・整数を含む分数列                       S.H氏

 nを正の整数とする。分数列

    n/1,(n+1)/2,(n+2)/3,(n+3)/4,(n+4)/5,(n+5)/6,・・・

において、分数のうち整数になるものの個数がちょうど3個であるという。

 このようなnはどのような数か答えよ。

           (出典:財団法人 日本数学検定協会「数学甲子園2012」 予選問題)


 職場の机を整理していたら、ちょっと面白そうな問題が出てきたので、考えてみた。


 分数列の第k項は、(n+k−1)/k (k=1、2、・・・)で、分数列は、単調に減少する。

 実際に、(n+k−1)/k−(n+k)/(k+1)=(n−1)/k(k+1)≧0 から、

      (n+k−1)/k≧(n+k)/(k+1)

 上記の数列の項に1が出現するのは、n=1の場合のみ。このとき、数列の各項はすべて
1となる。

 実際に、(n+k−1)/k=1 とすると、 n+k−1=k すなわち、 n=1

 よって、題意を満たすためには、3個の整数の最小値は、2以上となる。

そこで、 (n+k−1)/k=2 とすると、 k=n−1(≧1) より、 n≧2 となる。

 n=2、3 のとき、明らかに不適。
 n=4 のとき、k=3 で、分数列は、
    4,5/2,2,・・・ となり、題意を満たさない。
 n=5 のとき、k=4 で、分数列は、
    5,3,7/3,2,・・・ となり、題意を満たす。
 n=6 のとき、k=5 で、分数列は、
    6,7/2,8/3,9/4,2,・・・ となり、題意を満たさない。
 n=7 のとき、k=6 で、分数列は、
    7,4,3,5/2,11/5,2,・・・ となり、題意を満たさない。
 n=8 のとき、k=7 で、分数列は、
    8,9/2,10/3,11/4,12/5,13/6,2,・・・ となり、題意を満たさない。
 n=9 のとき、k=8 で、分数列は、
    9,5,11/3,3,13/5,7/3,15/7,2,・・・ となり、題意を満たさない。
 n=10 のとき、k=9 で、分数列は、
   10,11/2,4,13/4,14/5,5/2,16/7,17/8,2,・・・ となり、題意を満たす。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 以上の試算から、n=5、10、・・・ で題意を満たすことが分かった。このことから、試しに、
「nは5の倍数?」と予想を立ててみたところ、この予想は見事に裏切られてしまった!

 実際に、n=15 のとき、k=14 で、分数列は、
 15,8,17/3,9/2,19/5,10/3,3,11/4,23/9,12/5,25/11,13/6,27/13,2,・・・
となり、題意を満たさないことが分かる。

 問題の問いかけでは、「このようなnはどのような数か答えよ。」とあるので、多分答えは無
数にあって、しかも式でしっかり書き上げることが出来る数なのだろう。

 nを求めるためには、どうやら上記の計算ではなく発想の転換が必要なようだ。


(解) 分数列の第k項 (n+k−1)/k=m とすると、 n+k−1=mk

 このとき、 n−1=k(m−1) を満たすような正の整数の組(m,k)が、ちょうど3個存在
するようなnを求めればよい。

 ここで、m=1とすると、n=1 (kは任意)となり、題意に反するので不適。

よって、m≧2 としてよい。このとき、n−1≧1 で、n≧2 である。

 n−1=k(m−1) から、kは、n−1の約数。

よって、n−1の約数がちょうど3個存在すればいい。

 例えば、n=5 の場合、n−1=4で、正の約数は1,2,4の3個。

 つまり、n−1=1×4, 2×2, 4×1 より、(m,k)=(5,1),(3,2),(2,4) で、
ちょうど3組となる。

 正の約数がちょうど3個になるのは、3が素数なので、積の法則から、

 n−1=p2 (p:素数) すなわち、 n=p2+1 (p:素数)

のときに限る。


 ABCDEFさんにも解いて頂きました。(平成26年3月25日付け)

 (n+k)/(k+1)=m (mは整数) となるような負でない整数kの個数がちょうど3個である
ようなnを求めればよい。

 n+k=mk+m より、 mk+m−k=n すなわち、 (m−1)(k+1)=n−1

 k+1は、n−1の約数であるから、n−1の正の約数の個数がちょうど3個であればいい。

n−1が2個以上の素因数をもてば、そのうちの2つを、p、qとすれば、1、p、q、pqは、n−1

の正の約数だから条件を満たさない。従って、n−1の素因数は1個で、peである。これの正

の約数は、e+1個であるから、e=2、n−1=p2 より、 n=p2+1 (pは素数)

※ p=2、3、5、7、・・・ のとき、 n=5、10、26、50、・・・



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