・1次分数関数                      りらひい 氏

  1次分数関数

    f(x) = p-r(p-q)2/(x-q) = {px-pq-r(p-q)2}/{x-q}

を考える。ただし、p≠q、r≠0 とする。このとき、次が成り立つ。

 (1) r = 1           ならば、 f(f(f(x))) = x

 (2) r = 1/2         ならば、 f(f(f(f(x)))) = x

 (3) r = (3±)/2  ならば、 f(f(f(f(f(x))))) = x

 (4) r = 1/3         ならば、 f(f(f(f(f(f(x)))))) = x

 (5) r = (2±)/2  ならば、 f(f(f(f(f(f(f(f(x)))))))) = x

 (6) r = (5±)/10 ならば、 f(f(f(f(f(f(f(f(f(f(x)))))))))) = x

 (7) r = 2±      ならば、 f(f(f(f(f(f(f(f(f(f(f(f(x)))))))))))) = x

Mathematicaなどで関数のネストの練習問題にでもどうぞ。


(補足) rの求め方はMathematicaなら次のようになります。

     Solve[Coefficient[PolynomialRemainder[x^n,x^2-x+r,x],x]==0,r]

    ただし、 n = 3,4,5,6,8,10,12 です。

(参考) f(x) = k+s/(x-k) = (kx-k2+s)/(x-k) (ただし、s≠0) ならば、 f(f(x)) = x


 らすかるさんからのコメントです。(平成24年11月4日付け)

 証明はしていませんが、

  1/(2+2cos(2π/3))=1
  1/(2+2cos(2π/4))=1/2
  1/(2+2cos(2π/5))=(3-)/2
  1/(2+2cos(2π/6))=1/3
  1/(2+2cos(2π/8))=(2-)/2
  1/(2+2cos(2π/10))=(5-)/10
  1/(2+2cos(2π/12))=2-

ですから、 r=1/(2+2cos(2π/n)) ならば、 fn(x)=x  となりそうですね。

 また、 1/(2+2cos(2π/n)) = 1/(4cos2(π/n)) なので、

 r=1/(2+2cos(2π/n)) ならば、

   f(x) = p-r(p-q)2/(x-q) = p-{(p-q)2/(4cos2(π/n))}/(x-q)

とも書けます。


(コメント) なかなか面白い性質ですね!

 p=2、q=1、r=1 のとき、 f(x) = 2-1/(x-1) = (2x-3)/(x-1)

 このとき、 f2(x) = (x-3)/(x-2) で、f3(x) = x と確かになりました。


(追記) 平成24年11月4日付け

 なるほど!こんなきれいな形にかけるんですね!rの求め方を自分なりに見つけたと思っ
ていたのですが、さらにきれいな形で表現できることもわかりうれしいです。らすかるさん、
考察ありがとうございました。


 攻略法さんからのコメントです。(平成24年11月5日付け)

 Mathematicaはありませんので、筆算で確認しました。

 x12÷(x2-x+r) のとき、商Q(x)と余りR(x)について、商にも、歴代のxの係数が現れる。


1・x10
1・x9
(1-r)・x8 ← x3÷(x2-x+r)=(x+1)(x2-x+r)+(1-r)x-r
(1-2r)・x7
(1-3r+r2)・x6
(1-4r+3r2)・x5
(1-5r+6r2-r3)・x4
(1-6r+10r2-4r3)・x3
(1-7r+15r2-10r3+r4)・x2
(1-8r+21r2-20r3+5r4)・x
(1-9r+28r2-35r3+15r4-r5)

余り
(1-10r+36r2-56r3+35r4-6r5)x-r(1-9r+28r2-35r3+15r4-r5)

 r の多項式は、歴代の多項式で因数分解される。

3: 1-r=0  ∴ r=1
4: 1-2r=0  ∴ r=1/2
5: 1-3r+r2=0  ∴ r=(3±)/2
6: 1-4r+3r2=0  ∴ (1-r)(1-3r)=0  ∴ r=1/3
8: 1-6r+10r2-4r3=0  ∴ (1-2r)(2r2-4r+1)=0  ∴ r=(2±)/2
10: 1-8r+21r2-20r3+5r4=0  ∴ (r2-3r+1)(5r2-5r+1)=0  ∴ r=(5±-)/10
12: 1-10r+36r2-56r3+35r4-6r5=0  ∴ (1-2r)(3r2-4r+1)(r2-4r+1)=0  ∴ r=2±

きれいな現象が現れました。(→ 参考:S(H)さんブログ


(コメント) 本当に美しい関係ですね!攻略法さんに感謝します。


(追記) 平成24年11月6日付け

 nのところをみると、約数のところの多項式が出ています。6のとき3の式、8のとき4の式、

10のとき5の式、12のとき3と4の式というように。

 f3(x)=x ならば、 f6(x)=x 、f12(x)=x

 f4(x)=x ならば、 f8(x)=x 、 f12(x)=x

 f5(x)=x ならば、 f10(x)=x
;
は自明ですから、そうなることもわかるような気がします。これ以降や、n=9のときなどもこの

ように因数分解できそうな気はしますね。


 らすかるさんからのコメントです。(平成24年11月7日付け)

 予想通りの結果ですが、

n=7: r^3-6r^2+5r-1 = (r^3-6r^2+5r-1)
n=9: r^4-10r^3+15r^2-7r+1 = (r-1)(r^3-9r^2+6r-1)
n=11: r^5-15r^4+35r^3-28r^2+9r-1 = (r^5-15r^4+35r^3-28r^2+9r-1)
n=13: r^6-21r^5+70r^4-84r^3+45r^2-11r+1= (r^6-21r^5+70r^4-84r^3+45r^2-11r+1)
n=14: 7r^6-56r^5+126r^4-120r^3+55r^2-12r+1
    = (r^3-6r^2+5r-1)(7r^3-14r^2+7r-1)
n=15: r^7-28r^6+126r^5-210r^4+165r^3-66r^2+13r-1
    = (r-1)(r^2-3r+1)(r^4-24r^3+26r^2-9r+1)
n=16: 8r^7-84r^6+252r^5-330r^4+220r^3-78r^2+14r-1
    = (2r-1)(2r^2-4r+1)(2r^4-16r^3+20r^2-8r+1)

ちなみに、

n=15のときのr^4-24r^3+26r^2-9r+1=0の解は、

  r={12+5√5±√(255+114√5)}/2, {12-5√5±√(255-114√5)}/2

で、 {12-5√5-√(255-114√5)}/2 = 1/(2+2cos(2π/15))、

n=16のときの2r^4-16r^3+20r^2-8r+1=0の解は、

  r=2+√2±√(5+7/√2), 2-√2±√(5-7/√2)

で、 2+√2-√(5+7/√2) = 1/(2+2cos(2π/16))

ですから、 r={12-5√5-√(255-114√5)}/2 のとき、f15(x)=x

       r=2+√2-√(5+7/√2) のとき、 f16(x)=x

が成り立つと思います。


(追記) 平成24年11月7日付け

 私が提示した問題について、いくつか投稿があったので、どうやってわたしがrの求め方を
得たのかを書いておきます。

 1次分数関数 f(x)=(ax+b)/(cx+d) 、g(x)=(ex+f)/(gx+h) とおく。

 このとき、2次正方行列 F={{a,b},{c,d}} , G={{e,f},{g,h}} が対応する。

 f(g(x))={(ae+bg)x+(af+bh)}/{((ce+dg)x+(cf+dh)}

 FG={{ae+bg,af+bh},{ce+dg,cf+dh}}

となるため、f(g(x))を考える代わりにFGを考えてもよい。このとき、単位行列Eの定数(≠0)
倍は分数関数で、x に対応することに注意する。

 f(x)={px-pq-r(p-q)2}/(x-q) とおく。これに対応する行列は、

  A={{p,-pq-r(p-q)2},{1,-q}}

である。t=p-q≠0 とおくと、この行列のトレースと行列式は次のようになる。

 Tr[A]=p-q=t 、det[A]=-pq-{-pq-r(p-q)2}=r(p-q)2=rt2

 ケーリー・ハミルトンの定理から、 A2-tA+rt2E=O が成り立つ。

 ただし、E={{1,0},{0,1}} (単位行列)、O={{0,0},{0,0}} (零行列) である。

 fn(x)=x となるためには、 An=kE (k≠0) とならないといけない。

 An を A2-tA+rt2E で割ると、

 An=(A2-tA+rt2E){Σi=0〜n-2 ci(r)tn-i-2Ai}+g(r)tn-1A+h(r)tnE

 ここで、ci(r) (i=0〜n-2), g(r), h(r) はrの関数である。

 A2-tA+rt2E=O なので、An=kE (k≠0) となるためには、g(r)=0, h(r)≠0

このg(r)=0となるときのrの値を求める式が補足にのせた次の式である。

  Solve[Coefficient[PolynomialRemainder[x^n,x^2-x+r,x],x]==0,r]

言葉で書けば、

 「xnをx2-x+rで割った余りのx1の項の係数が0になるようなr」

ということになる。

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