663} 1 、{543,686,829} 1 、{629,772,915} 1 、{613,794,975}
1
<鈍角三角形>(64パターン)
{15,26,37} 2 、{17,28,39} 2 、{15,28,41} 2 、{25,38,51} 2 、{29,52,75} 2 、{39,62,85} 2
{39,76,113} 2 、{85,122,159} 2 、{51,98,145} 2 、{101,148,195} 2 、{65,124,183} 2
{123,182,241} 2 、{73,134,195} 2 、{111,172,233} 2 、{87,158,229} 2 、{125,196,267} 2
{75,148,221} 2 、{181,254,327} 2 、{89,172,255} 2 、{183,266,349} 2 、{109,206,303}
2
{195,292,389} 2 、{111,218,325} 2 、{257,364,471} 2 、{157,266,375} 2 、{159,268,377}
2
{123,244,365} 2 、{313,434,555} 2 、{185,316,447} 2 、{195,326,457} 2 、{149,292,435}
2
{159,302,445} 2 、{293,436,579} 2 、{339,482,625} 2 、{205,362,519} 2 、{255,412,569}
2
{221,388,555} 2 、{267,434,601} 2 、{219,388,557} 2 、{277,446,615} 2 、{185,364,543}
2
{435,614,793} 2 、{183,364,545} 2 、{481,662,843} 2 、{195,386,577} 2 、{485,676,867}
2
{205,398,591} 2 、{435,628,821} 2 、{291,518,745} 2 、{377,604,831} 2 、{327,556,785}
2
{337,566,795} 2 、{255,494,733} 2 、{291,532,773} 2 、{433,674,915} 2 、{305,556,807}
2
{447,698,949} 2 、{255,508,761} 2 、{265,518,771} 2 、{269,532,795} 2 、{325,602,879}
2
{303,602,901} 2 、{353,652,951} 2 、{317,628,939} 2
らすかるさんからのコメントです。(平成26年7月9日付け)
10000まででは、
直角三角形: 1パターン 、鋭角三角形: 410パターン 、鈍角三角形: 650パターン
100000まででは、
直角三角形: 1パターン 、鋭角三角形: 4093パターン 、鈍角三角形: 6514パターン
でした。私が興味を持ったのは、
{3,4,5}、{13,14,15}、{51,52,53}、{193,194,195}、{723,724,725}、{2701,2702,2703}、・・・
という公差1の等差数列がいくらでも存在する、つまり、
三辺と面積が整数で正三角形にいくらでも近い三角形が存在する
という点ですね。この数列は、「A016064」によると、短辺の数列 3,13,51,… が
a[n]=4a[n-1]-a[n-2]+2 という漸化式とかa[n]=(2+√3)^n+(2-√3)^n-1 という式で表せるそう
です。あと、直角三角形が(3,4,5)形以外にないことは簡単に証明できますね。
DD++さんからのコメントです。(平成26年7月9日付け)
以下の各命題はそれぞれ真と思いますが、いかがでしょうか。
問題にしている三角形のうち三辺の長さが共通因数を持たないものについて
(1) 公差は必ず奇数で、最短辺も最長辺も奇数、残り一辺は偶数
(2) 公差を奇数 b とするとき、このような三角形は、a2-b2=3c2 となるような a を用いて、
(2a-b,2a,2a+b)と書ける。
(3) 公差1の場合、a2-1=3c2 すなわち、 a2-3c2=1 より、ペル方程式 x2-3y2=1の解のxの
値の2倍とその±1が辺長である。
「a[n]=(2+√3)^n+(2-√3)^n-1 という式で表せるそうです。」について、
ペル方程式 x2-3y2=1 の解は、 ±1/2 {(2+√3)n+(2-√3)n} です。
らすかるさんからのコメントです。(平成26年7月9日付け)
探索結果に対して、その命題を満たしているかどうか調べたところ、すべて満たしていまし
た。また、その命題を満たす三角形の個数も一致しています。この命題によると、少し速く
数えられますので、1000000までを調べたところ、
直角三角形: 1パターン 、鋭角三角形: 40891パターン 、鈍角三角形: 65198パターン
となりました。
GAI さんからのコメントです。(平成26年7月10日付け)
「 (1) 公差は必ず奇数で、最短辺も最長辺も奇数、残り一辺は偶数」について、1000まで
の長さの調査に限って言えば、公差dは、その全てが12で割ると余りが1か11のタイプになっ
ています。
逆に、上記の条件を満たすからといって、この公差になれるとはならないものが、
{25,35,49,85,95,119,133,145,155,203,205,215,217,239,265,275,287,289,301,・・・}
結構、5の倍数が多い気がします。
DD++さんからのコメントです。(平成26年7月10日付け)
らすかるさん、調査ありがとうございます。鋭角三角形と鈍角三角形の比率が一定の値に
収束しているように見えますね。どんな値なんだろう。
らすかるさんからのコメントです。(平成26年7月10日付け)
a2-b2=3c2 の自然数解(a、b、cは互いに素)で、2a+b≦N を満たすもののうち、a<2b であ
るものが鈍角三角形、a>2b であるものが鋭角三角形ということになりますので、解が均一
に分布しているとすれば、(y=-x/2+(N/2) と y=2x のグラフからわかるように)
鋭角三角形 : 鈍角三角形 = 2 : 3
になるはずですが、少なくともN=1000000程度までは鈍角三角形の比率がやや多いですね。
「互いに素」という条件がきいているのかも知れませんが、よくわかりません。
40時間かけて、10,000,000までのパターン数を調べました。
直角三角形: 1 、鋭角三角形: 409055 、鈍角三角形: 652020
やはり鈍角三角形の比率は、約0.6145 ぐらいですね。黄金比にやや近いですが、素数が
関係していそうなので、やはりπとかlog系の値ですかね。
DD++さんからのコメントです。(平成26年7月11日付け)
たぶん解けました。鈍角三角形の割合は、6arctan(1/3)/π=0.614498……
(ただし、最大辺長<Nで考えてN→∞とした場合の収束値)
個数の近似値も、もしかしたら出せるかもしれません。詳細は整理し直すまで少々お待ちを。
極限を面積<Nで考えて、N→∞とか、周りの長さ<Nで考えて、N→∞とかするとたぶん割合
が変わります(ベルトランパラドクスのようなもの)。面積は四次曲線が出てくるので扱える気
がしませんが、周長<Nで考えてN→∞だと、たぶん綺麗に2/3に収束するんじゃないかと思い
ます。試してみていただけませんか?
らすかるさんからのコメントです。(平成26年7月11日付け)
解けましたか!それはすごい。6arctan(1/3)/πという式なら適当に考えて思いつくわけな
いですね。10,000,000の時の値が 0.61449002… なので、かなり正確に合ってますね。
「周長<Nで考えてN→∞だと、たぶん綺麗に2/3に収束するんじゃないか」ということで、早
速やってみました。
N=100:鋭角 1個、鈍角 3個 → 鈍角割合 0.75
N=1000:鋭角 15個、鈍角 30個 → 鈍角割合 0.66666666…
N=10000:鋭角 155個、鈍角 307個 → 鈍角割合 0.66450216…
N=100000:鋭角 1530個、鈍角 3064個 → 鈍角割合 0.66695690…
N=1000000:鋭角 15314個、鈍角 30622個 → 鈍角割合 0.66662312…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
と、見事に2/3に収束していました。
DD++さんからのコメントです。(平成26年7月12日付け)
特に断りがない限り、文字は自然数です。3辺の長さが等差数列を成す互いに素な自然
数かつ面積が自然数である三角形の種類の割合について、17段階に分けて考えます。
(1) 2番目の辺の長さは偶数
3辺の長さを、 m-d、m、m+d とすると、周長は 3m なので、ヘロンの公式より、面積は、
√(3m2(m+2d)(m-2d)/16)
このとき、もし、mが奇数なら、3m2(m+2d)(m-2d) は奇数なので、面積は整数にならない。
よって、m すなわち、2番目の辺の長さは偶数。
(2) 公差は奇数
もし、d が偶数なら、辺の長さは全て偶数なので互いに素でなくなる。したがって、d すなわ
ち公差は奇数。
以下、m=2a とおき、d は奇数とする。
(3) a と d は互いに素
a も d も p の倍数とすると、3辺の長さ 2a-d、2a、2a+d は、全て p の倍数。よって、p=1 以
外ありえず、a と d は互いに素。
(4) a+d と a-d の最大公約数は、1 か 2
a+d も a-d も p の倍数とすると、和 2a と差 2d は p の倍数。a と d は互いに素なので、
p は、1 または 2。a+d と a-d の偶奇は一致し、かつ、d は奇数なので、
aが偶数 <==> 最大公約数は、1 、aが奇数 <==> 最大公約数は、2
(5) 3辺の長さは、 ((1/2)x2+(9/2)y2,x2+3y2,(3/2)x2+(3/2)y2)
(x、y は互いに素、どちらも奇数で、x は3の倍数ではない)
または、(x2+9y2,2x2+6y2,3x2+3y2)
(x、y は互いに素、片方は偶数、x は3の倍数ではない)
のいずれかと書ける。
三角形の面積は、 a√(3(a+d)(a-d)) となる。a+d と a-d の最大公約数は、1 か 2 であって、
3(a+d)(a-d) が平方数となるので、
最大公約数 1 のとき、 {a+d,a-d}={x2,3y2} で、このとき、x と y は以下の性質を満たす。
・ x と y は互いに素(a+d と a-d が互いに素だから)
・ x は3の倍数でない(同上)
・ x も y も奇数(a+d も a-d も奇数だから)
このとき、等号の組み合わせにかかわらず、3辺の長さ 2a-d、2a、2a+d は、
((1/2)x2+(9/2)y2,x2+3y2,(3/2)x2+(3/2)y2) と書ける。
最大公約数 2 のとき、 {a+d,a-d}={2x2,6y2} で、このとき、x と y は以下の性質を満たす。
・ x と y は互いに素((a+d)/2 と (a-d)/2 が互いに素だから)
・ x は3の倍数でない(同上)
・ x と y の片方は偶数( a も d も奇数だから)
このとき、等号の組み合わせにかかわらず、3辺の長さ 2a-d、2a、2a+d は、
(x2+9y2,2x2+6y2,3x2+3y2) と書ける。
なお、いずれの場合も長さは長い順か短い順かは不定。
(6) ((1/2)x2+(9/2)y2,x2+3y2,(3/2)x2+(3/2)y2) は常に三角形が成立する。
x2+3y2 は最小辺でも最大辺でもなく、(1/2)x2+(9/2)y2>0 、(3/2)x2+(3/2)y2>0
(1/2)x2+(9/2)y2<x2+3y2+(3/2)x2+(3/2)y2 、(3/2)x2+(3/2)y2<x2+3y2+(1/2)x2+(9/2)y2
は全て自明に成立する。
(7) (x2+9y2,2x2+6y2,3x2+3y2) は常に三角形が成立する。
上の(6)を全て2倍しただけなので成立。
(8) (1/2)x2+(9/2)y2<N かつ x2+3y2<N かつ (3/2)x2+(3/2)y2<N なる自然数の組は、
Nπ/9 個
x2+3y2<N は他が満たされれば成立。Nが充分大きい場合、その個数は、
(1/2)x2+(9/2)y2<N かつ (3/2)x2+(3/2)y2<N かつ x>0 かつ y>0 の面積
と考えてよい。y=x で上下に分割すると、
下側は、半径 √(2N/3)、中心角 π/6 の扇形なので、面積は、 Nπ/18
上側は、x 軸方向に 1/ に縮小して、y 軸方向に倍すると同じ形になるので、面積
は、 Nπ/18
あわせると、そのような自然数の組は、 Nπ/9 個
(9) x2+9y2<N かつ 2x2+6y2<N かつ 3x2+3y2<N なる自然数の組は、 Nπ/18 個
上の(8)の半分なのは明らか。
(10) 充分大きい上限のもとで x 、y を選ぶとき、x 、y は互いに素、かつ、どちらも奇数、
かつ、x は3の倍数ではない割合は、 3/(2π2)
1/ζ(2)=6/π2=(1-1/4)(1-1/9)(1-1/25)(1-1/49)(1-1/121)…… より、求める割合は、
(1/2)^2×2/3×(1-1/25)(1-1/49)(1-1/121)……=1/6×(6/π^2×4/3×9/8)=3/(2π2)
(11) 充分大きい上限のもとで x 、y を選ぶとき、x 、y は互いに素、かつ、片方は偶数、
かつ、x は3の倍数ではない割合は、 3/π2
同様に計算できる。
(12) 鋭角、鈍角問わず、条件を満たす辺長<Nの三角形は、 N/3π 個ある
上記(5)〜(11)より、 Nπ/9×3/2π2+Nπ/18×3/π2=N/3π
(13) 鈍角三角形になる条件は、y<x/3 または y>x
((1/2)x2+(9/2)y2,x2+3y2,(3/2)x2+(3/2)y2) の場合、
{(1/2)x2+(9/2)y2}2>{x2+3y2}2+{(3/2)x2+(3/2)y2}2
または、{(3/2)x2+(3/2)y2}2>{x2+3y2}2+{(1/2)x2+(9/2)y2}2
これを解けば、 y>x または y<x/3 となる。
(x2+9y2,2x2+6y2,3x2+3y2) の場合は、全て2倍しただけなので同様。
(14) (1/2)x2+(9/2)y2<N かつ x2+3y2<N かつ (3/2)x2+(3/2)y2<N かつ
(y<x/3 または y>x) なる自然数の組は、 (2N/3)arctan(1/3) 個
x2+3y2<N は他が満たされれば成立。Nが充分大きい場合、その個数は、
(1/2)x2+(9/2)y2<N かつ (3/2)x2+(3/2)y2<N かつ x>0 かつ y>0 かつ (y<x/3 または y>x) の
面積と考えてよい。
2つに分かれた領域の下側は、半径 √(2N/3)、中心角 arctan(1/3) の扇形なので、面積
は、 (N/3)arctan(1/3)
上側は、x 軸方向に 1/ に縮小して、y 軸方向に倍すると同じ形になるので面積は、
(N/3)arctan(1/3)
あわせると、そのような自然数の組は、 (2N/3)arctan(1/3) 個
(15) x2+9y2<N かつ 2x2+6y2<N かつ 3x2+3y2<N かつ (y<x/3 または y>x) なる自然数の
組は、 (N/3)arctan(1/3) 個
上の(14)の半分なのは明らか。
(16) 条件を満たす辺長<Nの鈍角三角形は、 (2N/π2)arctan(1/3) 個
(2N/3)arctan(1/3)×3/2π2+(N/3)arctan(1/3)×3/π2 = (2N/π2)arctan(1/3)
(17) Nが充分大きいとき、鈍角三角形の割合は、(6/π)arctan(1/3)
(2N/π2)arctan(1/3) / (N/3π) = (6/π)arctan(1/3)
(確かめ) N=10000000 のとき、条件を満たす三角形は、10000000/3π = 1061033 個
鈍角三角形は、 (20000000/π2)arctan(1/3) = 652003 個
鋭角三角形は、 1061033-652003 = 409030 個
よって、鈍角の割合は、 (6/π)arctan(1/3) = 0.614498
実際(らすかるさん調査)は、三角形は 1061076 個
鈍角三角形は 652020 個 、鋭角三角形は 409055 個 (直角三角形が1個)
よって、鈍角の割合は、 0.614490
やはり、周辺のとこで数十個の誤差は出ますが、それなりに正確なようです。
らすかるさんからのコメントです。(平成26年7月13日付け)
DD++さん、大作で、一つの論文に出来そうな内容ですね。はっきりと理論的な裏付けが出
来て良かったです。