・ABC予想 zk43 氏
平成24年9月19日、ABC予想証明の論文が公表されたというニュースがありました。
500ページほどあるそうです。ダウンロードして少しみましたが、もちろん、全然分かりません。
ABC予想の一部として、a+b=c、(a,b)=1、a<b を満たす自然数の組(a,b,c)をabc-tripleと
呼び、
任意のabc-tripleに対して、c<rad(abc)2 が成り立つ
というのがあります。ここに、rad(n)は、nの異なる素因数の積を表します。
例 a=5、b=27とすると、c=5+27=32
5と27は互いに素で、 rad(abc)=rad(5・33・25)=5・3・2=30
このとき、 32<(30)2 である。
今、n≧3である自然数nに対して、 xn+yn=zn 、(x,y)=1 、x<y を満たす自然数
a、b、c が存在するとすると、
zn<rad(xn・yn・zn)2=rad(xyz)2≦(xyz)2<z6
より、n<6 となって、n=3、4、5 の場合は、オイラー、フェルマー、ディリクレによって解がない
ことが証明されているので、フェルマーの最終定理が成り立つことが証明されるそうです。
話題にでてきていないようなので、少し書いてみました。
(コメント) まだ正しいかどうか真偽が判定されていませんが、「もし正しければ、多くのディ
オファントス問題が一瞬のうちに解決されるだろう。21世紀における数学で最も驚
くべき結果のひとつだろう」と言われていますね!京都大学の望月新一教授の研
究成果です。アメリカの超有名高校をわずか2年で卒業し、プリンストン大学に16
歳で入学、19歳で卒業という、まさに超飛び級の俊英ですね。今後の活躍に注目
したいと思います。
GAI さんからのコメントです。(平成26年11月18日付け)
フェルマーの大定理を違う方面から証明できるであろうと言われているABC予想なるもの。
(現在この予想が証明できたと京都大学の望月新一氏が発表されていて審査中とか)
ABC予想とはどんなものなのかを知りたくて、調査してみました。
(望月氏が掲げたABC予想)
a,、b、c を互いに素な整数で、a+b=c を満たすとき、任意のε>0に対し、ある正の定数
K(ε)≧1が存在し、
max(|a|,|b|,|c|)<K(ε){rad(abc)}1+ε
が成立する。ここに、rad(abc)とは根基といい、rad(abc)=Πp
p|abc(p:prime)
今調査のため、a、b、cを自然数に限定し、互いに素の条件を満たすように段階的に素数
2と3のみを因数とするグループを集め、(20、30も考慮して1も含めることにする。)
F(2,3)={1,2,3,4,6,8,9,12,16,18,24,・・・} : 3-Smooth Numbersと呼ぶことにする。
この中から任意のa、b、cで、a+b=c を見てみると、 1+1=2 、1+2=3 、1+3=4 、1+8=9
の4個だけが互いに素解で関係式を満たす。
(素解以外は、2+2=4,3+6=9,・・・など無限個存在している。)
この結果に対し、予想をチェックしてみると、
max(|a|,|b|,|c|)=c=9で、rad(abc)=2*3=6 なので、一旦ある定数K(ε)は無視しておき、9と6
を結びつけると、9=6^1.22629・・・ (ε=0.22629・・・) なることが起きている。
次に、5-Smooth Numbersで調査
F(2,3,5)={1,2,3,4,5,6,8,9,10,12,15,16,18,20,24,25,27,30,32,36,40,・・・}
素解となるものは次の17個(一応3000までのF(2,3,5)の要素で調査した。)
1+1=2 、1+2=3 、1+3=4 、1+4=5 、2+3=5 、1+6=6 、3+5=8 、1+8=9 、4+5=9
1+9=10 、1+15=16 、1+24=25 、9+16=25 、2+25=27 、5+27=32 、1+80=81 、3+125=128
で、これを元に、max(|a|,|b|,|c|)=c=128 、rad(abc)=2*3*5=30 から、
128=30^1.42657・・・ (ε=0.42657・・・)
以下同様に調査していくと、
7-Smooth Numbersで調査(50000までの要素で)
F(2,3,5,7):素解総数17個、cの最大数4375(1+4374)⇒4375=210^1.56789・・・
11-Smooth Numbersで調査(60000までの要素で)
F(2,3,5,7,11):素解総数190個、cの最大数18225(3584+14641)⇒18225=2310^1.2669・・・
13-Smooth Numbersで調査(300000までの要素で)
F(2,3,5,7,11,13):素解総数543個、cの最大数256000(121+255879)⇒256000=30030^1.20786・・・
そこで、次は17-Smooth Numbersでの調査になるのですが、如何せん調査対象を何処ま
で設定すべきかの判断が難しく、実際調査していたら範囲を広げると新たに素解が出現して
くるので、安心して最大数が確定できるのかが微妙なのです。上記の結果も多分大丈夫だと
は思うんですが、少し心配です。
17-Smooth Numbersになりますと、予想としては少なくとも7000000以上の数までを対象に
しなくてはならないだろうと思うので現在足踏みしております。しかし、ここまででも予想が言
わんとしていることは、何となく感じることはできます。ですから、これがあらゆる素の条件で
言えるわけですから、数論にとってはとっても強力な武器になりそうです。
(もっともK(ε)の大きさをどう決めるのかがポイントだとは思いますが・・)
もし興味がわきましたら、上記の調査を審査して、さらなる17,19,23-Smooth Numbersでの
情報が頂けたら有り難いです。
DD++さんからのコメントです。(平成26年11月18日付け)
7-Smooth Numbersで調査(50000までの要素で)
F(2,3,5,7):素解総数17個、cの最大数4375(1+4374)⇒4375=210^1.56789・・・
について、例えば 64 (=1+63) の場合、どれも 5 を含んでいないので、64=210^0.7778 では
なく 64=42^1.1127 とすべきですよね。このようなパターンで 1.56789 を超えることはないの
でしょうか?
GAI さんからのコメントです。(平成26年11月18日付け)
7-Smooth Numbersで調査(50000までの要素で)
F(2,3,5,7):素解総数63個(訂正済み),cの最大数4375(1+4374)⇒4375=210^1.56789・・・
での調査詳細に見られる通り、いろいろなパターンが発生しますが、この中でのcの最大値
となると素数の因数を最大に含むものに絞られるみたいです。(絶対とは言えないか?)
GAI さんからのコメントです。(平成26年11月20日付け)
互いに素な自然数の組(a,b,c)で、a<b<cとし、a+b=c となるものを、abc-tripleと呼ぶ
ことにする。素数を分類するSmooth Numbers からのアプローチが効率良くないので、cの
大きさを制限して、この範囲で起こることを調査しました。
c<1000におけるcとrad(abc)の関係を調べると、大多数のものは、c<rad(abc)の条件を満
たすが、次のものはこれに漏れる。
(本当はcの範囲をもっと広げればいいんですが、私のプログラムでは結構調査に時間が
かかるのでこれぐらいに設定しています。)
a+b=c;rad(abc)の順に、
1+8=9;6 、1+48=49;42 、1+63=64;42 、1+80=81;30 、1+224=225;210 、1+242=243;66
1+288=289;102 、1+512=513;114 、1+624=625;390 、1+675=676;390 、1+728=729;546
1+960=961;930 、2+243=245;210 、3+125=128;30 、4+121=125;110 、5+27=32;30
5+507=512;390 、7+243=250;210 、13+243=256;78 、25+704=729;330 、27+512=539;462
32+49=81;42 、32+343=375;210 、49+576=625;210 、81+175=256;210 、81+544=625;510
100+243=343;210 、104+625=729;390 、169+343=512;182 、200+529=729;690
343+625=968;770 の31個
次に、c<rad(abc)^1.1 の条件を漏れるものを探すと、
a+b=c;rad(abc)^1.1の順に、
1+8=9;7.17739 、1+63=64;61.0343 、1+80=81;42.1535 、1+242=243;100.346
1+288=289;161.98 、1+512=513;183.061 、3+125=128;42.1535 、13+243=256;120.588
25+704=729;589.339 、32+49=81;61.0343 、32+343=375;358.46 、49+576=625;358.46
104+625=729;708.225 、169+343=512;306.252 の14個
c<rad(abc)^1.2 の条件を漏れるものを探すと、
a+b=c;rad(abc)^1.2の順に、
1+8=9;8.58581 、1+80=81;59.2305 、1+242=243;152.564 、1+288=289;257.229
1+512=513;293.958 、3+125=128;59.2305 、13+243=256;186.429 、49+576=625;611.876
の8個
c<rad(abc)^1.3 の条件を漏れるものを探すと、
a+b=c;rad(abc)^1.3の順に、
1+242=243;231.957 、1+512=513;472.037 、3+125=128;83.2257 の3個
c<rad(abc)^1.4 の条件を漏れるものを探すと、
a+b=c;rad(abc)^1.4
3+125=128;116.942 の1個
これについての情報が知りたかったのでいろいろサイトを調査したら、次の記事を読んだ。
c<50000 での範囲では、abc-tripleは約3.8*10^8個ほど存在し、そのうちc<rad(abc)の反例
は276個
c<10^20までの範囲での調査では、c<rad(abc)^1.7 には反例も証明も見つかっていない。
c<rad(abc)^1.6にすると3個の反例が発見されていて、(a,b,c)=(2,3^10*109,23^5)
2+3^10*109=23^5 で 23^5>(2*3*109*23)^1.62991
(a,b,c)=(11^2,3^2*5^6*7^3,2^21*23)
11^2+3^2*5^6*7^3=2^21*23 で 2^21*23>(11*3*5*7*2*23)^1.62599
(a,b,c)=(19*1307,7*29^2*31^9,2^8*3^22*5^4)
19*1307+7*29^2*31^9=2^8*3^22*5^4 で 2^8*3^22*5^4>(19*1307*7*29*31*2*3*5)^1.62349
c<rad(abc)^1.5での反例は13個
c<rad(abc)^1.4での反例は229個
というものでした。
(この結果を手に入れるためにはどれだけの時間が費やされたのか想像を絶します。)
ABC予想の一面だと思いますが、これらの性質が他の現象に立ち現れて来るのでしょうね。
りらひいさんからのコメントです。(平成26年11月20日付け)
Wikipediaを眺めていて気付いたこと。
日本語版Wikipediaに載っている、質の大きいabc-tripleの表は違ってしまってますね。英語
版Wikipediaの方の表はよさそうです。おそらくですが、英語版の方の引用のページリンクが
別の表につながっているので、日本語版の方がそのリンク先を参照してしまったのでしょう。
ここに3つのリストがあり、その2つ目のページを見ないといけないのに、リンク先が1つ目
のページにつながっているのがいけなかったのでしょう。
Wikipediaに手を加えるなんて私にはとてもできないので、このまま放置しますけど・・・・。
GAI さんからのコメントです。(平成26年11月21日付け)
りらひいさん、御指摘ありがとうございます。
検索するときに、a<500、b<500 の制限(c<1000)で調査していました。改めて、a<1000、
b<1000、c<1000 で検索しました。(上記のリストは修正済みです。)
(追記) 令和4年4月10日付け
NHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか?」(4/10 21時〜22時)と題して、ABC
予想の証明をめぐる数奇な物語が放送された。
論文の査読が終了したものの、まだ論文を認める者、認めない者がいるという不可思議
な光景になっている。「宇宙から来た論文」と呼ばれている望月新一教授の宇宙際タイヒミュ
ーラー理論を理解するには、新しい言葉が必要だと番組では力説されていた。
「掛け算は易しいが、足し算は難しい」ということを理解するのが、ABC予想の大切な入口
だという。
完全版が、4/15 NHKBSPで放送される。
GAI さんからのコメントです。(令和4年4月11日付け)
2022年4月10日でのNHK特集(21時より)の放映で、望月新一氏のABC予想の証明につい
ての番組を見ていたのですが、解説を望月氏にお願いしても、一般の方に解説することは高
度な内容を含み、とても不可能と判断するとのことで、解説を辞退しますとのコメントがあった
のが面白かった。
この番組の中で、整数 a、b、c (=a+b)に対し、
c/rad(c)<rad(a*b) (rad(n);nの異なる素因数の積)
という関係式が出ていたのですが、実験してみると、単純に、常に、この関係式が成立する
かと言えば、そうではなく、例えば、
a;b =>c/rad(c) VS rad(a*b)
2;126=>64 VS 42
2;160=>27 VS 10
3;125=>64 VS 15
3;144=>7 VS 6
3;189=>32 VS 21
4;108=>8 VS 6
4;121=>25 VS 22
4;124=>64 VS 62
4;192=>14 VS 6
4;196=>20 VS 14
・・・・・・・・・・
の様に、反するパターンも出てきた。(しかし圧倒的には成立していく)何らかの条件付きが
あるのであろう。
また、次の様なパターンは一致していく。
4;128=>2 VS 2
18;162=>6 VS 6
25;125=>5 VS 5
36;144=>6 VS 6
72;108=>6 VS 6
100;200=>10 VS 10
掛け算は足し算より簡単という表現をされていたのも(足し算は遺伝子を破壊する)興味を
引いた。
また、この証明をするために、トポロジーの発想が異なるものを同一視するものに対し、同
じものを異なるものに分解し、これとは全く逆の発想で(宇宙際タイヒミュラー理論)、新しい数
学理論を構築していったという経緯の解説もされていた。
もし、この理論が正しいなら、あのフェルマーの大定理 a^n+b^n=c^n (n>2) には整数解
が存在しない、も数行で証明可能とのコメントがされていた。
確かにABC予想とは、この n=1 に相当する考察なので、そんなのも有かな程度しか感じら
れませんでしたが・・・。
いずれにせよ、人間の考える力とそれに関わっている人の途方もない発想力にただただ
驚くばかりでした。
(コメント) 今までずっと「ABC予想」と思っていましたが、NHKや番組登場の数学者の方々
は「abc予想」という表記でした。何か意味があるんですかね?