・ 上手い計算                      S.H氏

 逆関数の計算は、Y=F(X) の形の関数を、X=F(Y) とし、これを解いて、Y=G(X) の形にす
ればよい。逆関数のグラフは、もとの関数のグラフと直線 Y=X に関して対称、という優れた
性質を持っているので、グラフの洞察に有効である。しかしながら、現行の学習指導要領では、
逆関数の指導は数学Vにあり、数学Uにおける指数関数・対数関数の指導には生かせない。
私が高校生の頃、逆関数の話は高校1年であり、いろいろおもしろい問題にぶつかり、数学を
楽しませてもらった。この逆関数の計算は基本的な計算であり、国民的な素養とも考えられる
が、数学Vに項目設定されている以上、高校生の過半数は学習しない。これは憂慮されるべ
き事態である。

例 Y=2X の逆関数は、Y=(1/2)X
   Y=log X の逆関数は、Y=

 逆関数の計算は、置換積分においても活躍する。

次の関数の逆関数の計算は、みる人を唸らせるほど上手い計算であると私は思う。皆さんは
どうかな?

 問題  関数  の逆関数を求めよ。

  と変形し、 を得る。
この式を解いて、y を求める方法が少なくとも2つある。

(方法1)  を考えるのが解法のポイントである。
 
なので、
  すなわち、
 

(方法2)  の両辺を平方して、
 よって、 より、求められる。


(追記) 令和7年8月15日付け

 次の東北大学 前期理系(1998)の問題は、逆関数の華麗な性質を示す問題である。

問題  (1) F(x)=e/(e+1) のとき、y=F(x)の逆関数 y=G(x)を求めよ。

(2) (1)のF(x)、G(x)に対し、次の等式が成り立つことを示せ。

  ∫ab F(x)dx+∫F(a)F(b) G(x)dx=bF(b)−aF(a)

(解)(1) y=e/(e+1) とおくと、 0<y<1 で、 e=y/(1−y) より、

 x=log(y/(1−y)) なので、 G(x)=log(x/(1−x)) ただし、0<x<1

(2) ∫F(a)F(b) G(x)dx において、 G(x)=y とおくと、 x=F(y) で、 dx=F’(y)dy

 x=F(a) のとき、 y=a 、x=F(b) のとき、 y=b なので、

 ∫F(a)F(b) G(x)dx=∫ab yF’(y)dy

=[yF(y)]ab−∫ab F(y)dy=bF(b)−aF(a)−∫ab F(x)dx

より、 ∫ab F(x)dx+∫F(a)F(b) G(x)dx=bF(b)−aF(a) が成り立つ。  (終)


(追記) 令和7年12月5日付け

 次の東北大学 後期理系(2003)の問題も、逆関数に関する問題である。

問題  F(x)=ex-c (cは定数)の逆関数をG(x)とする。
(1) G(x)を求めよ。
(2) y=F(x)とy=G(x)のグラフの共有点の個数を求めよ。

(解)(1) y=ex-c から、 x−c=log y すなわち、 x=log y+c

 よって、 G(x)=log x+c

(2) x=log x+c の実数解の個数を調べればよい。

 c=x−log x において、y=x−log x とおくと、 y’=1−1/x=0 より、 x=1

 よって、y=x−log x は、x=1 において、極小かつ最小で、最小値は、1

 x → +0 のとき、 y → +∞ 、 x → +∞ のとき、 y=x(1−(log x)/x) → +∞

したがって、 c<1 のとき、共有点の個数は、0個

 c=1 のとき、共有点の個数は、1個

 c>1 のとき、共有点の個数は、2個  (終)



  以下、工事中!



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