・光の到達                       H.I.氏

 (当HPの掲示板「出会いの泉」 平成22年3月3日付け)

 本のページには紙の端から実際に文字が印字してある箇所まで視認性を良くするために
マージン(空間)が設けられている。こんなことを考えるのは私だけかもしれないが、いつも
「ページの端からこのマージンに光を走らせて、他端に到達させるにはどうればいいか?」
と、エルデシュの本を読みながら思うこともあるわけで、この発想を問題にすると次のように
なる。

 一辺の大きさがそれぞれ1と2の鏡でできた正方形A、Bがある。Bの中心にAを互
いの辺が平行になるように置く。

 今、Bの角の一点から内側に直線の光を打ち出し、幾度かの反射を経て、反対側
の角の一点に到達させたい。

 最短の経路はどのようなものか?また反射の回数が最も少ない経路はどのような
ものか?

 ただし、Bの目標でない角に入射した場合、入射した角度で戻るものとする。



 この問題に対して、HN「らすかる」さんが否定的に解決された。(平成22年3月3日付け)

(証明) 出発点から一定の速さで、t 秒後に対角に到達したとすると、出発点から点P、到

   着点から逆向きに点Qが同時に出発して同じ速さで移動した場合、点Pと点Qは、t/2

   秒後に出会うはずである。しかしこの問題の条件では出発時の方向と到着時の方向

   は同じ向きでなければならないので、PとQは正方形の中心に関して常に点対称に移

   動し、決して出会うことはない。よって条件を満たす解はない。 (証終)

 らすかるさんによれば、長方形でも同じで、上下と左右のマージンがそれぞれ同じであれ
ば、到達できないし、より一般的には、点対称な図形で光線が点対称の中心を通過不可
能であり、出発時と到着時の向きが同じ向きに限定される場合は(曲線を含むような複雑
な図形であっても)解なしになるとのことである。

 らすかるさんの証明をまとめると次のようになる。

入射角一定の原理

 一端とその反対の点を、P、Q とする。今、Pから光を放ったと仮定するときの正方形Bの

底辺に対する射出の角度をθとする。(0°<θ<45°として十分である。)

 光が正方形内を如何に反射しようとも、底辺とその平行な辺に対する角度は±θである。

Qに最終的に入射するには-θではありえないため、+θでなければならない。

PとQから出発する入射角一定の光は永遠に交わらない

 PとQは正方形同様に互いに点対称な点同士である。Pを出発した光がQに到達するため

には、PとQを同時に出発した互いに角度θの光が少なくともどこかで出会う必要があるが、

これらの光はいかなる角度でも永遠に出会えない。よって、解なし。 (お見事!)


 シチュエーションを変えて、今、Pに電球を置いて、Qに人を立たせたとすると、正方形で
作られた部屋全体は明るいのに、Qに立った人には真っ暗にみえるということですね?
(絶対に乱反射しない鏡、面積や体積を持たない人間がいればの話ですが)なんだか面
白い結論ですね。


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