・パスカルの三角形 S.K.氏
札幌で高校教員をされているというS.K.さんから、平成26年5月26日付けでメールを
頂いた。ちょっと忙しかったので返信が遅れたことをお詫び申し上げます。
(以下、文言等を一部修正・加筆させていただきました。ご了解ください。)
同僚の先生から、
n≧3とする。パスカルの三角形において、
n2−1段目に等差数列が現れ、しかも、この場合に限る
という問題をもらい、次のように考えてみました。この結果についてのご意見を伺えれば幸
いです。
定 理 n≧3 とする。パスカルの三角形に等差数列が現れるのは、n2−1段目であり、
この場合に限る。
より具体的には、 n2-2Ck-1 、n2-2Ck 、n2-2Ck+1 (ただし、k=(n2±n-2)/2)
例 n=3 のとき、k=2、5 で、7C1=7、7C2=21、7C3=35 ・・・ 等差数列
7C4=35、7C5=21、7C6=7 ・・・ 等差数列
従って、パスカルの三角形の8段目に、等差数列
・・・、7、21、35、・・・、35、21、7、・・・
が垣間見える。
n=4 のとき、k=5、9 で、14C4=1001、14C5=2002、14C6=3003 ・・・ 等差数列
14C8=3003、14C9=2002、14C10=1001 ・・・ 等差数列
従って、パスカルの三角形の15段目に、等差数列
・・・、1001、2002、3003、・・・、3003、2002、1001、・・・
が垣間見える。
(コメント) 「等差数列が現れる」とはいうものの、「差が一定な3数が現れる」と言った方が
自然かも...。しかも、それらはパスカルの三角形の至る所に分布していて、あ
まり有り難みがないかな?
(証明) n2−1段目に存在する等差数列を実際に構成してみる。
n2-2Ck+1−n2-2Ck=n2-2Ck−n2-2Ck-1 より、
(n2−k−1)(n2−k−2)−(n2−k−1)(k+1)=(n2−k−1)(k+1)−k(k+1)
すなわち、 (n2−k−1)(n2−2k−3)=(n2−2k−1)(k+1) より、
4k2−4(n2−2)k+n4−5n2+4=0
これをkについて解くと、k=(n2±n−2)/2 が得られる。
ここで、特に、n≧3 の場合、(n2±n)/2 は整数であるから、このようなkは整数として存在
し、条件を満たす2項係数は確かに存在する。
(条件を満たすことについては、kに代入して確かめればよい。)
等差数列は、n2−1段目にのみ存在することを、背理法で証明する。
A(≠n2−1)段目に等差数列が存在すると仮定すると、上記と同じ方法で、kに関する2次
方程式 4k2−4(A−1)k+A2−3A=0 を得る。条件から、この方程式は自然数解を持つ
はずである。
他方、この方程式の解は、k={A−1±√(A+1)}/2 で、A+1 は平方数でなければい
けないが、このことは、A≠n2−1 という仮定に反し、矛盾する。
従って、パスカルの三角形に等差数列があらわれるのは、n2−1段目に限る。 (証終)