・一回転はなぜ360度?                  GAI 氏

 以前から気になっていた疑問でしたが、このほど

  一松 信 著 「現代に活かす初等幾何入門」 (岩波書店)

という本を読んでいたら、次のような記述に出会った。

 Ptolemy(Ptolemaiosの英語流綴り)の定理は、何回となく再発見されているように、実は弦
関数(円弧に対する弦の長さ2SIN(θ/2)に相当)の加法定理に他ならない。Ptolemaios自身
これを弦関数の数表作成に活用した。このときバビロニアの60進法体系により、半径60の
円で長さ60の弦の中心角を60度と設定したのが、全周を360度とする慣用の度分秒の尺度
になった。


 この部分を読んで、以下のことを感じました。

 プトレマイオスは英語綴りからトレミーと呼ばれることもある。(Pは発音しないのだろう)

 プトレマイオスの定理とは、

 4点A,B,C,Dがこの順に同一の円周上にあるとき、AB・CD+BC・AD=AC・BD が成り立つ。

であるが、これは本質的に三角関数の加法定理と同一の概念である。
さすが頭脳明晰、本質をえぐりだす能力に脱帽

 当時は弧度法ではなく、弦度法ともいう捉え方をしていた。
円周の長さという当時では捉えがたいものでは関連付けないのがむしろ当然であろう。

 プトレマイオスが生きていた(83年頃〜168年頃)時代、紀元前500年余り前のバビロニ
アの文化の影響を強く受けていた驚き。

 全周の360がまずあるのではなく、半径、弦、中心角が当時の数体系の60進法に影響を受
け、これを揃える数値として60度が起こり、従って、全周が360度という現代に繋がるものに
なっている。

 これですっきり360度が腹に収まった感じでした。

 この一松 信 氏の本は題目に「初等」と入れてありますが、読んでみるとなぜ初等?と思う
ほど中身が濃く、専門家と呼ばれる人たちのもの凄い知識量に圧倒されます。
でも確か一松氏は多変数関数論が専門ではなかったでしょうか。言ってみれば趣味?

 現代に活かすとも副題を入れてあるように、古代から連綿と受け継がれてきた幾何学での
発見を再認識する、難しいけど読み応えのある本です。


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