・ 面積計算の苦労                  S.H氏


双曲線関数
ことは易しい。 
 において、直線 X=1、X=2、X軸で囲まれた部分の面積を計算する

双曲線の面積   それは、ニュートン、ライプニッツによる微分
  積分学の確立によっている。かれらは、微分
  と積分の関係を明らかにし、図形の面積計算
  に画期的な進歩をもたらした。
  
   実際に、面積を計算すれば、
      
  である。(おおよそ、0.6931471806・・・)
   
   しかしながら、微分積分学が誕生して初めて
  左図のような図形の面積が求められたわけで
  はないことを、我々はしっかり心に留めて置か
  なければならない。
   そこには人類の飽くなき挑戦の歴史がある。

 微分積分学の発見以前、ブラウンカー(1620〜1684)は、上図の面積を次のように計算した。

              

 上図のように区間 [1,2] で2分割を繰り返して、小さい長方形を積み上げていく。
  このとき、求める面積Sは、
           
  すなわち、
           

  各項に部分分数分解を施せば、
           
  となる。
 後は、地道に、この分数計算を実行すればよい。

 私自身、すぐ値が 0.69314・・・に近づくだろうと思って、関数電卓を使用して、50項まで計
算してみたが、いっこうに埒があかず、止めてしまった。この級数は涙が出るくらい収束するスピ
ードが遅い。でも、多分昔の人は、そんなことにめげずに、ひたすら計算したに違いない。頭が
下がる思いである。

 そこで、表計算ソフトの Excel のマクロを活用して求めることにした。使用したマクロは次の
ようである。

     Function S(n)
     If n=1 Then
       S=1
     Else
       S=S(n-1) + ((−1) ^ (n−1)) * (1/n)
     End If
     End Function

 Excel を起動し、[ツール]−[マクロ]−[Visual Basic Editor] とクリックして Editor
を起動し、[挿入]−[標準モジュール] を選択して、上記を記述すればよい。後は、Excel の
任意のセルに、例えば、 =S(10) と打ち込むと、瞬時に、10項分の計算結果が得られる。

 以下に、その計算結果をあげる。

100 0.68817 1100 0.69269 2100 0.69291
200 0.69065 1200 0.69273 2200 0.69292
300 0.69148 1300 0.69276 2300 0.69293
400 0.69190 1400 0.69279 2400
500 0.69215 1500 0.69281 2500
600 0.69232 1600 0.69284 2600
700 0.69243 1700 0.69285 2700
800 0.69292 1800 0.69287 2800
900 0.69259 1900 0.69288 2900
1000 0.69265 2000 0.69290 3000

 上記の表からも分かるように、2300項分計算しても、小数第3位すら正しい値を得ることが
できない。しかし、大体 0.69・・・位ということは確かめられる。
 このことからも、積分計算の有り難味が分かるというものであろう。

(参考文献:遠山 啓 著 数学入門(下) (岩波新書))

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