・見知らぬ乗客                     S.H氏

 数学IIIで学ぶ無理方程式、例えば、√(2−x)=x の解は1しかない。しかし、代数的に
解く過程、すなわち、

  √(2−x)=x の両辺を平方して、 2−x=x2 から、x2+x−2=0

  よって、 (x+2)(x−1)=0 より、 x=−2、1

を見ると、本来解ではない値「−2」が紛れ込む。x=−2は無理方程式 −√(2−x)=x
の解である。

 なぜ、このようなことが起こるかと問われれば、「両辺を平方する」段階で同値変形が崩
れているからと答えれば十分だろう。

 無理方程式の場合は、y=√(2−x)、y=−√(2−x)のグラフと直線 y=x の交わり方
を考えれば合点がいく。

 それでは、次の事例はどうだろうか?

問題 円 x2+y2=1 と放物線 y=(1/4)x2−1 の交点の座標を求めよ。

 4次方程式を避けるために、ある方が次のように解いた。

 円 x2+y2=1 に放物線 x2=4y+4 を代入して、 y2+4y+3=0 より、

 (y+1)(y+3)=0  よって、 y=−1、−3

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 円と放物線を描いてみれば、答えは、「y=−1」となるはずなのだが、「y=−3」は、どん
な訳があって突然出現したのだろう?「y=−3」のとき、実数 x が存在しないとして簡単に
除外はできるのだが...。

 この現象は、次のように解けば回避される。

 円 x2+y2=1 に放物線 y=(1/4)x2−1 を代入して整理すると、 x2(x2+8)=0

 よって、 x=0、y=−1 から、交点は、(0,−1)


 さて、「y=−3」には、どんな意味があるのだろう。

 xy 平面では、円 x2+y2=1 だが、x を純虚数 x=t・i (i は虚数単位)とすると背景が見え
てくる。

 −t2+y2=1 より、 t2−y2=−1  これは、原点中心で y 軸に焦点を持つ双曲線である。

この式に、y=−(1/4)t2−1 より、t2=−4y−4 を代入して、y2+4y+3=0

 すなわち、 y=−1、−3 となるが、

   y=−1 のとき、 t=0 、y=−3 のとき、 t=±2


(コメント) y=−1 のときは、2曲線は確かに接しているが、y=−3 のときは、2曲線は交
      わってしまう。だから、不適なんですね!

(参考) 当HPがいつもお世話になっているS(H)さんがこの話題について考察されている。
    (→ 平成25年7月15日付け S(H)さんの話題

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